増えても減ってもご飯の存在感は一定
ぎゅっと詰まっているご飯は迫力があった。おじやにすると確かにカサは増えるが、なんとなく存在が薄くなったような気もする。
もしかして、増えても減ってもご飯の存在感というものは一定なんじゃないか。
食べたカサは違うが、食べている実際の量は同じなのだ……って、1杯のご飯なんだから、そりゃそうだ。

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お米のあの増減ぶりというのは、あれは一体どうしたことだろう。
お寿司にすれば小さくなるが、おじやにすればどんどん増える。
そして、増えても減ってもおいしい。すごい。
もう一度、1杯のご飯の量に真正面から向き合ってみたい。
※2010年3月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載しました。
しつこいようだが、ご飯は増えたり減ったりがすごい。これは特殊能力だ。
パンもオニオングラタンスープやパングラタンなどで ふやかして食べるが、あれはごくまれなことだろう。机の中で給食のパンがぺっちゃんこになるのは単なる事故だ。
麺に関しては、のびたてふやけた麺が好きだという考え方もあって私も実は賛同するが、あくまれこれはイレギュラーだと思う。基本は普通にゆでて、食べる。以上。
パンにも麺にもない増減という状態変化。ここに、ご飯の底知れない力を感じるのだ。
これを目の前に、増やしたり減らしたりして食べようとは思うまい
伸びた麺というのは一般的にはNGですよね
今回は、特に「おじや」と「押し寿司」に着目して増と減を実感していきたい。
どちらもスタートは炊けたご飯。なのに、結果の形態はまったく違ったことになる。
おじやは米から作るレシピも多くみかけますが今回はご飯から作ることを前提に進めますよ。
おじやと押し寿司を同時に作るというのは、調理師さんにでもならない限り、一生やらないかもしれない。
作ってみて改めて気づいたのは製法のあからさまな違いだ。同じご飯を扱うのに、方やぐつぐつ煮、方やぎゅうぎゅう押す。
煮るなり焼くなりしてくれ! という文句があるが、ご飯は日々煮るなり押すなりされているのだ。頭が下がる(そして頭を下げたついでに、炊けたご飯を食べる)。
ごらんのとおり、今回は両者とも純粋に「ご飯」だけで作った。
おじやに卵やだし汁を使うこともなく、押し寿司も具なしで酢飯ではなくご飯。
そもそもそれって押し寿司なのかという話はおいといて(例のジェスチャー)、どちらもただただご飯の量を変えるために調理法だけをおじやと押し寿司に借りたという感覚だろうか。
これで、おんなじご飯がこれだけ増減するというのが分かりやすく目べきできると思ったのだ。
上の写真が調理後の1杯のご飯たちだ。
なんというか、言葉が出ない。
おじやについては、水吸ったなーと。押し寿司については、押されたなーと。
その思いが声にならないままただ胸にうずまく。
量の大小が分かりやすいように、お皿に出してみた。
どちらも「ご飯」から作ったものではあるが、出来上がったものがまったく違う食べ物なので、結果的に「増えた」「減った」という感動にはどうも結びつかなかった。
ただ、あの1杯のご飯がこうも形状を変えるのかという感心のようなものは、個々を見るにつけて沸いてきた。
比べるというよりも、それぞれがご飯としてすごい。
両者の形状としての変貌は分かったのだが、あまり「同じご飯なのに、こんなに違う!」という実感は得られなかったのが実際のところ。
と思って、実は腹持ち比べの実験を仕込んでおいたのだ。
両者をかたくなに「ご飯」以外何も使わずに(おじやには水を加えているが)作ったのには、公平に腹持ちを調べようという思いもあった。
同じ1杯のご飯ながらも、こうも体積の違う両者。本来だったら、同じ時間に食べたら同じ時間にお腹がすくはず。でも、量が違う。腹持ちの加減はどうだろう。
作り比べの前日、先におじやを食べてみた。
お湯で作ったおじや、病気の味だということに一口目で気づいた。そうか、おなかを壊したときに食べる味か。
今回、もしかして初めてくらいで無味おじやを健康な状態で食べたのだが、ああ、この味。お湯の味だろうか。
ご飯の甘みよりも、お湯の味を強く感じる。ミネラルウォーター使うべきだったか。
食べすすめるとやはり量が多い。案の定、なかなか食べ終わらない。
分け入っても分け入ってもお湯の味。しみじみおいしくもあるが、ちょっとつらい。食い意地の張らない人であれば、半分で十分だと思う。
私は食い意地が大変に張っているので完食した。普段わたしはご飯2杯くらい、食べようと思えばペロリなのだが、このおじやに関してはもっと! という気持ちが起こらなかった。
そうだ、水でおなかがふくれた、という感じだった。あと、ゴマがとても美味しかった。
腹持ち実験は両日、会社に出た後は外出などない事務作業をメインにした出勤日をあてた。
お腹がなるほどではないが、ふと「お腹すいたなあ」と思う瞬間は、ほぼ4時間後、10:20にきた。
これ、だいたいいつもの私の腹時計と同じくらいだ。
