2026新春・置き去り 2026年1月1日

ウエストの生そば、そして競艇~2026 冬の置き去り その1 八幡宿

千葉にあったウエストは生そば推しでした!

私と一緒にこのバスを降りるのは、隣に座っていたヨシダプロ(以下、ヨシダさん)だった。もしかしたらヨシダさんとのペアになるんじゃないかなと、自由席のバスに乗り込むときから二人とも思っていたかもしれない。

時間は朝なのだが、スモークのかかった窓のバスの車内は深夜のよう。たまたま同じ街に夜行バスで上京する、それほど仲良くはなかったけど文化祭の準備で一緒に模擬店をがんばったことがあるクラスメートみたいだなと思った。(玉置標本)

デイリーポータルZを代表するライターの伝説ユニット。ベクトルは違うが料理好き、小声で冗談を言うなどの共通点があり、静かなグルーブ感を出している。



こちらは「2026年新春置き去り」の1本です
見知らぬ場所で置き去りにされて迎えに来るまでのあいだのことを記事にする企画です。今回はペアなので、前半・後半で書く人が変わります。突然別の記事のようにガラッと変わるようすも堪能してください。
 

まず前半は玉置さんからです。


ウエストで店内製麺している生そばがうまいらしい

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玉置標本
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9時12分、八幡宿の駅で降ろされた

バスの行き先は千葉方面で、道の駅で一組ずつ降ろされるということだけは事前に聞いていた。グーグルマップで現在位置を確認するのも野暮かなと、スマホはポケットに入れおく。

幕張パーキングエリアでのトイレ休憩後、高速を降りたバスは「JR八幡宿」という、読み方に自信が持てない駅のロータリーで停まった。地理に詳しい西村さんが「やわたじゅく!」と言っていたので、きっとそう読むのだろう。

降りる順番はくじ引きだ。雨模様の寒い日だったので、できれば最後までバスに乗っていたいなと甘いことを考えていたが、我々がトップバッターとなった。二人で小さな照れ笑いをしつつ静かに降りる。

こういうときのリアクションが下手だ。

我々を置き去りにしたバスを見送り、とりあえず周辺を見渡す。しっかり雨が降っているということもあり、出歩いている人の姿はほとんどない。

お迎えの時間は16時25分。10時、11時、12時と指折り数えたら7時間後だった。

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9時15分、電車に乗るという選択肢

ヨシダ:「集合時間までに戻ってくれば、電車に乗ってどこか行ってもいいんですよね」

そういえばそうか。ここは道の駅じゃなくて電車の駅。行こうと思えばどこにでも行けるのだ。

エスカレーターで改札階まで上がり、路線図を確認する。千葉駅から4駅しか離れていなかった。二人には無限の選択肢があった。 

千葉県内にあるヨシダさんの実家に行くという案もあったが、それはまた今度にしよう。

玉置:「7時間あるからどこでも行けますね。バスを先回りして驚かせるっていうのはどうですか」
ヨシダ:「さっき林さんが考察する記事がネットで受けるって言っていたから、八幡宿の都市伝説を追いましょう」
玉置:「張り切って謎を解きますか。あるいは映画を観て二人で考察するとか」
ヨシダ:「じゃあ今話題の『果てしなきスカーレット』で」 

サッカー好きのヨシダさんが、ジェフ市原がJ1に昇格したことを喜んでいた。ジェフといえば城彰二しか思いつかない。

お互いが本気では言っていない軽いジャブな提案をし合ったところで、駅の反対側、東口へと移動する。

こちら側は住宅地が続いているようで、目の前にSENDOというスーパーがあり、その隣にもSENDOというドラッグストアもあった。

「この街はセンドウ一族が支配しているのか……」とつぶやくヨシダさんの声を聞いて、SENDOは鮮度じゃなくてセンドウなのかと納得した。 

八幡宿はセンドウ一族の牛耳る街。
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9時24分、旅といえばローカルスーパー

スーパーはあと数分後の9時30分にオープンするようなので、「旅先のローカルスーパーって楽しいですよね~」と互いに言いつつ開店を待つ。ヨシダさんは今日は千葉県出身なので、旅先ではなくどちらかといえば地元だが。

開店時間になると店長らしき人が入口の前で待ち構えた。ただ雨の影響なのか、まだ入っていく客はいない。 本日最初の客になるのもなんだか恥ずかしいので、道路を挟んだ場所で二人してモジモジして、何人かが入店して店員のお迎えタイムが終わってからそっと入る。

特に期待はしていなかったのだが、魚売り場には銚子のメカジキ、九十九里のハマグリ、船形のイサキなど、県内各地の漁港から集まった新鮮な魚介が並んでいた。特に千倉のスルメイカは今年みた中で一番大きい。SENDOはやっぱり鮮度がいいねと言いたくなる。

一応保冷バッグを持って来てはいたが、迎えのバスが来るまであと7時間近くあるので我慢をした。

お菓子売り場にいたヨシダさんが「八幡宿といえばこれですよ」と、エアリアルというチェダーチーズ味のお菓子を買っていたので、真似をして私もカゴに入れた。
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9時45分、飯香岡八幡宮を参拝する

