特集 2018年10月15日

湿気たお菓子もふやけた麺も!これはこれでうまいサミット

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「これはこれでうまい」という言い方があるだろう。

定石通りの解りやすい共通言語としてのおいしさとは離れたところにある、まあちょっとアレだけどこういうのもありっちゃありだよね、というタイプの食べ方だったり食べ物である。

あるとき私の生活圏内にはこの「これはこれでうまい」を積極的に愛している人間が複数存在することに気づいた。

様々かたちの「これはこれで」に対して意見を持ち寄り横断的に知見を広めるべくサミットを開催した、これはその記録である。
1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。

前の記事:絵みたいになりやすい食べ物はラーメンとオムライス ~まるで絵のような食べ物投稿発表

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ふやけの乙幡、湿気りの安藤、冷めの古賀そして固くする石川

集まったのは私を含め4人。それぞれがある種類の「これはこれでうまい」を愛しそれを声高に叫ぶことに抵抗を持たない者々だ。

メンバー紹介をしながらその食癖についても紹介していきたい。
ふやけ担当 乙幡啓子

妄想工作作家としてその名をとどろかせるクリエイターでライター。

のびた麺やふにゃふにゃにしたせんべいのような、ものをふやかせて食べることにこだわりがある。

バームクーヘンをはがして食べるような分解食べも生来から愛し続けるなど「これはこれでうまい」の探究者である。
湿気り担当 安藤昌教

動画シリーズ「むかない安藤」で有名なとおりものをむかずに食べることで生計をたてている(会社員の仕事のひとつとして)がこれはあくまでもビジネス。

本来は湿気た食べ物が大好きなのだ。それで記事を1本書いたこともあるほどの猛者である。
固く担当 石川大樹

技術力はないが熱意だけはある人々にロボットを作らせては戦わせる競技「ヘボコン」主宰。未熟なもの、未完成なものの宿す魅力にとりつかれた人物である。

こと食において大きなこだわりはないが固いグミが好きで、あえて袋をあけて放置し固くしてから食べることで関係者内で知られている。
冷め担当 古賀及子

動画シリーズ「なんでもレンジでチンする会」で様々な食材をチンして温めたりチンしすぎてどうかするなどを行うがこれは研究として行っているのであり、実は冷めた総菜の愛好者である。

冷めたものの風情を今日は語りたい。
よろしくお願いします
よろしくお願いします
今日はこの4人がそれぞれ2品ずつ、それぞれの食癖に関するおすすめの食べ物を持って集まった。

4人は同じく「これはこれでうまい」を愛する者たちである。仲間意識を持ってお互いを認め合っていきたい。

なお悪食ともいえる食行為であり、万人に勧められるものではないことは確かである。どうかどうかどうか、その点ご了承いただきつつ寛大にごらんいただければ幸いです。

お吸い物の汁でサラダせんべいをふやかす

トップバッターはふやけの乙幡。
小袋の「お吸い物のもと」で普通にお吸い物を作って、そこにサラダせんべいを割り入れてふやかして食べる。これがね、残業のときの身体にしみるわけですよ。

お吸い物がしょっぱい上にせんべいにも塩がついてるんでちょっとしょっぱめになっちゃうんですけどね。それもそれで。
お吸い物は永谷園の「松茸の味お吸いもの」を使う
お吸い物は永谷園の「松茸の味お吸いもの」を使う
ふつうに作って…
ふつうに作って…
サラダせんべいを投入
サラダせんべいを投入
これOL飯じゃないですか。
え、OLこんなことします?
なんかサーモスの水筒にお湯入れてもってきて、作って食べてそう。
そんなOL……いたら結婚したいじゃないですか。
あっ! これはうまいですね。
柔らかくなってから食べるんですか?
上の方のパリパリのままのも食べるもよし、下の方のクッタクタになったのをたべるのもよし。自由です。
乾きものでできるの良いですね。
ものをふやかして食べる趣味は一切なかったんですけど、くにゃくにゃしてふわふわだ。こういう良さなのか。
サラダせんべいはお茶漬けに入れてもいいんですよ。ちょっと足りないときに。
ぼくよくポテチを汁物に入れますね。うまいですよ。にゅう麺とかみそ汁にも。ランナーあるあるなんですよ。補給所でみんなやってます。補給食です
ほぼこれお麩ですよね。食としてちゃんと存在するものに近い。
お麩だと思うとかなり普通だ
お麩だと思うとかなり普通だ
そうか。どこかまっとうですらありますね。「悪食」の感じがあまりしない。
まさかの「ふつうにうまい」であった
まさかの「ふつうにうまい」に見事な白目が撮れた
ふやけの1品目は思ったよりもまともであった。

