パッと決めた日の記録を募ってみる
大きな事件や災害が起こった日に、何をしていたかということはみんな憶えているものである。「あの台風の日はすごかった!屋根が吹き飛ばされそうでねぇ」とか、後々まで記憶し、語り継いだりする。
一方、世界中の人や日本中の人などが影響を受けるような大きなことが起きなかった日はどうだろう。なんでもない日の記憶だ。例えば去年の7月20日あたりはどうだろうか。深い意味もなく「しちがつはつか」という語感のよさで選んでみた。
もちろん、その日のニュース記事を遡って調べてみると色々なことが起きている。また、ニュースになったようなことじゃなくても、中には個人的に大変な出来事を経験したという方もいるだろう。そこは重々承知しつつ、一旦この日を「なんでもない日」と呼ばせていただきたい。ご了承ください。
で、2019年7月20日に誰がどんな風に過ごしていたかという記録をたくさんの方から集めたいと思ったら、一体どうしたらいいんだろう。これがまず大変だ。ネット上の無数の日記ブログを横断して……という手もなくはないが、もう少しスムーズな方法は何かないか。そう考えた末、「デイリーポータルZをはげます会」の会員のみなさんに頼らせていただくことにした。いつもすみません!
こんな質問をさせていただいた。
2019年1月1日と2019年の7月20日の2日間について、
・晩ごはんのメニュー
・どこにいたか
・この日にあったこと
を教えてもらえないでしょうか
2019年1月1日のことも聞いているのは、もしかして7月20日のことなんか誰も憶えてないんじゃないかと思ったからだ。「元旦の記憶ならあるけど……」ということであればそっちにシフトしようという、いわば保険。晩ごはんのことを真っ先に聞いているのは、みんながその日に何を食べたかを想像するのが一番その人を身近に感じられる気がしたからである。これは個人的な趣味かもしれない。
それにしてもいきなり「去年の7月20日の晩ごはんは?」って、かなり困る質問だと思う。今さらだが申し訳ない気分だ。しかしそんな妙な質問にたくさんの方が回答を寄せてくれた。さすが「デイリーポータルZをはげます会」!バンザイ!
去年の7月20日を思い出してみる
集まった記憶の断片を見ていくにあたり、デイリーポータルZ古賀さんにも協力いただいた。二人であれこれコメントしながら進めていきたいと思う。
スズキ「集まった情報をダーッとみると、あたりまえだけどみんなそれぞれの場所で色々なものを食べたりして過ごしているんですね」
古賀「私、これこそが多様性なんじゃないかと思いましたよ!」
スズキ「多様性ですね。しかも結構、誰のを読んでもうらやましくないですか?食べたものにしても一日の過ごし方にしても。それに驚きました」
古賀「そうそう。人の食べてるものがやけに美味しそう」
スズキ「ちなみに私の7月20日の記憶なんですが、日記を見返したらこの日はほとんど何もしてなくて、宮迫とロンブーの亮の会見をネットで見ていたようです。あれ、結構みんな見てたんじゃないかと思ったんですが、今回集まった記録には一つもない。なんで!みんな見てないんですか?会見」
古賀「あはは。みんなそこまで感心ないんですよ!みんなそれぞれのことで頭がいっぱいですよ」
スズキ「古賀さんは7月20日は何をしてたんですか?」
古賀「夜は焼き魚を食べたと日記に書いていて、午後は友達と代官山蔦屋に行って、あそこ、ファミマが併設されていて表にテーブルがあるんですよ。そこでビールを飲んだのを思い出しましたよ。だからいい一日」
スズキ「優雅ですね。そもそも7月20日って何曜日なんだろう。土曜日か。それすらも知らずに設定してしまってました」
スズキ「同じ日の私の夕飯は、すき家の牛丼です。これは日記に残っていました。残念ながら牛丼自体の写真は残ってないんですけど、その日に撮った別の写真がこれで。リカーショップのYAMAYAのドアなんですが」
「誰かの7月20日」を垣間見る行為
スズキ「他のみなさんはどんな7月20日を過ごしたんでしょうか。上から見ていきましょう。『ぼんちゃん』さんです“このちょっと前に小野式製麺機を入手(もちろん玉置標本さんの影響)したので、麺もスープも自作しました。おいしかったです”とコメントがあります