スーパー以外に行くべき場所が見当たらなかったので、やっぱり電車に乗りましょうかと駅に戻ったものの、もう少し粘りましょうと西口側へまた戻ってみる。電車は選択肢が多すぎるのだ。

いくつか飲食店や飲み屋はあるものの、この時間に営業している店が一軒もなかった。

「少し歩いてみましょうか」
「そうですね。ほら、こっちは商店街みたいですよ」
「本当だ。看板がありますね。八幡宿商店……会」
「惜しい」

晴れていたら散歩に最適の場所と思われる、飯香岡八幡宮という大きな神社でお参りをした。晴れてさえいれば、散歩に最適な場所なのだと思う。 

飯香岡八幡宮だけにローマ字でYAHATAと書いてあるなと思ったらYAMAHA。道路向こうのバイク屋の看板だった。
雨じゃなかったらねと何度も声に出た。
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10時01分、喫茶店で作戦会議

関東では一カ月ぶりに降ったまとまった雨に体が冷える。どこかで座って休みつつ作戦会議をしたいですねと駅前に戻ったら、さっき通ったときは閉まっていた喫茶店が看板を出していた。10時開店なのだろう。 

渡りに船、雨降りに喫茶店。

昔ながらという言葉がぴったりくる、味わいのある喫茶店だった。

一見さんが来るタイプの店ではないので、我々のことをブログとかやっている喫茶店マニア達だと思っただろうか。

「僕はコーヒーが飲めないんですよ」と、ちょっと恥ずかしそうにミルクティーを注文したヨシダさん。私は体が温まりそうなココアにした。

自分達だけでできることはもう十分にやったよねと、ようやくスマホで「八幡宿」と検索をしてみたところ、じゃらん観光ガイドから「市原サービスエリア」をお勧めされて無言で首を振る。こんな時に頼るものといえばウィキペディアだ。

玉置:「ウィキによると駅周辺にボートピア市原という施設があるみたいですよ」
ヨシダ:「いいですね。ボートピアなら殺人事件が起きるんじゃないですか」
玉置:「ボートピア連続殺人事件だ」
ヨシダ:「僕の考察によると犯人はヤスです」

どうやらボートピア市原というのは競艇の券を買うところのようだが、ウィキに載っている写真は市役所かコンサートホールのようだ。

二人ともギャンブルにまったく縁がないので、ここがどんな場所なのか想像がつかないが、だからこそだよなと向かうことにした。とっくにやむ予報だった雨は、まだしっかり降っていた。 

11時18分、生そばを出すウエスト

駅から離れる程に交通量が増えていく道を15分ほど歩いて、雨がようやく霧雨になった頃にボートピア市原へと到着した。ここで一勝負と行く前に、まずは腹ごしらえをする。目的地をボートピア市原にした理由は、すぐ近くに「生そばウエスト市原店」があったからでもあるのだ。

ウエストといえば私も博多で食べたことのある有名うどんチェーン。だがここの店名には生そばの文字。いったいどういうことだろう。

生そばがあるウエスト。

昼飯にはちょっと早い時間だったが、店内はほぼ埋まっていた。

最後の空きテーブルに案内をしていただいてメニューを手に取ると、「生そばと博多うどん」と大きく書かれていた。ウエストの関東進出用のフォーマットだろうか。 

明かにそばがメインだった。

二人でじっくりとメニューを確認し、ここで注文すべき料理を考察する。この日は寒いというのもあり、私が食べたいのは圧倒的に温かいうどん。ウエストといえばうどんだ。だが店のおススメは店内製麺の生そばのようで、メニューに占める面積も広く、なんと3玉まで同一料金。うどんは大盛りですら有料なのに。

これは迷う。大いに迷う。ウエストといえばうどんだが、そのウエストが店内製麺するそばも気になるに決まっている。うどんよりもそばは150円高いという値段設定も迷わせてくれる。なんと考察しがいのあるメニューだろうか。

ヨシダさんになにを食べるか聞いてみると、豚肉そばにするという。しかも3玉でも同一料金なのに1玉。これぞ大人の注文だ。

私がそばを頼むとついつい3玉にしてしまって、食べ終わってから苦しむ未来しか見えないので、豚肉特うどんの普通サイズにした。ギャンブルは満腹でするものではないという自制心が働いてくれた。 

豚肉特うどんの特はごぼう天入りという意味である。

運ばれてきたうどんはとてもおいしく、ウエストのうどんってこういう麺だったよなと大変満足したのだが、目の前でそばを食べているヨシダさんのリアクションがなんだかおかしい。

食べ物であまり表情を変えないイメージの人なのだが、明らかに顔がニヤついているのだ。 

「このそばはすごいですよ」とうまそうに食べるヨシダさん。さすがに「一口ください」とは言えなかった。

なんだかすごく悔しい。今日はずっと日常から外れた並行世界みたいな時間をずっと過ごしているのだから、ウエストでもうどんではなくそばに行くべきだったのだ。

レジ横にあったお土産用のうどんを買いつつ、店内でそばを食べてお土産をうどんにすればよかったなと反省する。なんだか運気が落ちている気がするけど、これからギャンブルタイムである。 

⏩ 後半はヨシダプロが書きます

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