特集 2021年6月14日

仮想通貨の詐欺にあって30万円損した話

僭越ながら、うっかりおもしろ半分で仮想通貨詐欺にあって30万円ほどやられてしまったので、その経緯を話したい。

過去に戻ることができたなら、ふざけて所在不明の仮想通貨を買うのはよせと自分に言ってやりたいと思うことしきりである。

どうか今後の参考にしてほしい。

1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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ことのはじまりはマッチングアプリ

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こんにちは、仮想通貨詐欺で大損こいた藤原です

ことし2月の終わり頃、ひまでひまでしょうがなくて、噂に聞いたことがあるマッチングアプリというものをスマホにインストールして触ってみた。

するとよくわからないうちに、何人かの女性とマッチングしてしまった。これがマッチングアプリか。

それがことごとく中国の方だったりしたうえ、やり取りの途中で投資の話を持ちかけられたりするので「なんなんだこれは」と思っていた。マッチングアプリは投資詐欺の温床なんだろうか、と疑念を抱いた。

そんな中、アリソンと名乗る女性とマッチした。彼女はアメリカ人でいまは札幌に住んでいるそうだ。

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4連笑顔マークのアリソンさん。中身は鬼。

句読点が使えて人間っぽいな、というのが最初の印象であった(他の人は句点を使わず読点の部分で改行する)。

挨拶もそこそこに「このマッチングアプリはあまり使わないのでLINEでやりとりしませんか」という話になり、LINEでやりとりをすることになった。

これがアリソンさんとの出会いである。

COVという仮想通貨を勧められる

アリソンさんともはじめは「仕事はおわりましたか」「夕飯は何を食べましたか」などという平熱の会話をしていた。

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なんてことない会話をずっとしていた。

しかし、数週間すると中国株で熱い銘柄があるから証券会社の口座を開けという、これまた投資の話を持ちかけられた。

「また投資詐欺か…?」と身構えつつも、暇を持て余していた僕は、「よし、いったんその話に乗ってみるか」と考え、言われた証券会社の口座を開いて、アリソンの指示を待つことにした。

そうしてしばらくした4月のはじめ、ノコノコとぼくが「口座開きましたよー」と言うと、アリソンは「いまは相場の状況がよくないから株式投資はよくない」と言う。なんだって!と思っていると「代わりにCOVという暗号通貨を買うと、2ヶ月後には値上がりする」と仮想通貨の取引を勧めてきた。COV、なんだそれは。

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「当社はCOV暗号通貨を社内で発行していて、とりあえず2ヶ月後の利益は非常に高いです。……。」唐突に暗号通貨の話をされる。ビットコインはたまたま買っていた(これもひまで)。

COV。なんなんだその知らん暗号通貨は、と思ったのだが、暇をもてあましていた僕は話を聞いてみることにした。

話によると、その暗号通貨は現在どんどん値上がりしているらしい。

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どんどん上がっているよ、と見せられたチャート

なるほどこれは値上がりしているけど、あやしい……。

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紹介されたBITSLEADというサイト。

説明を読んでみると、新型コロナウイルスのワクチンに関連した仮想通貨だそうで(だからCOV!)、なんだかわからないがWHO(世界保健機関)が関係しているそう。要するに説明を読んでもわからないということだ。

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問い合わせ先もGmailだし、あやしい。

あやしい……といぶかしがりながらもアカウント作るくらいならいいかと思い、ふざけ半分で歩みを進めてみることにした。

なんでそんな危ない橋を渡ろうとしたのだろうと、今になると後悔の念しかない。

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アカウントを作るために運転免許証と手書きのサインの画像を提出した。なにをやっているのか。でも「このくらいまだいいか」と思っていた。
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詐欺ではないですか?と聞くとWHO(世界保健機関)の発行する新しいタイプのグローバルトレーディングウェブサイトだから安心らしい。

記憶がないままCOVを買ってしまう

それで、満を持してCOVを買ってしまうときがきてしまうのだが、ここの記憶が定かではない。

LINEの過去のやり取りをいくら見返しても、どうして自分がCOVなる仮想通貨を買ってしまったのかがわからない。いつの間にか危ない橋を渡ってしまっているのである。

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当初はいぶかしがっているが…

仮想通貨のCOVはビットコインを通じて購入することができるという。はじめはCOVという仮想通貨の存在そのものや、どんどん値上がりしているという話自体信じていなかったのだが……。

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めちゃくちゃあっさり買ってる! しかも真っ昼間に!