古賀「製麺機だ。すごいですね」
スズキ「写真も添えて下さっているんですけど、これ、実家系ラーメンみたいじゃないですか!」
古賀「本当だ!これピーマンですよね。あんまり入れなくないですか?」
スズキ「そこに自分ちのラーメンという感じがありますよね。これが写真に残っていて、今それを自分が見ているのが不思議でならない」
古賀「奇跡ですよ。人のなんでもないご飯を見せてもらってるわけですからね」
スズキ「次は『suchi』さん。7月20日は、入船鮨登呂店で寿司を食べたとのことです」
古賀「この方はそうだ、将棋大会に行かれたと書いてましたよね」
スズキ「そうそう。すごく詳細にこの日のことを書いてくださっていて、この日、静岡の『ツインメッセ静岡』で『将棋日本シリーズJTプロ公式戦/テーブルマークこども大会』という催しがあって、朝早くからsuchiさんはそこへ向かってるんです。お子さんも将棋がお好きらしく、子ども大会に出場していて、suchiさん自身も対局されているみたいです。その後、斎藤慎太郎王座と羽生善治九段の対局もあって、羽生さんが勝利したと。で、勝利者とハイタッチできるらしくて、その列にたくさんの人が並んでいたそうです」
古賀「羽生さんとハイタッチできるんですか?やばくないですか?超プレミアムな一日」
スズキ「ね!羽生さん、ハイタッチしそうにないイメージ」
古賀「私が好きなのは途中でこの方、“ヨーカドーでパンを買った。私は宝くじを買った”って書いていて、こういう細かいことをよくぞ書き残しておいてくれたなと!宝くじ買ったんですねぇ!」
スズキ「ははは。こんな時、ふと宝くじを買いたくなったりしますよね」
古賀「生活の機微が出ていていいなー。息子さんは3回戦で惜しくも負けたと書いていて」
スズキ「本当は『予選を通過したらお寿司でお祝いだ』と約束していたけどそこまでいかなかったのかな。でもまあ頑張った!ということでお寿司を食べに行ったようです」
古賀「いい一日だー!」
スズキ「あと、将棋大会の会場の写真を送ってくれているんですが、これパッと見た時に、宮迫の会見の会場だ!と思たんですよ」
古賀「ははは。そんなにみんな宮迫の会見のこと考えてないですから!」
スズキ「そうなんだなー」
一方その頃、ココイチでカレーを食べている人もいる
スズキ「その一方で『のちさん』さんという方はココイチソーセージ乗せを晩ごはんに食べたそうです。“植物専用に使おうと思って買った棚が届いたので組み立てました”と書いてくれています」
古賀「うわ、すごいセンスのいい棚!デザイナーの方だそうだし、こだわりを感じますね」
スズキ「これは組み立てが結構大変だったんじゃないですか」
古賀「土曜日とか日曜日って、何か大きい荷物が届くとそれに対応しなきゃいけないじゃないですか」
スズキ「はいはい。その処理でなんとなく一日が終わってくという。それでちょっと疲れたからカレーにソーセージをトッピングしたのかなー」
古賀「人の暮らしを見ていると、すごいチャーミングだなと思わされますよね。この方は1月1日の方の記録も書いてくださってるんですけど“おばあちゃんの家で宴会をしていて、途中で記憶を失いました”だって!チャーミングだー!」
スズキ「ははは、宴会がめちゃくちゃ楽しくて飲み過ぎたんでしょうね」
古賀「こうやって色々と想像しながらその人に近づいていくのが楽しいですね」
スズキ「次の方は『チャーリー浜岡GP』さん」
古賀「そう、この日の次の日、ヘボコンの大会だったんですよ。年に一度の中央大会の日で、それに参加された方がこのチャーリー浜岡GPさんで、私、会ってますよ翌日に。王将の歌ききましたよ」
スズキ「王将?」
古賀「ロボットが走ると『王将』の歌が流れるっていう仕掛けのロボットで参加されてて」
スズキ「前日にカラオケで録音したって、結構ギリギリなんですね(笑)で、その前にカレーを食べたそうです」
古賀「美味しそうー!!」
スズキ「さっきのココイチとはまた違うけど、これもいい。ビールも飲んでるよ!いいなあ」
古賀「充実した一日ですねこれも」
スズキ「次の『他故壁氏』さんの夕飯はそうめんですって」
古賀「この方にもお会いしたことがあります。文具マニアで、きだてたくさんと『ブング・ジャム』っていうユニットを組んでいる方です」