ほかのメンバーに緊張が走る。なんだ今日は食ってるものがまともじゃなくてもいい日ではなかったのか。

次は湿気り担当、安藤のターン。

キャラメルコーンはバリエーションとして「1晩」、「2晩」を売るべき

僕のおすすめはキャラメルコーンなんですよ。しけったキャラメルコーンが大好きで。中途半端なやる気のない食感になるんですよ。
この状態のカバンを持って会場入りした安藤
この状態のカバンを持って会場入りした安藤
カバンに入っていたのは、封をあけた状態のキャラメルコーンだ
カバンに入っていたのは、封をあけた状態のキャラメルコーンだ。そしてまだふやけ食を食べている石川
オリジナル(湿気らせていない通常のキャラメルコーン)よりもしけったほうが好きです。中に空気が入ってるから歯でかむときゅっきゅってなるんですよ。それが良い。
きゅっきゅっ?
新雪を踏みしめるようだ。キャラメルコーンを噛んでいるとは思えない擬音ですね。
(食べて)弱いな……。
弱い……?
湿気りがたりないってことです。
しけってますよ?
写真ではわかりにくいですが、湿気てます
写真ではわかりにくいですが、湿気てます
いや、まだいけるんですよ。もうちょいきゅってなってもいい。

昨日の21時くらいに開けたんでもう16時間くらいたってるんだけど、もうちょいですね。
言ってることはなんとなくわかってきました。歯がサクッと入って行かない。破壊せずにぎゅぎゅぎゅって一緒に歯が入っていくような感覚、これがいいのかな。
ミリミリミリって網目構造がぎゅーっと凝縮する感じですよね。
そうそう、ポップコーンみたいな。
ああ! 例えにちゃんと存在する食べ物を出すのはずるいぞ……!
多分メーカーはサクサクを保つためにすごい努力してると思うんですよ。それを無にする嗜好だということは承知しています。

でもね、子どもですよ、「サクサクが好き」っていうのは。
確かにサクサクが美味い食べ物ってスナック菓子以外あんまりない気がするなあ。「よい食感」のイメージがあったけど。
さくさくが良いっていうのは刷り込まれた価値観なのかもしれないですね。
メーカーが言ってるからそう思うけど。
「わ~~っ!これギュギュってしてうま~~い!」って誰か有名な人が声高に言い始めればあるいは。
そうなったらこっちのもんですよ。キャラメルコーン「湿気り」ってのが発売される。
工場で2日間湿気らせて。
「2晩」って袋に書いてある。「1晩」と「2晩」があって、人気は「2晩」!
よし、中田英寿に言おうう。
中田英寿ってまだ東ハトの役員なんでしたっけ……?
湿気たキャラメルコーンの「サクッ」ではない「きゅっ」という食感がおいしいというのはおおむね他メンバーにとっても理解できる範疇の主張であった。

「言ってること、わかる」という状況である。マイノリティ同志の手がつながれた瞬間だ。

続いては石川。固いグミが好きで、もともと固いハリボーをもっと固くすべく封を開けた状態で乾かすことで有名である。それ、うまいのか。食べさせてもらおう。

高反発なグミの魅力とは

石川くんは準備万端だよね、1週間くらい前から自席でグミかわかしてた。
そう簡単に乾燥しないですからね、グミは。
グミを固くし慣れている者の発言である
グミを固くし慣れている者の発言である
いいんですが、ぼくのはそう共感は得られないと思うんですよね。
そう?
こちらが今回1週間乾かしたものたち
こちらが今回1週間乾かして固くしたものたち
推しはこれ、ハリボーです。
そもそもが固いグミとして有名なハリボー
そもそもが固いグミとして有名なハリボー
ハリボーはもともと固いんですけど、これは乾燥させるとやばいんです。

うまいんですけど、漫然と食べていると歯の詰め物がとれるんですよ。だから気を付けて食べたほうが良いです。
「共感が得られないと思い」と断るだけあって、話だけですでに良さの共感がとりづらい。怖い。
固っ!
かった!
固いでしょう。食い込むというか、ホールド力がすごいんですよ。
グミじゃないよねこれ。
なんでこれが好きなの?
おいしいから……。
味はだって変わらないでしょう? 食感が変わるから?
単純にかたいものをかみしめたいっていう気持ちですね。
高反発!
そう、高反発を楽しみたいんです。
変わってるな~~。
グミって感じしないな…PVC(ポリ塩化ビニル=塩ビ)か。東急ハンズの6Fに行くとこういう素材がたくさんあります。
これ、乾燥させる過程で香りぬけちゃってるよね?
多分、一番外側が乾いちゃってるからがっつりコーティングされてるんですよ。だからそとまで香ってこないんじゃないかと。

肉汁をとじこめた、みたいな状態なんですよ。
閉じ込められてるのかなこれ、抜けてるんじゃないの。
全然同意を得られませんね……でもいいです。わかってます。
本人も予想通り、かなり異端な趣味である
本人も予想通り、かなり異端な趣味である
ハリボーのほかに果汁グミも乾燥させてるの?
これは今回のために試してみました。果汁グミって柔らかすぎませんか。
果汁グミも固く
果汁グミも固く
それが良さじゃないのか。
ああ、これも周りがすごくコーティングされてる、ああ、ハリボーに近づいてきてるね
干されている。
やってることとしてはレーズンと同じです。
なるほど……。
いや、でもちょっと待って、こっち(固くしてないほう)食べてみて! 柔らかい!ジューシー!
うめえ!
いや、でも、こっちは食べ物として未完成じゃないですか。
えっ? 生ってことかな? 火を通してるイメージなのかな石川くんにとって乾かすということは
明らかに味はこっちのほうがうまいよ……?
固くするっていうのは食感だけを求めた結果ではありますね確かに。味についてはあんまり考えてませんでした。
「味についてはあんまり考えていませんでした」という石川。食べ物の価値にはまず味があり、そのあとしばらくしてから食感があると思っていたのだがそうではないのだ。

