日本各地にある県境未定地
県境未定地とは、県境のラインがどのあたりかはっきり決まっていない場所のことだ。
いちばん有名な例として、富士山は県境が決まっておらず、山頂が山梨県、静岡県どちらなのかははっきりしていない。 というのがある。
つまり、富士山山頂に登頂した人たちは、山梨県にいるのか静岡県にいるのか、はっきりしていない。富士山の山頂あたりでウロウロしていると、山梨県から県境を越えずに静岡県に入る、つまり県境を歩いてワープした⋯⋯ということになる。
富士山山頂で撮影した写真のジオタグがどう判定されるのか。非常に興味があるけれど、ぼく自身は富士山に登山する予定がまったくないので、実際に行ってiPhoneで写真撮ったことがある人はどうなっているのか教えてください。
富士山の山頂は、富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)の奥宮境内地となっている。
1951(昭和26)年に静岡、山梨両県知事により、富士山の県境についてはお互いに争わないという取り決めをしたとされ、2014(平成26)年には山梨県の横内知事、静岡県の川勝知事(それぞれ当時)が改めて県境については争わないという方針を表明した。
殺伐とした話題が多い昨今、境界なんかで無駄な争いはやめましょう⋯⋯という平和的な話として見ると、とてもおもしろい。
ただ、山頂の土地は宗教法人である神社の境内地なので、基本的に固定資産税がかからない。つまり県境をきっちり決めたところで、どちらかの県(の市町村)に税金が入ってくるわけでもない。
平和のためにあえて境界を決めない、というよりは、決めても特に得することがないので、わざわざ揉めてまで決めない。それだけの話なのかもしれない。
気軽に行ける県境未定地
さて、富士山のような超メジャーな県境未定地だけではなく、他にもいくつか県境未定地はある。
国土地理院の『全国都道府県市区町村別面積調』によると全国に14箇所あるとされているが、カウントのしくみがよく分からず、短い県境未定地ラインを一つとまとめて数えているところもあるので、県境ラインが途切れている場所を個別に数えるとこれよりもう少し多くなるかもしれない。
これらの県境未定地は、いずれも山の中か川の上に存在するので、登山するか船でいくかしなければ現地に近づくことは難しい。
ところが、登山することなく、船に乗ったり泳いだりしなくても、徒歩や車で県境未定地を気軽に通過できるセキュリティーホール県境が、全国に2箇所だけある。
それが、東京都江戸川区と千葉県市川市の江戸川水閘門と、愛知県弥富町と三重県木曽岬町の木曽岬境港だ。
千葉と東京が融合するセキュリティーホール県境
上で挙げた2か所のうち、江戸川区と市川市の江戸川水門については以前、実際に訪れて記事にしたこともある。
現地はかなり大きな河川敷となっていて、草野球場などもある。この球場の住所は市川市川原となっているので、市川市が実効支配してるのかな? と思いがちだが、球場の南側には国土交通省の河川事務所があり、住所は江戸川区東篠崎町となっている。
そして、県境が未定となっている旧江戸川の上には江戸川水門と江戸川閘門がある。水門の方は橋のようになっており、徒歩で歩いて渡ることができる。ちなみに、閘門とは水位が違う2つの場所を船が行き来するための水門のことだ。
水門の歩道を渡ると、東京を出ることなく千葉に行くことができる。という意味のわからない状態になって思考がバグる。
⋯⋯と、ここまで書いておいて、江戸川水門と閘門についてwebで調べていたところ、現在江戸川水閘門は改築工事中らしい。
上のリンク先の記事を読むと、江戸川区長、市川市長がそろって、笑顔で盛土に鍬を入れていた。
お互い腹の底ではどう思っているのかを知る由はないが、そこには領土問題を抱える首長とは思えない不気味な和やかさがある。
大正時代に現在の江戸川を新しく掘ったのが原因
なぜ、ここだけ県境が未定になったのか。
以前の記事でも解説したが、簡単にまとめると、川を新しく作ったからだ。
1919(大正8)年より以前は、現在の江戸川は存在せず、上流から流れてきた水はすべて現在の旧江戸川の方へ流れていた。河口の水量を減らして水害を予防するため、途中で新しい川を掘った、それが今の江戸川だ。
そのさい、川が分岐する場所は川の位置が少し変わったが、境界を変わった川に沿って県境を引き直そうという千葉県側と、昔の県境を維持させようという東京都で意見が食い違っているというわけだ。


