特集 2020年1月7日

「もうおいしそー」と思ったら料理は途中でやめてもいい

ここでやめて食べてもいい。

調理の途中なのに「もうおいしそー」と思う瞬間がある。

「おいしそう」なら食べていいんじゃないか。タマネギを飴色になるまで炒めたやつ、ニンニクと唐辛子を炒めたやつ、卵と牛乳と砂糖をまぜたやつなど、材料以上料理未満、かつ「おいしそー」と思えるものを食べた。

そうしたら思った以上においしくて、夜中にタマネギをみじん切りしていた。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

前の記事:20mの電波望遠鏡とカリカリブラックホール ~新幹線の駅にひとり置き去り~


タマネギが特にそうだ

調理の途中なのに「もうおいしそー」と思う瞬間。

タマネギを飴色に炒めるというあの工程が特にそうだ。切るときはザクザクした感触だったタマネギが、フライパンの上で明かにトロトロになっている。香りからもなにかすごく良い類の化学反応が起きていることが分かる。そんな時に「あー、もうおいしそー」と思うのだ。

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炒める時の音も良い。何もかも良い。

そう思いながら調理を続けてカレーやハンバーグを作ったりするのだけど、ちょっと待てよ。ちょっと待てよ、自分よ。

おいしそうなら食べればいいのだ。

自分の気持ちに正直になろう。パーティーなんか抜け出して一緒に海を見に行こう。

そういうことだ。そういうことなので、日頃「もうおいしそー」と思っている「料理の途中のアレ」と一緒に、料理という退屈なパーティーから抜け出して海を見に行きました。

タマネギを飴色になるまで炒めたやつ

まず冒頭で挙げた「タマネギを飴色になるまで炒めたやつ」である。特においしそうな気がしているのが「タマネギを飴色になるまでバターで炒めたやつ」なのでそれを作ることにした。

作り方はこうだ。

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まず、みじん切りにしたタマネギを、バターで飴色になるまで炒める。
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完成でーす!

レシピを紹介しようとしても写真2枚で終わる。いや、普通この工程は写真も使わず流されていくのだろう。

しかし、しっかり「もうおいしそー」と思ったのでここで終わりである。

もう誰かの目を気にして野菜のアクをとらなくていい。カレールーをおたまに乗せてヘラでグリグリしなくてもいい。僕たちは自由だ。

あと3品、一気に作ろう

食べてみた感想はあとでまとめてお伝えするとして、残りの3つを一気に作ってしまおう。

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2品目。まず初めに、細かく刻んだニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒める。
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完成でーす!
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3品目。まず初めに、しょうゆ、みりん、お酒を大さじ1ずつ加えて合わせ調味料を作る。
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完成でーす!(見た目に変化がなくて写真が1枚しかない)
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4品目。まず初めに、卵と牛乳、砂糖を混ぜる。
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完成でーす!

材料以上料理未満の3つの何かができた。「ニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒めたやつ」「合わせ調味料」「卵と牛乳と砂糖をまぜたやつ」。

全部「まず」と言って料理の最初に作り始めるものだけど、今日は「まず初めに」の次は終わりだ。

聖書の一節に「初めにことばがあった」とある。それでもう十分じゃないか、というのがこの企画なのだ(大げさに言いすぎているかもしれない)。

困惑するおいしさ

よし、食べよう。

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調理を途中でやめたものを、味わって丁寧に食べる。
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タマネギを飴色になるまで炒めたやつ。丁寧に食べるために丁寧に盛り付けた。いただきます。
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ちょっと困惑するおいしさだった。

あまりにもしっかりおいしすぎる。材料、という感じが全然しない。甘くてタマネギの風味が濃い。野菜1種類なのになんか色んな味がする。バターともすごく合ってる。

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これをおかずにしてご飯が食べられる。

やる前の想定としては、料理の完成品ほどではないけどけっこうおいしいんだろうなあ、ぐらいの気持ちだったのだ。流木で作ったイスって素敵だけど、そもそも流木にも座れるよね、という感じ。

でも違った。この「タマネギを飴色になるまで炒めたやつ」は、既に完成度の高いイスで、ここから手を加えて作ったカレーやハンバーグは、テーブルとか本棚とか、また別の家具という感じがする。ある食べ物から別の食べ物に、「横」に移動しているのだ。

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「ニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒めたやつ」もご飯にかけた。おいしい。何の文句もない。
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「合わせ調味料」もおいしい。

しょうゆを舐めながらご飯を食べると不憫な感じがするけど、合わせ調味料にするとそれがない。お酒の味もするので、大人の食べ物という感じがする。

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「卵と牛乳と砂糖をまぜたやつ」
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おいしい。一瓶800円する味。

プリンを考えた人はなぜこれを加熱しようと思ったのか。飲みすぎてどうかしちゃったのか。

全部おいしい。それも、完成品と同じ熱量でおいしいと思える。料理を途中で放り出したものなのに。なんだこれは。料理とはなんだったのだ。

カレーライスみたいにしてみよう

ちょっと信じられないので完成品と同じ体裁にしてもう一度考えてみよう。

つまり大量の「タマネギを飴色になるまで炒めたやつ」を作って、カレーライスみたいに盛り付けて食べてみる。

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「タマネギ 食べすぎ」で検索する。しっかり加熱するなら食べる量はそこまで気にしなくていいらしい。
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原稿の締め切りギリギリに思い立ってしまい、心細いので妻にも撮影を手伝ってもらった。

「何かに取り憑かれているね…」と言いながら写真を撮ってくれた。夜、突然野菜をみじん切りする人間はそういう風に見えるだろう。分かる。

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みじん切りって顔が揺れるんですね。
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タマネギ2個分の「タマネギを飴色になるまで炒めたやつ」ができた。

今回はオリーブオイルと塩コショウを加えて炒めた。

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カレーライスみたいにする。

見た目は良い。何かの途中という感じはしない。改めてカレーライスを思い出しながら食べてみる。

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「遜色ないな…」

やっぱりおいしい。これかカレーか選べ、と言われたらその時の気分によって決めたい、と答えるだろう。カレーみたいにスイスイ食べられた。

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パセリを振ったらより良かった。ホテルだったら2,600円するやつだ。

妻にも一口食べてもらったが高評価だった。事前に、今日の僕の晩ご飯は「タマネギを炒めたやつをカレーみたいに盛り付けたやつ」にする、と言った時は「そんなのでいいのー?」という反応だったのに。

これはつまりどういうことか。タマネギを炒めていて「もうおいしそー」と思ったらそこで食べちゃっていいということだ。

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感想をまとめた。

なんか慣れないことで自分の体が不安になるけど、それ以外の要素は期待以上だった。やってみた他の3品も同じだし、その他にも「もうおいしそー」と思えるものがあれば、状況が許す限り料理をやめて食べちゃっていいだろう。


そりゃそうだろ、とも思う

タマネギを炒めたものがおいしい、と驚く反面、そりゃそうだろ、とも思う。でもやっぱり、作った感覚としては調理中なのになんか完成品みたいな味がする、その違和感をぬぐいきれなかった。

そしてその違和感は、僕にタマネギ2個をみじん切りさせるものだったのだ。突然。夜に。

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みじん切りは気持ちが落ち着くので好きだ。
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