料理番組で「もうおいしそー」って食べちゃう妄想をずっとしていた
古賀:
これ、本当にくやしかったです……。
企画記事を作り続けてデイリーポータルZはもう17年目になるわけですが、まだここまでシンプルにやっていないことがあるんだなと思わされました。
トルーさんの担当編集者は藤原くんなんですが、あまりにも私が悔しかったの私がインタビューさせてもらうことにしました!
トルー:
ありがとうございます…!
「もうおいしそー」ってよく言うよなーって前から思ってはいたんです。
古賀:
あー! 前から思ってたのか~~!
私も言うは言うんですよ。「これもう食べちゃいたいよね」とか。でもその言葉を「よく言うなこれ」と気づけてなかった。
トルー:
料理番組で「もうおいしそー」っていった瞬間、その人が食べ出しちゃう、みたいなイメージがずっとありました。
古賀:
そうなのか! 料理番組で褒めでアシスタントさんとかがよく言いますもんね。
トルー:
先生に「まだですよ!」って言われて「だっておいしそうだったから…」って言うんです。
古賀:
わはは! その先を妄想してたんですね。
トルー:
そうなんですよね、でも記事にするにはどうしたらいいんだろうって思っていて、よく分かんないけどとりあえずやってみちゃえ、と思ってやりました。
古賀:
たしかに、記事化が難しいところではあるのか……。
手間をかけるとおいしいがその手前も全然うまいという謎
古賀:
記事を読んだときに一番に思いついたのがスイートポテトでした。
古賀:
スイートポテトって
芋をふかす→つぶして調味料とまぜる→焼く
という工程なんですが、「芋をふかす」この段階でどう考えてもおいしいんですよ。でもこれだと「ふかした芋を食べる」という記事になっちゃうもんね。
そういう意味では記事ではちょうど良い「もうおいしそー」をピックアップしてましたよね。
トルー:
ふかした芋、おいしいんですよね…!
古賀:
おいしいですよ! だから私はスイートポテトはもう何年も作ってません。ふかしたところで食べちゃうから。
トルー:
そこから手間を加えておいしくなるんですけど、その手前も全然おいしいの、なんか不思議じゃないですか。
古賀:
そうそう、なんなんでしょうね……? いわゆる貴族の遊びですよね。
トルー:
余暇ですね。
古賀:
あの記事でいくと、カレーも余暇
トルー:
カレーも余暇ですね。名前のつく料理って余暇だったんだな、と思いました。
手間が生むのは「超えられる壁」ではないか
古賀:
小学生のとき、一番最初に家庭科で習った料理が「粉ふき芋」だったんですよ。
トルー:
僕もそうかもしれない。
古賀:
鍋でジャガイモをゆでて、ゆであがったところでゆで汁を切って、塩をして、ふたをしてふるんですよね。そのとき、蓋をしてふる工程、いる? と思いました。
トルー:
何かが良くはなるんでしょうね…!
でも振らなくても全然おいしいです。
古賀:
よく「超えられない壁」って表現ありますよね。でもわりと料理の余暇に関しては超えられる壁って感じするんですよ。
振った芋>(超えられる壁)>振らない芋
トルー:
そうですね、カレー粉とかかけたら超えられなくなるんじゃないかな。
古賀:
確かにカレー粉が入ると壁が一気に高くなりますね。
トルー:
料理名としては「茹でた芋にカレー粉かけたやつ」でしかないんですが。
古賀:
間違いなくうまい。
名前のある料理はあんぜん
トルー:
記事の感想見たらつく前の餅、とか揚げる前のコロッケとか皆さん挙げてくれて全部おいしそうでした。
古賀:
そうそう!この記事、この「もうおいしそー」もうまいですよって情報と報告で拡散したんですよね。ちょっとつまみ食いの背徳感みたいのがあるのも良いのかもな。
トルー:
ホットケーキ焼く前のやつ、と言っている人がいましたが、他の人がそれはお腹壊すぞ、と言っていて、やっぱり「料理」はその辺よくできているなと思いました。
名前のつく料理はお腹壊さないんですよ。
古賀:
まったくそのとおりだ。「もうおいしそー」はチャレンジの意味合いもあるのか。
トルー:
皆がもともと食べてきて、何か良くないことがあったから手間を加えている可能性があります。
古賀:
安全性が確保されたものが名のついた料理なんですね。
トルー:
でもただただおいしい可能性もあるぞ…!
という。
古賀:
ゆでて塩をした芋はうまい!
「もうおいしそー」は万国共通
古賀:
アメリカに、羊羹みたいな状態で生のクッキーが売ってるらしいんです。本当はスライスして焼いて食べるらしいんですがアメリカの人はわりとそのまま食べちゃうらしいです(↓こういうの)。
古賀:
「もうおいしそー」は万国共通ですね。
トルー:
おおお…!
