孤独なライオン、これまでのあらすじ
孤独なライオンの記事はこれが3回目である。
多摩川の河川敷を散歩中、ライオンの遊具が埋まっているのを見つけたのが事の発端だった。
このライオンに関し「なぜ孤独なのか」「いつから孤独なのか」という疑問を抱き、調査を続けてきた。過去2回の記事で次のことが判明している。
・40年近く前、ライオンの近くにはパンダの遊具があった
・「前後に揺れる遊具」や砂場もあった
・ライオンは台風のたびに埋まる
このあたりは台風のたびに土砂が堆積し、遊具が埋まってしまう。そのとき、運よくライオンだけ掘り起こされ、パンダは掘り起こされなかったとしたらどうだろう。
前回の記事で「ライオンの近くにパンダが埋まっているかもしれないので、公園を掘らせてくれませんか」と公園管理事務所にお願いしたところ、調査を検討していただけることになった。
そして、今回、本当に発掘調査が行われたのである。
発掘調査の前に、重大な新事実
さっそく発掘調査の様子をお届けしたいところだが、まずその前に重大な新事実をお届けせねばなるまい。
第2回の記事公開直後、TwitterのDMが届いた。
続編の記事を見て、改めて写真を見返しました。パンダと示されていた部分は、おそらくラクダだと思います。パンダはライオンよりも第三京浜寄りのようです。宜しければ写真をご覧ください。更なる続編を楽しみにしています。
(TAMA さん)
添付されていた写真がこちらである。
なんと、ラクダがいたのだ。新たな仲間の登場だ。
写真はもう1枚ある。
「前後に揺れる遊具」は丸太のようにも見える。じつは「前後に揺れる」というのはひとりの読者さんの記憶に基づくもので、断言できるほどの確かさはなかった。今後は「丸太のような遊具」と呼ぶことにする。
そして、前回の記事のパンダの位置が誤っていたことも判明。
同じポールだと思っていたものが、実際は別のポールだったのだ。
新事実をもとに各遊具を時系列でまとめ直すとこうなる。
発掘調査に立ち会う
第2回の記事公開後、公園管理事務所から「今度ライオンの付近を発掘調査するので、もしよければ見に来てください」と連絡があった。
いよいよ大事(おおごと)になってきた…。もちろん見に行くことにした。
当日、現場に行ってみると…
てっきり公園管理事務所の職員さんがスコップ片手に掘り起こすものだと思っていたのだが、業者がユンボで掘り起こしていくようだ。
公園管理事務所の所長さんにもお会いすることができた。(ちなみに筆者のライオンの記事を読んでくださっていた。うれしい。)
所長さんに教えていただいた内容は次の通り。
・ライオンに関するお問い合わせは多い
・台風で基礎(土台)から本体が外れて流されるというケースは考えづらい(その可能性のある遊具は事前に避難させるので)
・台風で流されたというより、流木等で傷ついてボコボコになってしまったために基礎ごと撤去した可能性が高い
・公園管理事務所としては、パンダやラクダの基礎だけ残っているという中途半端な状態は管理上良くないので、今回その確認をしたい
なるほど、公園管理事務所としては、パンダやラクダに関して基礎ごと無くなっているのが正しい状態のようだ。
ユンボの運転手にもご挨拶したが、「たぶんもう無いと思うよ~」とのことだった。しかし、あったとしても無かったとしても価値のある調査だと思う。いよいよ始まる。
砂場を掘る
まずは砂場があったと思われる場所を掘り起こす。砂場は基礎が残っている可能性が高く、他の遊具の基準になる。
砂場の基礎はまだあった。よかった。10年前のGoogleストリートビューを最後に確認できなくなっていた砂場が、ついに発掘された。
ラクダはいるのか
砂場の位置がわかったので、次はラクダである。
しかし、ラクダ本体はおろか基礎すらも見つからなかった。筆者としては残念。
大本命、パンダはいるのか
次はパンダを掘る。パンダの場所については公園管理事務所の記録に残っておらず、私の作成した最新の位置画像(新事実を反映済みのもの)をお見せし参考にしていただいた。お役に立てて光栄だ。
念には念を入れ、かなり広い範囲で掘り進めていく。
40年前の写真に写っていたライオンの基礎がついにあらわになった。感動である。ライオンもひさしぶりに足を出せてよかったね。
で、パンダがいると思われる場所をライオンの基礎と同じ深さまで掘ったのだが、本体も基礎も見つからなかった。業者の方が言うには、たとえ台風があっても、基礎の深さが変わることは無いそうだ。
基礎ごと撤去されていた
結局、ラクダ・パンダ・丸太のような遊具のいずれも、基礎・本体ともに見つからなかった。公園管理事務所の所長に再度お話を伺ったところ、基礎ごと撤去された正常な状態が保たれていることがわかり、管理者としては安心したとのこと。「読者の皆さんはライオンの仲間が見つからなくて残念と思われるかもしれませんが…」と気遣っていただいた。
孤独なライオンはやっぱり孤独だった
約40年前にはパンダやラクダなどに囲まれていたライオンであったが、いまとなってはやっぱり孤独だった。
発掘調査でパンダやラクダが見つからなかったことは残念だが、真実に近づいたとも言える。「無いことがわかった」にも大きな価値がある。調査とはそういうものだ。あらゆる可能性を想定し、ひとつひとつ消していく、途方もない消去法である。
孤独なライオンはやっぱり孤独だった。トートロジーのような言い方であるが、ここにたどり着くまでに様々な発見があった。自分自身、いい思い出にもなった。それらを噛みしめつつ、今回で調査は一区切りとしたい。
調査はチームプレイ
これまで、3回に渡ってライオンの真実を追い続けてきた。
第1回の記事では筆者がひとりでインターネット上の画像を調べるのみであったが、第2回の記事ではインターネット普及前に撮影された写真が読者から届き、調査を大きく進歩させた。そして今回の記事では公園管理事務所の発掘調査によってさらに真実に近づいた。
調査というものが、いかに一人では困難なものかを思い知らされた。インターネットが軸となり、多くの人々の助けを借りて真実に近づけた。とてもいい経験になった。携わってくださったすべての皆さまに感謝したい。