特集 2023年9月1日

年間350本!アキダイの社長に「どうしてそんなにテレビに出るんですか?」と聞いた

テレビでニュースを見ていると「あのスーパーの店長」がコメントを求められているのをよく見る。「スーパーアキダイ」の秋葉社長である。

野菜が高いとき、レジ袋が有料化されたとき、軽減税率が導入されたとき、テレビがみんな秋葉社長にコメントを聞きに行くのだ。

お店だってめちゃくちゃ忙しそうなのに、聞かれたことに的確に答えるって簡単じゃない。大変なんじゃないですか。

じゃぁ、直接聞いてみよう。

秋葉社長、どうしてそんなにテレビに出ているんですか?

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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テレビで秋葉社長を見るときは「平和なとき」

やってきたのは東京都練馬区にある「アキダイ 関町本店」。出迎えてくれたのは、もちろんこの方である。

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株式会社アキダイ 代表取締役の秋葉弘道さん!

朝の情報番組、昼のワイドショー、夕方のニュースで見かける、「あのスーパー」の「あの社長」である。

もはや、法事でしか会わない親戚のおじさんよりも顔を見ているのではないか。

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取材にうかがったのは平日の開店時間(朝10時)。既に開店を待つお客さんが並んでいる。

秋葉さん 平日はいつもこんな感じですね。特売のときはスゴいですよ。朝9時の段階で200人以上、店の入口からずーっと行って、路地を曲がった先まで並んでますから。なにが起きてるんだろうって思われてますよね(笑)

恐らく、多くの人の脳内で秋葉社長の声が脳内再生されただろう。今回はその感じで最後までお読みいただきたい。

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お店の奥にある社長室でお話をうかがいました。

さっそく「年間何本くらい取材を受けているんですか?」と聞いてみると、「ここ数年は年間350本くらい」とのこと。ほぼ毎日じゃないですか……! 

民放各局やNHKをはじめ、ラジオや新聞、ロイターといった通信社からも依頼が来るそう。

秋葉さん といっても、全部流れるわけじゃないんですよ。大きな事件があったら、そっちが優先されますから。だからどっちかというと「平和系」の話題なんですよね。

テレビで秋葉社長を見かけるときは平和なときなのだ。よかった。

とはいえ、ここ最近の物価高はシビアな話題のひとつでもあるだろう。どうしてみんな秋葉社長に連絡をしてくるのか。

秋葉さん 僕自身が市場に仕入れに行って、店頭にも立っているのが大きいですね。大手のスーパーはバイヤーや仲卸が間にいるので、現場の青果担当は直接仕入れていないことがほとんどなんです。

アキダイはいくつかの市場と直接お付き合いをしているので、産地からの情報も入ってくるし、生産者さんとのつながりもできる。だから、情報にタイムラグがないんですね。

生産者とつながりができると、リアルタイムで情報が入ってくる。たとえば「洪水の影響でこんな被害が出た」という情報は、当たり前だけど生産者のほうが詳しい。

ときには生産者さんが秋葉社長に動画を送ってくれたりするので、メディアが知らない情報を持っていることもしばしば。

さらに、スーパーアキダイは個人店ながら1日あたりの仕入れ量が多く、仕入れ値が安定しているのも強み。複数の市場と付き合いがあるから「本当は相場が安いのに高く買わされている」ということもない。コメントの情報源が確かなのだ。

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「そんなの断れないでしょ?」

そしてもうひとつの理由が、秋葉社長がぜんぜん断らないこと。

だって、秋葉社長の携帯に直接電話がかかってくるのである。朝に「これから行ってもいいですか?」と電話が来て、昼にコメントを撮影するのも「しょっちゅうある」そう。

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この日も取材中にテレビ局から電話が。このあと外出の予定があるので取材は受けられないが「情報だけならあとで電話するよ」と連絡。

秋葉さん 普通こういう取材って、ADさんが10ヵ所くらいリサーチして、情報に間違いがないか裏を取り、「ここなら感じも良いし大丈夫そう」と取材先を決めるみたいなんです。でももう、僕に聞けばいいから(笑)

アキダイへの取材が増え始めたのは、東日本大震災が起きた2011年ごろ。物流網が混乱し、野菜や果物の価格が高騰。原発事故の風評被害も懸念されていたときだった。

つまり、取材を受け続けて10年以上が経つ。すると何が起きるか。

ADさんが出世するのである。

秋葉さん ディレクターになったり、プロデューサーになったりして、結構すごい知り合いが多いですよ(笑)。そういう人たちの下で働く若い子が、「困ったらアキダイさんの社長に連絡してみなって言われました」と電話してくるわけです。そんなの断れないでしょ?

さらに、取材対応はすべてノーギャラ。年間350本も取材を受けて、一銭も受け取っていないという。「聞かれたことに答えてるだけだしね(笑)」と秋葉社長は笑う。

秋葉さん やっぱり、みんな一生懸命仕事しているわけじゃないですか。僕が八百屋の仕事を頑張っているのと同じで、記者やテレビマンも「いい記事を書きたい」「いい画を撮りたい」という思いで仕事をしてる。それなら、自分もできる限りの協力はしたいなと。

だからといって、間違ったことは言いたくない。

テレビ局から「『高いですよ』って言ってほしい……」という空気を感じても、「これ明日の放送でしょ? 明日だともっと下がるよ」と言うべきことは言っちゃう。

10年以上も取材を受けているから、オンエア日まで把握して情報を教えられるし、新人ADより取材の流れを把握してるし、原稿無しで尺ぴったりにコメントできてしまう。

聞けば聞くほど「そりゃお願いするわけだ……」となるのだった。

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今年の夏野菜はどうですか?と聞いてみると「いいですよ!枝豆なんかめっちゃうまいです!」とおすすめしていただきました。

それにしても、これだけテレビに出たら、お客さんも増えたんじゃないですか?

秋葉さん そうかもしれないですね。でも、最初はいろいろあったんですよ。従業員の仕事の邪魔だからやめてほしいとか、あまり良く思っていないお客さんがいたりとか。それでも迷惑がかからない範囲でと続けてきて、結果的によかったかもしれない。

そもそも、最初から見返りを考えるのって駄目だと思うんです。

「テレビに出たらお客さんが増えるかも」と考えるんじゃなくて、聞かれたことにちゃんと答えるとか、その人のためになにかしたいっていうのが先にあるべきでしょ。自分が何か得するからとかは、考えないでいいじゃんって思いますね。

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