古賀:
シンパシーですよね。でもお腹は壊すかも…。
トルー:
ワイルドな国柄のところでは意外と普通なのかもしれませんね。
古賀:
ああ!そうか、国柄もありますよね。
トルー:
子供の頃から食べてればお腹も壊さないかもしれない。
おもてなしとしての手間
古賀:
日本料理とかフランス料理って手をかけることをよしとするみたいな、そういう価値観ありますよね。おもてなしとしての多重工程みたいな。
トルー:
そうですね 家庭料理にもその雰囲気があるのかもしれない。
古賀:
さっきも出ましたが、コロッケは本当にすごいですよね。
トルー:
ふかして、潰して、揚げる。
古賀:
全工程でもうおいしそー。
トルー:
3品作ればいいのに、っていう。
古賀:
自炊をするようになって、工程が3つ以上ある料理が結構あるのに驚きました。
トルー:
カツ丼なんて、揚げたものを更に卵でとじるんですよ。
古賀:
あー!あれは本当にすごい。あれこそ余暇ですね。
トルー:
バカンスですね。1ヶ月以上休んでる。
古賀:
夏休みだ。
トルー:
カツ丼は夏休み。
古賀:
オムライスは春休みくらいですかね。
チキンライスを作って、薄く焼いた卵をかぶせる。
トルー:
オムライスも、あれはすごいですね。
古賀:
薄く焼いた卵かぶせるの、意匠としての行為みたいなとこありますもんね。
トルー:
もう味じゃない。
「もうおいしそー」を一旦箱に入れて運ぶ
古賀:
そうか、そこをつきつめるとキャラ弁になるのか。
トルー:
ああ、キャラ弁だ…!
もう手間を食べるような感じですね。
古賀:
時間を食べてるんだ。おうちの人の時間を、子どもが食べる。
トルー:
ちょっと逸れるんですけど、僕の中学校の頃のお弁当、でかいプルーンがご飯の横にただ入ってたんですよ。栄養があるから、って言って。
古賀:
いい話!
トルー:
あれもよかったですよ。
古賀:
お弁当は料理としてちょっとまた特殊な可笑しさあるんですよね。めしを箱に詰めるって時点でなんか変だもん。で、運ぶって。
トルー:
飯を箱にね…! 何もしなくてもその手間が加わりますね。
古賀:
そうそう!もう食べられる飯をわざわざ箱にいれて、ちょっと時間おいてから食べるんですよ。手間とおあずけ、それが弁当だと思ってます。
トルー:
「もうおいしそー」を一旦箱に入れて運ぶ。
古賀:
人間の理性そのものですよね
トルー:
よく我慢できますね。すごいな。
古賀:
早弁は、あれは笑ってはいけないことですよ。人の早弁を笑うな。
トルー:
我慢して一回運んではいますもんね。えらい。
古賀:
セーフです、早弁は圧倒的セーフ。
トルー:
箱に入れる前に食べたらアウトですね。
古賀:
それはアウトですね。でもそんな人がいたら信頼できますね。
トルー:
箱だけ学校に持って行く。
古賀:
かわいそうだ!
「もうおいしそー」は研究だ
古賀:
ちょっと違う話かもですが、栗原はるみさんが卵焼きを焼いたら焼いた人の特権として切り分けた真ん中を食べてそれでその隙間をきゅって寄せるって言ってました。
トルー:
真ん中、おいしいんですね。
古賀:
トロの部分だと思うんですよね卵焼きの。
トルー:
この記事を送ったら藤原さんに、料理研究家もこういうことしてるんでしょうか、って感想をもらいました。してるんですかね。
古賀:
そうか、これって純粋に研究ですよね。
トルー:
人が食べないタイミングで食べるっていう研究。
古賀:
それに名前をつけるのが料理研究家の仕事なのかも……。我々はつい「タマネギを飴色になるまで炒めたやつ」とか言ってしまいますが。
トルー:
そうですね…。「やつ」って言わないんでしょうね、料理研究家は。
「〇〇のやつ」ばっかの料理本があってもいい
古賀:
逆張りで「〇〇のやつ」ばっかが載ってるレシピ本あったら売れるかもしれないですね。
トルー:
簡単に作れそう、って思うかもしれない
古賀:
「なんかニンジンをスライスしてすし酢かけたやつ」
トルー:
頭に「なんか」もつくんですね。
古賀:
「なんかじゃがいもふかして塩とカレー粉かけたやつ」
トルー:
本当にいいかもしれません ハードル低いしおいしさが想像できる。
「なんか肉と野菜炒めて調味料っぽいやつをかけたやつ」
古賀:
調味料っぽいやつはなんでもOKにしたいですね。めんつゆでも塩でもソースでもOK! ロマンありますね。
トルー:
好きなやつをかけたやつ、ですね。
古賀:
どんどんぼんやりしていく。
古賀:
そうだ、これ投稿企画にできないかなと思ったんです。
「これもうおいしそー」をあつめる投稿、ぜひお願いしたいです。
良い「なんか〇〇なやつ」が集まったらいいなー。
トルー:
知りたいですね! やりましょう!
(おわり)
「これもうおいしそー」をあつめる投稿は本当に近日実施します! どうぞご期待ください!