眼鏡屋の奥のアイツ
冒頭の文章でピンと来た人は、きっと眼鏡をかけている人だろう。そして眼鏡をかけていない人、すみません。何の話だかまったくわからなかったのではないでしょうか。眼鏡を作るときに使う器具で、こんなものがあるのだ。
これ、カッコイイと思いませんか。金属製のゴツゴツした質感と、びっしり書き込まれた目盛り。正円のレンズ周りはクラシックな印象で、スチームパンクにでてくる発明家がこんなゴーグルをかけていそう。
僕はこの眼鏡がずっと気になっていたのだが、ネットで調べようにもそもそも名前がわからず、手が出ないでいた。しかし先日、別の調べごとをしているときにたまたま名前が判明。「検眼枠」(またはトライアルフレーム)というらしいのだ。
よし、糸口はつかめた。その後トントン拍子に調査は進み、2件の取材先にアポイントを取り付けることができた。あの眼鏡をじっくり見てみたい。そんな10年来の夢がやっと叶うのだ。
まずは眼鏡屋さんへ
最初に取材させていただいたのは、江戸川区の眼鏡店、「メガネの泉」。店主の室伏さんにお話を伺った。
検眼枠とはなにか
そもそも検眼枠とはなんなのか。基本的なところから教えていただいた。
検眼枠とは、平たく言えば「レンズを簡単に脱着できるフレーム」だ。用途は大きく2つある。ひとつは視力を測定するための道具だ。眼鏡を作る際、検眼枠を使っていくつかレンズを入れかえながら、その見え具合で細かい視力の測定を行う。そうやって、お客さんの目に適したレンズを見極めていくわけだ。
もうひとつの用途は、レンズを試用するためのフレームとして。一度決めたレンズの度数が本当に合っているかどうか、実際にお客さんにしばらくかけてもらって、確かめる必要がある。その際にも、この検眼枠が使われる。
HOW TO 検眼
実際に、検眼枠を使って視力の測定をしてもらった。
まずは、左下の写真のような機械を使って、大まかな視力を測る。その後、検眼枠の登場だ。
検眼枠にレンズをはめ込んで、実際にお客さんに見てもらいながら、その人にあったレンズを選んでいく。検眼枠にはいくつかのレンズを重ねてはめ込むことができるので、近視用、乱視用、など、組み合わせながらその人の視力を見極める。
このとき、ただ機械で測った結果そのままのレンズを使えばいいというわけではない。レンズ選びにも勘やノウハウが必要で、経験がものをいう世界なのだそうだ。そういわれると、途端に検眼枠も職人の道具に見えてくる。
ちなみに最近では視力測定はコンピューターで行うことも多いそうだが、それでも最終的には検眼枠が手放せない。お客さんが自分の目で見て、本当に見やすいレンズを決める必要があるからだ。室伏さんいわく、眼鏡屋さんにとって検眼枠は「もっとも基本の道具」とのことだ。