焼き芋2品種とスイートポテト5品を食べた
用意したのは焼き芋を2品種とスイートポテトは5品。
焼き芋は、輪切りにしただけのものに、スイートポテトの仕上げである「卵黄を塗って焼く」を施したものを作って見た目はスイートポテトのようにした。同じ土俵で食べ比べてみたい。
ねっとり甘い品種の「紅はるか」と関東ではおなじみ「なると金時」
ホイルにまいて160度のオーブンで60分焼いたよ
切って、卵黄を塗り
焼き目をつける。おお、スイートポテトっぽい
スイートポテトは専門店である「らぽっぽ」と「松蔵」、スイートポテトが有名な洋菓子店「シェ・リュイ」から1品づつ(後半でセブンイレブンのものも2品追加した)
そして試食する人間サイドは、デイリーポータルZの芋担当者(好きというだけです)3名が集まった。
左からべつやく、筆者古賀、石川
芋への思いの熱い3名がそろったのでここからは対談形式でお伝えしていこう。
焼き芋とスイートポテトの違いをわかっておきたい
これ(スイートポテトからバターと砂糖と生クリームを引いたもの)
焼き芋をスイートポテトっぽくしただけのもの、試食してるだけなんですが2人とも顔があほになった
硬さがあるのでフォークを入れると卵黄部分がもっていかれてしまう! ただの芋だ
「焼き芋がスイートポテト並みに甘い今、スイートポテトはどうなっているのか」を考える記事だというのに用意した焼き芋が甘くないという痛恨のミス。
しかし、だからこそ次に食べるスイートポテトの良さに気づけるのではないか。
ちなみに紅はるかは本気を出すとめちゃめちゃに甘い(べつやくさんによる
こちらの記事より)
甘いのではなく風味があり柔らかいのがスイートポテト?
まずは「らぽっぽ」のスイートポテトから
新宿駅の構内にある店、とおくからかおりがして近くにあることをめちゃめちゃにアピールしている
甘くないスイートポテトというものがあるのか。まずはそれに3人して衝撃を受けた。
焼き芋との違いは「より甘い」のではなく「風味がありやわらかい」という点だった。意外だ。
ただ甘いだけではない「お菓子」というもののギミックを感じる。
レゲエのスピリットで芋をリスペクトするスイートポテト
続いてもスイートポテトの専門店から、松蔵のもの
そしていろいろな食べ方を紹介。「芋そのもの」として扱っている感が強い
裏っ返すと、芋!
「太陽と土にありがとう」
お菓子でありながら、形状、味、そしてパッションまでも原料である芋に寄せてきているというパターンである。こういうスイートポテトもあるのか。
足元を芋にくくりつけてあとは自由なスイートポテト
フランス料理の店がやってる本気の洋菓子店のスイートポテト
裏がまんまお芋!
下が焼き芋で上にスイートポテトが盛ってある
きびしく洋菓子性を追求しているのがわかる味である。しかし自由に飛び立ってしまうわけではなく、きちっと律儀に足元は芋においているのだ。芋に対しての義理がたさがある。
甘いスイートポテトはコンビニにある
撮影終了後セブンイレブンで買ってみました。あ、甘い。私の頭にあったスイートポテトはこれだ。
ちなみに芋餡を使った「和風スイートポテト」もあった。栗饅頭の芋版だと思うのだが、「スイートポテト」をうたうということはやはりスイートポテトに人気があるのか。
横の甘さ軸と縦の形軸
焼き芋はかつて甘くなかった。スイートポテトは甘かった。
座標の2か所しか埋まっていなかった状態だったのだ。
しかし今焼き芋は甘くなり、そしてスイートポテトは甘くないものがある。
座標の4面がすべて埋まった状態である。
試食を通じ、いよいよ表題の「現代を生きるわれわれのスイートポテトを食べる意義」について考えていこう。
ポイントは「ゴリラ」であった。
現代を生きるわれわれはスイートポテトを食べる意味が、本当にないのか?
焼いただけの芋にある最大の弱点、それは「ゴリラ感」!
芋っぽさとはすなわちゴリラ感…!
芋っぽさ=ゴリラ感!!
スイートポテトを食べる意義というのが少しずつ3人のなかで浮き出るようになってきた。
以降、まとめていこう。
2017年現在におけるスイートポテトの意義
・ゴリラの食事っぽさを消すことができる
・おならのイメージを消すことができる
スイートポテトは良い場所で売れる
「シェ・リュイ」のスイートポテトは税込み399円。お店のたたずまいもすてきです
2017年現在におけるスイートポテトの意義
・芋なのに立派に洋菓子店に並べられる
・ゴリラのお客様を招くわけではないというアピール
我々はゴリラにも人にもなれる
2017年現在におけるスイートポテトの意義
・ゴリラと人間を自由に行き来するための選択肢のひとつとしての存在
スイートポテトの先にあるなにか
2017年現在におけるスイートポテトの意義
・スイートポテトのその先を見据えた過渡期としての存在
・ケーキにはなるまいという芋に残された意識
芋との距離感をどうとるか。スイートポテトのスタンスは商品ごとにも違い、我々芋ファンにいろいろな選択肢を提供しているということが分かってきた。
そしてここで芋とスイートポテトの関係性を語るうえで避けてはとおれない話題も出てきた。そう。芋羊羹である。
芋羊羹がサイコパス
形をソリッドにするという方向性の芋菓子
芋からゴリラ性をぬいたときにあらわれる無機的な様相、その最たるところが芋羊羹なのだ。
それでは、芋はどこからゴリラではなくなるのか。芋のゴリラ性についてさらに理解を深めたい。
芋はゴリラ感が強いがそのままで超うまい
ヤーッ!
ヤーッ!
さつまいもは大変においしい芋であり人気もあるはずなのだがどこか抜けたイメージがつきまとう。それが愛しさとも言える食材なのだ。
そしてスイートポテトは悩んでいる
2017年現在におけるスイートポテトの意義
・それはスイートポテト自身もまた迷っているのだ
そして思う、スイートポテトは自由なのだと
最終的にスイートポテトの苦悩に思いをはせて終わったが、冷静になって考えてみれば、食べたスイートポテトはどれもおいしかった。
甘さを押さえ芋の味を活かし、上手に風味をつけてある。焼き芋とは違うお菓子としての良さが最大限に発揮されている。
焼き芋が甘くなり手軽に買えるようになっているのは事実だ。しかし焼き芋は常にゴリラ感と隣合わせである。
一方スイートポテトには自由がある。洗練の方向にもいけるし、ゴリラ感をあえて残しレゲエの世界に生きることもできる。
おそらく焼き芋はさらに進化する(ゴリラのままで)。スイートポテトはそれを横目に自由な姿で生きながらえるのかもしれない。