特集 2020年10月21日

からしを使う料理の代表はシュウマイかおでんかとんかつか ~練り薬味パッケージ上の熱き戦い

料理には定番の薬味がある。

おでんにはからし、刺身には基本わさびで、かつおのたたきだとしょうがが食い込んでくる。

もちろん好みやシェフの工夫で定番をはずすこともあろう(そこで飛び出すのが有名な「まずは塩でお召し上がりください」なわけだ)が、一定して「この料理にはこの薬味」というイメージはある。

スーパーなどで売られる薬味のチューブのパッケージには、そのイメージに沿った写真があしらわれることが多い。

ということは、各メーカーのチューブ薬味のパッケージを見比べることにより、それぞれの薬味界の代表料理が分かるんじゃないか。

わさび、しょうが、からしで調べたところ、とくにからしが熱いことになっていました。

1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

わさびの代表はまぐろ刺の赤身、しょうがの代表は冷ややっこ、そしてからしの代表はシュウマイ

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チューブ薬味、こういうやつ

調査は薬味のチューブを出しているスパイスメーカー(ハウスS&Bの2強完全なるだった)のサイトと、左記2社以外のメーカーはプライベートブランドのサイトやネットショップから「しょうが チューブ」などで検索することで実施した。

パッケージに使用例として料理の写真を使っていないものもあり(トップバリュの国産シリーズ等)そういったものは除外してある。 

見比べるなかで興味深い事象の数々があったが、まずはざっくりと結果を見て行こう

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「わさび」のチューブ薬味16種類の調査結果
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わさびで圧倒的に強かった、まぐろの赤身
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「しょうが」のチューブ薬味17種類の調査結果
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しょうがは冷ややっこが大定番

 

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「からし」のチューブ薬味18種類の調査結果
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からしでは、とんかつとおでんの猛攻に僅差でシュウマイが耐えた

以上、おおむねが筆者としても予想通りだったのだが、興味深さと発見もあった。

細かい所見を以下に紹介していきたい。

わさび

ハイグレード商品ほど刺身の品数が増えるわさびの世界

調査16種類のうち13品が刺身、残りの3品がステーキという結果だったわさび。

刺身は基本的にマグロの赤身であるというのが印象的だった。

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ドーンとまぐろの赤身(エスビーの「風味推薦」シリーズのわさび)

しょうがやからしにも共通することだが、大手メーカーは薬味のチューブを価格帯で複数種類展開している。

たとえばハウスだったら、安い順に

・ポピュラー
・特選本香り
・料亭

S&Bだったら

・風味推薦
・本生
・名匠

といった具合に、100円台前半、100円台後半、200円台とグ同じわさびに3グレードの展開がある。

わさびの世界では、グレードが上がると赤身の刺身1品だったのが刺し盛になる……という傾向があった。

豊かになることで刺身の品数が増えるのだ。

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ハウスの最高級ライン「料亭」シリーズのわさびはこうだ
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一気に高まる良い店に来た感、だって料亭だものな。ウニかなこれは

これが豊かさかとうなる傾向だ。

あえての中トロで一石を投じる西友

高級薬味相手に刺盛りが現れるとはいえ、わさび界において、赤身が確実な地位を築き上げているのは間違いない。

そんななか、あえて中トロをぶちこんできた一社があった。これには震えた。

スーパーの西友が誇るプライベートブランド、「みなさまのお墨付き」がそうだ。

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はじめてこのパッケージを見つけたときは二度見した
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中トロで間違いないと思う、脂の乗りにわさびの量も多い

こちらは、エスビーのOEM(他社ブランドの製品を製造する、プライベートブランドでおなじみのパターンのやつ)商品なのだが、空気を読まずに中トロをパッケージに配す気概を見せ一石を投じている。 

「きざみ」文化で暗躍するステーキ

さて、わさびといえば刺身という明らかな傾向の一方で意外にも「ステーキ」が静かにその地位を確かなものにしているのも興味深い。

これはチューブのわさびにおける「きざみ」文化によるものだ。

(撮影用にチューブ薬味をたくさん買ってあとで使い切れなくなるのが怖かったため、以下、ときどきアフィリエイトリンクでご紹介しますね……!!)