スズキ「これが7月20日に撮った写真だそうです」
古賀「こんな写真よく撮ってましたね」
スズキ「これもこだわりの文具だったりするんでしょうね」
古賀「なんだこれ右のやつ」
スズキ「上のが詰め替え用で下のに入れるんじゃないですか?」
古賀「そうだそうだ」
スズキ「残念ながらそうめんの写真は残ってないようです。そうめん撮らないもんなー」
スズキ「私はこの日の昼にそうめんを食べてたんですよ。日記によると」
古賀「惜しかったんだ!」
スズキ「うん。でも昼です。夕飯をそうめんで終える勇気ってあります?そうめんで終われるってすごい!」
古賀「精神力がね(笑)それで満足できるってね」
スズキ「次は『とも』さん、“宮沢賢治記念館に行ってその後実家で兄弟が集まってご飯を食べました”とのことです。岩手で宮沢賢治記念館を見て、仙台のご実家に帰ってお寿司を食べたそうですよ」
古賀「実家で寿司だ。豪勢だ」
スズキ「酔って記憶をなくすぐらい楽しいでしょう。写真はないけどおそらく大きい寿司桶のやつでしょうね」
「一回帰ったけど謝った二人」もいる
古賀「次の『くまみ』さんが最高じゃないですか?“映画を見にいく途中で喧嘩して解散し、購入していたチケットを無駄にして家に帰ったあと、再集合して西新宿の焼肉屋にいました”ってさぁ」
スズキ「ちょっと文学というか」
古賀「これは文学でしょ!もうさー」
スズキ「写真もありますよ。“当時、老けるフィルターが流行っていてこの日撮りあっていました”」
古賀「ははは、ばっちり老けてるなぁ」
スズキ「西新宿の焼肉屋で再集合して老けるアプリで写真を撮りあってたんだ」
古賀「そんなことある?ケンカして映画のチケットを無駄にして、再集合したんですよ。仲直りして」
スズキ「やっぱりごめん!ってなったんだ。で、それで焼肉食べながら老けるフィルター」
古賀「仲良過ぎでしょ!」
スズキ「ははは。ケロッとしてね。一気に許しすぎでしょ!」
古賀「もう少し気まずくてもいいでしょ!」
スズキ「早速もう遊んでるっていう。仲が良い。じゃあ映画も行けたんじゃないか!?」
古賀「これ、人生でもすごい珍しい日じゃないですか?こんな日ないでしょ!」
スズキ「カップルだったとして、たとえばその後に結婚されてたりしたら二人の思い出になってそうな日ですよね」
古賀「うん。歌の歌詞になりそうじゃないですか!『ケンカして~ 一回帰って謝って~』みたいなさー」
スズキ「ははは。でもそんな時、シャレたレストランじゃなくて焼肉屋さんに再集合なんですね」
古賀「そこ焼肉に行けないですよ普通」
スズキ「『さっきはごめん!焼肉おごるから!』みたいな感じだったのかな」
古賀「『うん。じゃあいいよ』みたいなね。妄想いくらでもできますね(笑)」
スズキ「次の『よ』さんは、“仕事の後にダッシュでB'zのライブに行きました”とのこと。これもまた、一方その頃って感じですよね」
古賀「夕飯はサンマルクカフェでパフェだって」
スズキ「ライブだから軽く済ませたりしたのかな」
古賀「あー。この方、充実されていて、元旦には宝塚を見に行ってるんですよ。エンタメがお好きな方なんですね」
スズキ「B'zのライブ会場は『神戸ワールド記念ホール』」
古賀「調べてみるとキャパは8000人だそうです!B'zをその規模で見れるなら相当いいかもしれないですね」
スズキ「セットリストも見ておきましょうか。あれ、7月20日にそこでライブをした記録が無くて、もしかして6月20日かな(間違いだったらすみません)でもまあ、近似値ですね。あれ!知ってる曲が全然ない。21曲もやってるのに私は『ultra soul』と『裸足の女神』しか知らないです!」
古賀「本当だ。19曲目の『兵、走る』はラグビーのテーマソングでしたね」
スズキ「そうなんだ。でもいま我々B'zのライブ行けたとしてもポカーンかもしれないですね。ちゃんと聴いてから行かないと」
パラレルワールドみたいな現実が次々と
スズキ「一方その頃ですよ。『傍見頼路』さんは“昼過ぎからJ3(岩手対群馬)の試合を見ながら、生ビールとハイボールを飲んでホルモン煮と鶏唐を食べてました”ですって」
古賀「盛岡のスタジアムで試合を見てたんだ。『いわぎんスタジアム』で」
スズキ「岩手の宮沢賢治記念館を見てる人がいる一方、同じ岩手でサッカーを見てる方もいる」
