特集 2023年9月1日

年間350本!アキダイの社長に「どうしてそんなにテレビに出るんですか?」と聞いた

しゃべれるようになりたかった

これだけ毎日取材を受けている秋葉社長である。さぞや昔から弁が立つ人だったのだろうと思ったら、「小学生のときは全然しゃべれなかったんですよ」だそう。

秋葉さん 「えっとね、えっとね……」という感じで、なかなか言葉が出てこない子どもでしたね。小5のときに、厳しい体育会系の先生が担任になってからは、人前で発言するのを避けるようになってしまって。

そんな秋葉少年、中3の体育祭で応援団長をすることになる。いきなり変わり過ぎじゃないですか!?

秋葉さん みんなが「やれやれ」っていうので、流れでやったんですよ(笑)。でも、応援団長として大きな声を出したり、後輩と接したりするうちに、「こういう風になりたいな」って思ったんですよね。

覚醒した秋葉少年は、高校入学後もチャレンジが止まらない。学級委員をやり、生徒会副会長をやり、最終的に生徒会長まで務めた。校内放送で「何言ってるかわからない」と笑われたりしたけど、それも愛嬌がある感じでまた良かった。

そして高1の終わりごろ、アルバイト先を決める際の「チャレンジ」が、八百屋だったのだという。

秋葉さん 八百屋って、全然知らない人に話しかけるじゃないですか。すごいなって。ここで働けばしゃべれるようになるんじゃないかと思って、チャレンジしたんです。

アキダイの原点って、「八百屋をやりたい」じゃなくて、「しゃべれるようになりたい」だったんですか……!

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「それで段々と接客ができるようになって。まだまだ苦手ですけどね、しゃべるのは」いやいや、そんなことないですって……!
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バスに向けて「大根10円!」

こうして、八百屋という「天職」と出会った秋葉社長。バイトの身ながら、1日に桃を130ケース以上売ったりもしたそう。すごい。

高校卒業後は電気機器関連の企業に就職したものの、八百屋の楽しさが忘れられず退職。バイトをしていた八百屋に社員として雇ってもらい、「十年に一人の逸材」とまで言われるようになった。

こうなると「自分の店をやってみたい」と思うもの。さらにもろもろ修行を重ね、23歳でついに「アキダイ」をオープンする。

秋葉さん 1992年3月25日、水曜日でしたね。最初の店はここじゃなくて、すぐそこのバス通り沿いだったんですよ

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社長室に飾られている開業当時の「アキダイ」。「アキダイ」という名前は、秋葉さんの「秋(アキ)」と、高校時代の友人・大沢さんの「大(ダイ)」から。一緒に起業するつもりだったが、残念ながら叶わなかったため、名前だけ残している。
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創業した場所は今、アキダイ系列のパン屋「あきぱん」になっている。右奥に人影が見えているところが現・スーパーアキダイの店舗。

テレビに映るアキダイを見て、「商店街にあるのかな」と思った人も多いかもしれない。でも実はこの場所、住宅地のど真ん中なのだ。

23歳という若さで独立したので、物件探しには苦労したそう。ようやく借りられたテナントは、地元でも何でもない練馬区の住宅地。となると、商店街に比べて人が集まりにくく……。

秋葉さん 最初のころはひどかったですね。オープンから1週間したら、全然お客さんが来なくなって。店の目の前をバスが通るんだけど、乗客から「あ〜あ、あの店つぶれちゃうよ」って言われている気がして、ずっとバスに背中向けてましたから。

早朝から仕入れをしても、午前中にお客さんが1人来るか来ないかの日が続く。売れない野菜はどんどん腐敗して、捨てざるを得なくなる。なんでこんなことしているんだろう。

あんなに大好きだった仕事が嫌いになり、ついには「火事になったら辞められるかな」とネガティブなことまで考えるようになった。このままではいけない……!

秋葉さん そこで「1年後に辞めよう」と覚悟を決めました。その代わり、後悔が残らないようにしようと。お客さんが誰も来なくても「いらっしゃいませ〜!」ってずっと声を出したり、段ボールに「大根10円!」って書いてバスに見せたり、できることを全部やりましたね。

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「感謝の気持ちを持つようになったら、風向きが変わってきましたね。最初は『お客さんが1人しかこない』と嘆いてたんですけど、『1人来てくれた!』と感謝するようにしたんですよ」

地道な接客と口コミでアキダイは徐々に客を増やし、気がついたら1年が経っていた。

辞めることなんて、すっかり忘れていた。

秋葉さん 自分が苦しい思いをしたからこそ、苦しんでる人を見たら助けてあげたいというか。優しい言葉ひとつで、どれだけ救われるか身をもってわかってますから。だから、困っているテレビマンもみんな助けてあげたいって思うんですよね。

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