鷹みたいな顔になる
気になったら見に行く。歩きの散歩では普通にやることだ。それの電車のやつをやろう。
前日の嵐みたいな雨が止んで、呆れるほど天気がいい。散歩日和である。朝からスキップで電車に乗り込んだ。
電車は空いていたがもちろん立って窓から外を見る。「気になるもの」を探すためだ。鷹みたいな顔をしていたと思う。
大きな公園、「TVマージャン」という看板、同じ車がびっしり停まっているタクシー会社の駐車場などが見えた。
気になるものはたくさんあるが、降りて見に行くというのはなかなか勇気の要るものである。時間と労力をベットするタイミングが難しいのだ。ギャンブル要素のある散歩だ。
そんなことを考えているうちに電車はすごいスピードで移動していく。景色が一瞬一瞬変わっていくのだ。恐ろしくなってきた。
「ここじゃん」と思った。電車の窓から見える気になるものといえば煙突である。
鉄塔でもタワマンでもない、高くそびえるもの。見る度に「多分、何かの煙突だな」と思っていた。はっきりさせよう。
1カ所目 白い煙突
まずは見晴らしのいい場所を探す。
電車の窓から見た時より小さくて心細い。あれが何で、どれくらい歩いたら着くのか全く分からないがとりあえず向かってみる。
「散歩だから」という建前があるので行動のハードルが低い。ずんずん歩いたら不安も消えた。
目指す煙突が全然小さくならないが、不思議と安心していた。目的地が見えるのっていいですね。
煙突が大きく見えてきた。もうすぐ着くかもなと思ったが行きたい方向に道がない(何か分かってしまうので地図は見ないようにしていた)。
行ったり戻ったりして時間を取られたが、休憩のために入った公園で急に煙突の根元が見えた。
車窓から「へー」と淡い念を飛ばしていた場所に体が追いついた。
しかしここが何か分からない。周りをぐるっと歩くと施設の名前が分かった。
ごみ処理施設だった。窓から見えたのはその煙突。
松戸市内最大規模のごみ処理施設で、煙突の高さは125mもあるらしい(ここで自身に検索を許可した)。
「はぁー」とか「へぇー」とか言いながら煙突の周りをぐるぐるした。歩きで散歩していて、雰囲気のいい小さな神社を見つけた時と一緒だ。大きな感動ではないが、ちょっと嬉しい。
煙突を見ながらうろうろしていると、警備員さんと子どもを連れた人が話していた。勝手に身構えてしまったが、どうやら親子の写真を撮るためにシャッターを押してあげてたらしい。のどか。想像のはるか上を行くうららかさ。春だな。
そんな様子も見て、公園を一周したら満足して駅に戻った。帰りは煙突がずっと背中にいた。