古賀「J3かぁ……岩手対群馬。そもそも岩手のチーム名を私は知らないですよ!」
スズキ「まったくです。調べてみると、『岩手グルージャ盛岡』というチームと『ザスパクサツ群馬』」
古賀「あ!ザ・スパ・クサツだ」
スズキ「草津温泉っていうことか!岩手と群馬ってなんか渋いカードですね。その日のスコアが残ってます。2対2で引き分けですって。サッカーだったら盛り上がる展開ですよね。盛岡でその試合が行われて、それを見ながらハイボールを飲んで」
古賀「もうパラレルワールドですよねぇ。『いわぎんスタジアムで岩手グルージャ盛岡とザスパクサツ群馬がサッカーしてる』って、もうなんか逆に適当に考えた設定みたいですよね(笑)」
スズキ「嘘みたいな」
古賀「しびれますね。これが現実とは」
スズキ「次の方はシンガポール在住の『ヨルハ』さんで、“日記には「何も特別なことはせずのんびりした一日でした”とあって思わず笑ってしまいました。うまかっちゃんの品揃えに驚いて写真を撮っていたので、ドンキには行ったみたいです”と書いてくださっています」
古賀「シンガポールにドンキがあるんですね!あ、今調べてみたら何店舗もありますよ!」
スズキ「そこに行けば、うまかっちゃんなんかも売ってるんだ」
古賀「10ドル90セント安いのか高いのかわからないですけど」
スズキ「夕飯は『うまかっちゃん』ではなく、“豚の角煮、鮭とキャベツの塩昆布和え(夫作)”とのことです。塩昆布なんかもドンキで買っているんですかね」
古賀「ねー。思いっきり日本食ですもんね」
スズキ「そんな一方で『よよよ』さんは、“職場(研究所)の一般公開で自分の研究の説明をしていました(写真に写っているのは私ではありません)”とのこと」
古賀「これ、あそこじゃないですか? 安藤さんが記事で紹介してたところじゃないですかね!」
スズキ「はいはい!いくらでも時間が潰せるっていう」
古賀「つくばの『地質標本館』ですかね」
スズキ「そこで研究の説明をされたんですが、夕飯は納豆ごはんだとのことです。軽め」
古賀「納豆ごはんだけかぁ。ちょっと、お疲れでしょうにね」
スズキ「かっかっかっと掻き込んでね。お忙しかったのかもしれないですね」
古賀「いやー!色んな人がいるなー!色んな人が、いる!」
同じ一日なのにこんなにも違うとは
スズキ「次の『きゅうす』さんなんて、山登りされていますよ。“東北の温泉を巡りつつ山を縦走する初日で、秋田の玉川温泉に投宿し、温泉の湧きっぷりやクマの気配におびえたりしていました”と書いていて、写真をすごくたくさん送ってくれました」
古賀「秋田か。玉川温泉。いいですねぇ」
スズキ「この人は登山して温泉宿で夕飯ですから、ちょっと美味しさがハイレベルな感じ。もう絶対にめちゃくちゃ美味しかったはず」
古賀「山菜多めのバイキングですよ!」
スズキ「いいなー!食べたいわぁ。その頃、そうめんを食べている方もいるというのに(笑)」
古賀「同じ一日の同じ人間なのにねぇ」
スズキ「『いしかわ』さんという方は、“六角橋商店街のドッキリヤミ市場に行きました”と」
古賀「この『ドッキリヤミ市場』っていうのは編集部の安藤がはげます会のみんなで行こうと企画したもので、そこに参加してくださったんですね」
スズキ「写真を見ると、めちゃくちゃ楽しそうなイベントですね。狭いところに人がギュウギュウしていて、恋しいなー!ちょっと素朴な焼きそばを食べていてそれがまた美味しそうなんですよ!」
古賀「なんですかね。この菜っぱがダーッと入ってるこの感じ(笑)美味しそうなんですよね」
スズキ「しかも締めにニュータンタンで食べて帰ったそうですよ!これたまんないなー!焼きそばさっき食べたのにさー!」
それにしても、みんな色々なものを食べている
スズキ「次の『武井崇』さんは、“会社を早めに切り上げ、そのまま町内会の手伝い。近所の通りにしめ縄を張る。東京なのですが、祭りはかなり大掛かりです”という一日を過ごされて、夕飯は“町内会で出たコンビニおむすび”だそうです」
古賀「ここに来てのコンビニのおにぎりも美味しそうなんですよ。会社を早めに切り上げてから町内会でしめ縄を張る、なかなかお忙しいですよ」
スズキ「疲れ果ててのコンビニおにぎり、染みるだろうなー」