ちょっと早いんじゃないかと思われる方もいるかもしれないが、私は朝の10時すぎには毎日「そろそろお腹すいたな」と思っているのです。
あれもしかしていま不必要に恥ずかしい告白をしましたか。
ともあれ、いつも食べる朝食メニューがご飯1杯+お味噌汁なので、煮汁(といっても水)が味噌汁の役割をしたのだろうか。
それとも、人間の腹時計ってだいたいそんなもんなんだろうか。
押し寿司の方はどうだろう。
実は今回、一番いいたいのはここからだ。ご飯で作った押し寿司(何度も書くが、押したご飯であって寿司ではない)が、すごくすごく美味しかったのだ。
ご飯を押しただけなのに。
やってることは、「押されて冷やされたご飯をしょうゆで食べる」である。
それが、美味しいのだ。どういうことだ。
不思議と一瞬、普通に酢飯で作った押し寿司の味がする。出汁もお酢も砂糖も入ってないのに。
ご飯のぺたぺたした感じもいい。これはすばらしい。また作りたい。
ボリュームについても、圧縮したご飯は4切れにしかならず、これじゃ足りないかなと思っていたのが、そんなことない。
ぎゅっと詰まっているので、4切れで十分お腹いっぱいだ。
柿の葉寿司が4切れくらいのパックでよく新幹線の駅売店なんかで売っていて「少ないなあ」と思っていたが、あれはあれでちょうどいい量だったのか。
普通のご飯だったら2杯目を食べたいと思うところが、押し寿司もむしろこれで大満足という具合。
おじやも、押し寿司も、増減させた両者ともご飯1杯分で「お腹いっぱい」という同じ結果になったのは、発見だ。
おじやのときのように腹持ちも調べてみよう。
食後から、ぎゅっと胃にたまる感じがかなり続いた。これはかなりもつんじゃないか。
ふと「あ、お腹すいた」と思う例の瞬間が着たので時間をみると10:39。あら、おじやのときと変わらない?
と、思ったのだがその後またすぐにお腹にたまっている感覚が戻ってきた。
私の場合、お腹がすいててもすいてなくても、10:30前後に一応お知らせがくる腹時計になってるのかもしれない。
結局、この日はお昼すぎまで胃に何かある感覚は続いた。押し寿司のほうが消化に時間がかかるということだろうか。
おじやや、普通のごはんに比べて押し寿司は腹持ちした。
今回はタイトルを「1杯のご飯、食べるならおじやか押し寿司か」としたが、私の答えとしては圧倒的に押し寿司、であった。
おじやもちゃんと美味しい出汁(鍋の残り汁とかね!)で作れば俄然美味しいものができるはずであって、今回は不利な戦いをさせてしまっただけだ。悪いのはおじやじゃないの、私なの! ということだけは、ちゃんと書いておこう。
ただ、なにしろ酢飯でもない押しただけのご飯が美味しいというのは事実で、驚きだった。
さて、それで思い出したのが、いつかテレビで見た相撲部屋の食事だ。
親方が自らお弁当を作って弟子に持たせるシーンだったと思うのだが、そのお弁当というのがすごかったのだ。
あふれんばかりのご飯をお弁当箱に山のように盛って蓋を閉め、浮いた蓋を全体重をかけて押すのである。
親方はぎゅうぎゅうと蓋を押していた。あれ、今回の押し寿司に近いことになってるんじゃないか。ということは、相当おいしいんじゃないか。
ということで、いつもお弁当箱に入れる倍の量のご飯(結果1合)を弁当箱に詰めようと思うのです。
では今日のお昼は力士のお弁当を作っていこう。
力士ほどの運動量もなく体を大きくする必要のない私用に、1合のご飯を小さいお弁当箱にぎゅうぎゅう詰めるというやり方で作っていこうと思う。
テレビで見た本物の力士向けのお弁当は2合3合を詰め込んでいたのだろうと思うが、さすがにそこまで食べきる自信がない。どうかご理解ください。
なんだこれ、文鎮でも入ってんのかという重さに驚いた。見た目とのギャップが結構すごい。
ふたを開けてみると、ご飯は表面張力でグラスの上に張る水のようにやや盛り上がっていた。
そして何よりも、白い。
迫力である。一応おかずも詰めてみたが、逆におかずが白いご飯の存在を引き立てている。私はわりとよく食べるほうだが、なのに正直、これ、食べ切れるだろうかと焦った。
詰まっているのはご飯1合だ。
以前ライターの乙幡さんが「レトルトカレー1袋にご飯1合がぴったり」といっていた。確かに、カレーを食べるときはご飯1合なんてたいした量じゃない。
そもそも、ごはん1合はお茶碗にだいたい2膳分だ。普通にそれぐらい食べられる。
だけどなんだろう、この力士弁当には妙なボリュームを感じるのだ。弁当箱のサイズはいつもより小さいのに。
食べ終わったあとのタッパーの軽さに達成感があった。
押し寿司のとき同様、やはり腹持ちがすごい。今回はちょっと圧倒的だった。夕方になってもまだまだ満腹だ。
あの圧倒的な存在感で、口だけじゃなく目でも食べてたんじゃないかと思う。
ぎゅっと詰まっているご飯は迫力があった。おじやにすると確かにカサは増えるが、なんとなく存在が薄くなったような気もする。
もしかして、増えても減ってもご飯の存在感というものは一定なんじゃないか。
食べたカサは違うが、食べている実際の量は同じなのだ……って、1杯のご飯なんだから、そりゃそうだ。
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