食感だけを過激にいつくしむという食行動にちょっとしたショックが広がった。

ざわついた会場はそのままに、続いて筆者である冷めの古賀のターンである。

冷めたピザこそがうまい

またせたな
またせたな
冷めたものでうまいものといえばあの有名なピザですよね。
えっ?
「冷めたピザ」、小渕恵三元首相ですよ!
それってネガティブな言い方としての「冷めたピザ」じゃなかったでしたっけ。
いや、あのとき小渕さんが「冷めたピザもうまいですよ」と切り返したんですよ。そう、冷めたピザもうまいんですよ! 小渕ファンでもなんでもないんですけども、冷めたピザのファンです。
何を言っているんだろうな。
パーティ―の翌日、余った食べ物ってうまいじゃないですか。そういううまさです。
パーティ―の残り物という幸せ
パーティ―の残り物という幸せ
なるほど、それはわかる。
で、私はレンジにかけるのが面倒だから、せっかちだから冷たいままいくという。
ほら、このかぴーっとした感じ、パーティーの翌日って感じしませんか。
パーティ―の翌日を感じさせるこの固定感
パーティ―の翌日を感じさせるこの固定感
形状記憶だ
パーティ―感あるんですよ、冷めた飯っていうのは。
祭りの後っぽさですよね。それ込みでおいしいってことか。
けだるさの味とでもいいましょうか。
あら、端っこうまそう。
こういう端っこがうまい
こういう端っこがうまい
でしょう? たしかに食べ物として劣化はしてるんだけど、それを「熟成」ととらえたい。
あえて昼飯のパンとかチンせずにご飯も冷めたまんま食べたい気分ということありますもんね。
すみません、ちょっとぼくはよくわかんないんですが、ビシソワーズみたいなものですか? 冷製?
え? いや、あくまでも「熱いはずの食べ物が冷めた」状態が好きなんです。「冷たくしてお召し上がりください」ということではなくて。
……僕これぜんぜん好きじゃないですね。

だってみんな今「レンジにかける」か「冷めたまま」かで話してますよね。でもそうじゃないですよ比べるべきは。
……! 焼き立て……!
そう、焼き立てかこれかって言ったらどっちですかみなさん!
これは違うわ、と吠えだした石川
これは違うわ、と吠えだした石川
焼き立て……!
圧倒的に焼き立て……!
そうか、比べる対象間違えてたのか。
いま焼き立てが目の前にあって、それをわざわざ翌朝まで冷やして食べるかっていう話ですよ。

乙幡さんはわざわざふやけさせてるし、安藤さんはわざわざしけらせてる。でも古賀さんはわざと冷ますわけじゃないですよね?
「逆転裁判」かよ!
焼き立てがいい……。
焼き立てのピザがいい……。
確かに言うとおりですよ! 焼き立てがあったら焼き立て食べるわな! でも、焼き立てのほかほかっていうのを至上とするこの世の中に「否」という心は持っておきたい。

ほらだってみんな、レンジを売るためにレンジ会社に「あたたかい食べ物」の良さを頭に刷り込まれているのかもしれないんですよ?
古賀さんは野菜炒めも冷たいまま食べるんですか?
そうですよ、肉まんも。肉団子も。
ちょっと一回整理しましょうよ。古賀さんはレンジが嫌なんだよね?
レンジに時間をかけるのが嫌なんです。電磁波がとかじゃなくて、単純に時間がわずらわしい。
じゃあ将来すごい技術が発達して、2秒でチンできるようになったら?
それもレンジの扉を開けたり締めたりするのが面倒かな……。
その一連の動きがいやなのか。
すぐ食べちゃうのが好きなんですよ。つまみ食いみたいに。
冷めたものが好きってよりも、温めるのが面倒だって生き方ですよね。

目から電磁波出せたらあったかいもの食べるんじゃないですか。
担当を「冷め」じゃなくて「即」にしましょう。
そうだ、地主くんがアツアツのご飯だめでさまして食べるっていってたな。
アツアツだと味が分からないっていう人はいますよね。
……じゃあ「冷め」の担当は地主くんに譲ります!
思いもよらないことであった。私がこだわっていたのは「冷めていること」ではなく「即食べること」だったのだ。言われてみれば完全にそうだ。

「冷めているもの」が本当に好きな新担当者も決定するというよどみない流れである。

ここからターンは2周目へ。各自の嗜好をより明らかにしていきたい。次のページへ続きます
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