古賀「次の『鳩子』さんの7月20日は“たくさん眠った。ペットのケージを洗ってきれいにした。掃除洗濯。雑誌を読んだ”」
スズキ「いい土曜日!」
古賀「食べたものは“牛肉とトマト炒め、茄子、ビール、すいか、ドーナツ、コーヒー”ってすごく細かく書いてくださって」
スズキ「確かに。すいかまで書き残しているのはすごくマメですね」
古賀「あと、牛肉とトマトを炒めるのって結構上級じゃないですか?」
スズキ「本当だ。牛肉とトマトを炒めようという発想が、自分にはない」
古賀「トマトを炒めるって卵ぐらいしか思いつかなくないですか?」
スズキ「牛肉とトマト炒めのレシピを検索してみたらすごく美味しそうです!やってみようかな」
古賀「誰かの7月20日の飯を真似するのもいいかもしれないですね」
古賀「『M島』さんの過ごし方がいいですよ。“病院に行った。その後、うちでのんびりしてから投票所に行った”そう!この翌日、参議院選挙だったんですよね。だから、期日前投票に行かれたんでしょうね」
スズキ「リアルな土曜日っていう感じがしますね。そして“ジャージャーうどんとレンチンとうもろこし”を食べている」
古賀「でもこの方、元旦の記録を見るとドイツにいらっしゃいますよ。ライプツィヒに行ってる。そこで“ドイツ風のスープと赤ワイン”を食べて」
スズキ「赤ワインとパンを食べた半年後にジャージャーうどんとレンチンとうもろこしを食べている。それがまた現実という感じで好きです」
古賀「最後の『いつき』さんもいいですよ!“髪を切ったら失敗されたので、ちょっとスネて大きな本屋で大量に本を買いました”」
スズキ「これは愛し過ぎる一日ですね」
古賀「声に出して読みたい一日じゃないですか?」
スズキ「教科書に載せたい一日」
古賀「もう、これ、自由律俳句かな?」
スズキ「ははは。本当ですね。“トマト缶とウィンナーと玉ねぎのスパゲッティ”を食べていて」
古賀「行った場所が“安いパン屋、美容室、本屋”ですって。『パリ、テキサス』みたいな(笑)」
スズキ「安いパン屋」
古賀「この方の中だけの名前。こういうの大好きなんです。こっち安いパン屋、あっち高いパン屋っていうね(笑)そういう個人的なことが知れるっていうのはすごくいいですよね」
スズキ「なかなか形に残らないものというか」
古賀「この間、小学校に行く仕事があって、その学校で授業をなさってる先生が道案内をしてくれたんですよ。そしたら『行く道が二つあります。一方はわくわくロード、もう一方はうきうきロードです』って言って『そういう呼び名がついてるんですか?』って聞いたら『私がそう呼んでるだけですよ』って(笑)」
スズキ「わくわく、うきうきの差がわからない」
古賀「もう、インナーワールドですからね」
スズキ「以上ですよ。いやー、すごい、みんなそれぞれ過ぎる!」
古賀「晩ごはんのタイミングってそれほど大きな差はないじゃないですか。こんな色々なものを、だいたいみんなせーのぐらいのタイミングで色々食べてるわけですもんね(笑)」
スズキ「ははは。同じ星の上でね」
古賀「ロマンですよね完全に。なんかもう、ちょっとさ、泣いちゃうぐらい。映像になってわーってきたらさぁー。九州に新幹線が開通した時のCMみたいな」
スズキ「はは。あの泣けるやつ!あのスタッフが仕上げれば絶対に泣けるムービーになりますよ。『この星の上で、今日も何かを、食べている』みたいな」
古賀「こういう、人がそれぞれ生きてるってことが泣けちゃう感じがありますね。それは別に特別な日でなくても、やっぱりいいんだっていうことですよね」
スズキ「うん、みんなの記録を分けてもらって、それがわかりましたね」
パッと思いつきで選んだだけの2019年7月20日が味わい深いエピソードとともにグングンと私に迫ってきた。しかも、なんだかとてもお腹がすいてきた。
「みんなそれぞれ生きている」みたいな言葉はよく目にするし、「それはそうだよな」と頭ではわかっているつもりなのだが、こうやって確かめてみて改めて「色んな人が色んな場所で色んなものを食べている」ということが実感できる。
当たり前といえば当たり前なのにどこまでも不思議だ。この何度確かめても不思議な感じをこれからも追い求めていきたいと思う。ご協力くださった「デイリーポータルZをはげます会」の会員のみなさん、本当にありがとうございました!