記憶では「買ったのは酔っ払った勢いだったかな?」くらいに思っていたところ、実際はなぜか昼に買っている。おかしい。でも買っている。その額、30万円!

このあたりの心の機微が証拠として残っておらず申し訳なく思う。実際あっさりと「じゃあ今から入金します」となっていたのだ。これがリアルだとわかってほしい。

思い出すに、当時の気持ちとしては、当然話を信じているわけでもなく、これが半分詐欺だとわかっていたのである。単におもしろ半分だったのだ。

当時はよきところで足を洗えばいいと思っていた。入金した時点でもう足が洗えないことも知らずに……。

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なんで買っちゃったんだろうか……。

当たり前だがそもそもこの時点では、30万円損したとは思っていない。なぜならこの30万円分のCOVがちょっとでも値下がろうとしたならば、すぐに売ってしまえばいいと思っていたからである。

それが間違いだった。

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おれの30万円分のビットコイン……。
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さっさとCOVを売ろうとする

さてCOVを買った翌日。画面上で10%くらいの利益が出ているのを確認したところでさっさと売ってしまおうと思ったのだが、COVを売ってビットコインに変えようとするとなぜだか以下のメッセージが出てしまう。

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Oh...System error

システムエラーだって!? アリソンさんに急いで訪ねてみると、このCOVという通貨、いつでも取引できるのかと思ったがそうではないらしいのだ。

COVははまだ市場に上場されていない通貨で、画面上で取引されているように見えるのは、全てJ.P.モルガンチェース内部の関係者のみによるものらしい。

全てはクローズドな取引であり、5月21日に一般公開されるまでは、一般市民である僕は売り買いできないそうである。なんだって! 聞いてないよ!

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ああ、もう詐欺にあってしまっていたんだなあ、と思いましたね

「聞いてないよ!」の叫びは虚しく夜空にこだまし、次に待ち受けていたのはさらに過酷な仕打ちであった。お金を取られるだけが詐欺じゃない。

お金は帰ってこないわ罵られるわ

というわけで、30万円分のCOVという売れない仮想通貨を買ってしまったわけだが、そのあとに待ち受けているのはありがとうという感謝の声やおめでとうという称賛の声だろうか。

いやちがう。「もっとCOVを買え(具体的にいうと2万~5万ドル)」という圧力と、「それができないならお前は無能だ」という罵りである。むろん、30万円でお腹いっぱいな僕はそれ以上COVは買わないので、甘んじて罵りを受けるしかない。

「これ以上COVを購入することはできない」というぼくのメッセージに対するアリソンの言葉は以下の通りである。

I am very disappointed in you. I am also disappointed in my own efforts. I don't want to see my efforts as wasted.(私はあなたにとても失望しています。また、自分の努力にも失望しています。自分の努力が無駄になるのは嫌ですからね。)
心配?
怖い?
恐怖?
不安?
みんながあなたみたいなら、何もしないで家で死ぬしかない。

 

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ファイナルファンタジーのラスボスのセリフだろうか
You are a very failed person. But please do your best.(あなたはとても失敗した人です。でも、がんばってください。)
You are a low-level farmer's grassroots laborer.(あなたは、低レベルの農家の草の根の労働者です。) 
永遠に連絡しないで、あなたは私のこの人生で出会った、私に最も失望させて、最も心痛して、最も悲しくて、最も失望した男の子です
君の思想は相変わらず頑固だ。下位の人間層の思想では仕方がない。 
頭は馬鹿みたいだ。
正確には、向上心を求めない。
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精神的に向上心のないものは馬鹿だ

 

挙げればきりがない。悪の親玉のような罵りや、夏目漱石の『こころ』を思い浮かべさせる言葉が並ぶ。こっちは30万円失っているというのに理不尽なこと極まりない。内心、「盗っ人猛々しいってこれか~」と関心しきりである。

ただ、相手を怒らせて関係が切れてしまうとどうしようもないので、こちらは激しい言葉遣いをすることができない。万が一のお金が戻ってくる可能性にかけるならば、言葉の非暴力主義を貫くしかないのだ。

仮想通貨詐欺の醍醐味はお金を取られること以上に罵られることかもしれない。30万円お金を騙し取られたのも辛いが、そのあとのやり取りも辛い。二重に辛いのが詐欺被害というものだと思い知った。

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30万円失ってる人にかける言葉じゃないよな~

アリソンさん、何者?

