レンズも魅力的
室伏さん愛用の検眼枠を見せてもらった。人によって左右の目の間隔が違うため、検眼枠も複数を使い分けているそうだ。
そして検眼枠とペアで使われるのが検眼用レンズ。こちらもずらりと並んだ姿は壮観で、思わずほしくなってしまう。
レンズも検眼枠も、この使いこまれた感じがまた魅力的で、まるでアンティークのようだ。なんともうっとりしてしまうではないか。
お客さんの反応は
こんなにかっこいい検眼枠だから、お客さんに「欲しい!」なんて言われることもあるのでは。
そんな僕の質問に、一瞬の迷いもなく飛び出した室伏さんの答え。それは「長いこと店やってますけど、それはないですねえ」であった。なにっ。
「家族連れのお母さんが、検眼枠をして検眼中のお父さんに『それでいいじゃない』なんて冗談を言うことはありますけどね」(室伏さん)。本気で欲しいって言ってきた人はいないそうだ。おかしいなあ。
検眼枠を眼鏡にできないか
なんだか妙なことを聞いてしまったような気がしたので、あわてて話題を変える。検眼枠を普通に眼鏡のフレームとして使うことはできないかどうか、きいてみた。
室伏さんの反応は、笑いながら「それは無理ですね」。
検眼枠に検眼用のレンズを使えば、レンズはクルクル回ってしまうし、すぐに外れてしまう。回転部分を接着剤で留めて、レンズも外れないように固定して…と無理やりフレームとして使うのは不可能ではないかもしれないが、検眼枠自体が普通のフレームよりとても高価だし、レンズも高くつく。付け心地も普通のフレームほどよくない。好き好んでそこまでしたがる人もいないのでは、とのこと。
印象的だったのは、「あくまで検眼の道具ですから、そんなことはしてはいけないんだと思いますよ」の一言。できる/できないではなくて、「してはいけない」。うーん、職人と道具のパートナーシップに、「カッコイイ」だなんてミーハー感覚で茶々を入れてはいけないのかも。聖域に踏み込んでしまったようで、なんだか悪いような気になってしまった。
でもさあ、事実、かっこいいじゃん。うーん、そんなことないのかなあ。かっこいいと思うんだけどなあ。
かっこいいと、思うんだけどなー。