こうやってやりとりしていると、気になってくるのがこのアリソンさんが何者なのかという話である。J.P.モルガンチェースのアクチュアリーだということを名乗っているが(アクチュアリーって何?)、本当なのだろうか。

ちょっと突っ込んでみた。

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ハッカーに狙われるため電話番号は教えてくれないらしい
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アリソン・トミーさんは札幌の北回廊に住んでいるそうだ

とにかくJ.P.モルガンのアクチュアリーだそうで、電話番号は教えてくれないし、教えてくれた一見住所なようなところは具体的ではない。

アリソン・トミー、一体何者なのだろうか。本当にJ.P.モルガンの社員なのだろうか。

のちにしつこく「J.P.モルガンチェースの社員だという証拠を見せてくれ」と懇願してようやく送ってくれた画像が以下である。

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名刺って
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これ!?(顔のぼかしは筆者によるもの)

電話番号も書いてなければ、部署名も書いてない。何故か顔写真が印刷されているのも不自然だし、”J.P.Morgan”と書くべきところが”JPMorgan”となってるのも気になる。全部気になるな、恋かな。

背景にうっすらと写っているビルの写真は、少しし調べてみたところ英語版Wikipediaから引用されたJ.P.モルガンチェースのものであることがわかった。

なんて底の浅い工作を……。こんな名刺あるわけがないのである。

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私はいったい誰を相手にしているのでしょうか。わからなくなりました。
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他にもLINEのアプリの言語設定が中国語なのを指摘したりした。アメリカ人だったのでは?

これでアリソンさんがJ.P.モルガンチェースのアリソン・トミーさんでないことが白日のもとに曝されたのだが、先にも書いたように「お前、偽物だな!」と強く指摘することができない。

(ちなみにくれぐれもJ.P.モルガンチェースが悪の組織だとは思わないでほしい。彼女が騙ってるだけなので。)

COVが上場する5月21日までは、とにかく辛抱強く待つしかないのである。

約束の5月21日

こうして罵られ続けてひたすら我慢したおよそ1ヶ月半。5月21日。待ちに待った日、サイトの画面上に表示されたのは以下の文言だった。

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「正式なリリース時期は2021年6月10日を予定しています。」

公開時期が6月10日に延期されたようである。そんなふざけたことあるだろうか。

しかし怒ってもどうにもならない。待てば時は過ぎる。待とうではないか。

で、約束の6月10日を待った。BITSLEADのサイトをめちゃくちゃリロードしながら待った。

そして6月10日を過ぎた今日表示されているのは以下のお知らせである。

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「上場の公開取引時間は2021年6月15日です。」

こうちまちま期限を延ばしてくるのはなんなのだろうか。もっと潔くなれないのだろうか。強くは出られないけど憤りだけはある。

いちおうアリソンさんに確認して現在の状況がどうなってるのかと聞いたら、「内部監査チームに少額すぎる資金(a very small amount of funds)が見つかったので利益は凍結された。内部監査チームのレビューをやり過ごすにはもう2万ドルの投資が必要だ。」というようなことを言い出した。

少額って言ったな! おれの30万円を!

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もうどういう理屈なのかついていけません

まだ期日の6月15日は来てないが、もうどうにでもなれ、という思いで本稿を書き上げた次第である。30万円あったら欲しいものは大体買えた、という後悔を残しながら……。


君おもしろ半分で詐欺にあいたもうことなかれ

ということで、もう30万円は帰ってこなかろうという様子である。どうしようもなさそうだし通報とかもしていない。ただただ無力感だけがある。

僕から言いたいのは「君子危うきに近寄らず」、「触らぬ神に祟りなし」、「知らぬが仏」、「おもしろ半分で詐欺に合うのはばか中のばか」ということである。

2ヶ月以上の間30万円のことで頭が一杯になるし、罵られ続けるし、その損失は30万円以上だった。

読者の皆さんにおいては、まぬけな僕を見て、あぶないことには近づかないに限るということを知ってほしい。

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詐欺にあっても人生は続く
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