通常おろした状態のわさびがチューブとして一般的なところ、「きざみ」は荒く刻んだもの。

わさび界においては、すりおろすと刺身、粗く刻むとステーキがその代表メニューとして現れることが分かった。

 

しょうが

冷ややっこの独走と高級ラインの在り方

続いてしょうがだ。これはもう圧倒的冷ややっこの一強といってもいい。

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全17品中、9品が冷ややっこの圧倒的強さ

見どころとしては高級ラインの動きだ。

わさびの場合、高級なシリーズは刺身の品数を増やし刺盛りになることで高級感を演出していた。

冷ややっこはどう変わるのか。

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その答えがこちら。ちなみに200円台の高級シリーズはパッケージに金の箔押しをあしらっており分かりやすい

S&Bの「名匠」シリーズは冷ややっこをおぼろ豆腐にランクアップさせた。

ハウスの「料亭」シリーズがもってきたのは湯葉だ。

なるほど、冷ややっこの格を正当にアップグレードしたなとうならされる。冷ややっこがピチューだとしたら、ピカチュウはおぼろ豆腐であり湯葉だということだ。

しょうがは大容量になると豚を焼く

そしてなんといってもしょうがに関してはハウスの「大容量」シリーズ、エスビーの「お徳用」シリーズ等、容量の多い商品を語らねばならない。

独壇場状態の冷ややっこが、この量の多いタイプの商品で一気に影をひそめた。

チューブのが大きくなるとしょうがになにが起こるのか。

豚の生姜焼きが頭角を現し始めるのだ。


なるほど、冷ややっこに乗せるしょうがは少量だが、生姜焼きとなると量がいる。大容量を購入する層にはパッケージは生姜焼きのほうがずっとピンとくるわけだ。

冷ややっこで思考を止めない

なるほどなあとすっきりした気持ちが高まるところで、現場では事件も起きている。

まただ、また西友のPB「みなさまのお墨付き」だ。

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えっ

一般的なチューブでは冷ややっこ、容量の多いタイプでは豚の生姜焼きというところに定石をもろともしない異端として持ってきたのが、なんと焼きナスであった。

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おナス!?

なにしてくれんの! という気持ちと、ちょっと冷ややっこよりもおいしそうだなという気持ちが錯綜する。

しょうがには冷ややっこという意識は思考停止なのか。みなさまのお墨付きが業界にゆさぶりをかけている。

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からし

「からし」と「和からし」が存在する

最後に混戦の熱いからしだ。からしに関しては調査着手すぐに「これは」という事態に直面した。

日頃チューブのからしを使っているみなさまは「からし」と「和からし」を使い分けているだろうか。「和からし」に対する「マスタード」のことを言っているのではない。

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これなんです

チューブのからしの世界には「からし」と「和からし」が存在したのだ。おはずかしながらまったく気づいていなかった。

ご紹介の通り、からし界における代表料理は僅差でシュウマイだったが、これを「和からし」に絞るとなんと100%のパッケージがおでんだ。

和からしの世界はおでんが統治しているのだ。

ちなみに「からし」と「和からし」を同じブランドラインでそろえているのはハウスの特選本香りとポピュラーシリーズ。そしてエスビーの本生に風味推薦シリーズがある。

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こちらはエスビーの本生シリーズ

多くのブランドが「からし」に加え「和からし」もライナップしている。

今回調べなければ私は知らずに死ぬところであった。

高級化にともないカニが来る

和からしを統治するおでんを抑えてからし界をリードするシュウマイなわけだが、ここでランクの上昇による興味深い事象が見受けられた。

わさびの世界ではブランドの価格帯が上がることによって赤身が刺し盛りになる現象が起きたが、からしの世界では高級化にともないカニが来る。

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左:トップバリュ 右:エスビー 本生

シュウマイが、カニシュウマイになるのだ。

カニは高額に宿る。

さらに言うと、高級の天井はカニではない。

しょうがで、冷ややっこの階段をのぼったところに湯葉を登場させた、ハウスの料亭シリーズだ。


からしにおいては「ごぼうと人参を何か(湯葉? 肉?)で巻いたもの」をぶつけてきた。料理名が一見してわからない。

わからない料理=高級 という意識は確かにある。

西友はどう動くか

さて、ここまでくるとと気になってくるのはそう、みなさんもう覚えてくれたでしょう、「みなさまのお墨付き」、西友の動向だ。

西友がここで出してきたのはとんかつだった。

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宙を自在に泳ぐとんかつ二切れ

とんかつはシュウマイに続く2位につけた食材だ。チョイスにはこれまでのような異端性はない。

とんかつを採用したのはみなさまのお墨付きのほか、セブンプレミアムとチヨダというメーカーの出す厨房彩香など。

シュウマイ・おでんで押す大手に対して、PBや中規模メーカーがとんかつを押すようにも見て取れる。

とんかつは強い(めちゃんこおいしいから)。大手メーカーに対し、挑戦するような姿勢にも感じられる。

なお、からし界ではシュウマイ、とんかつ、おでんに続く4番手が豚の角煮(めちゃんこおいしい)というのも見逃せない。


シュウマイがどこまで耐えきれるか、わさびとしょうがにくらべるとからしは戦国時代まっただなかといってもいい状況であり、パッケージ上が一番熱い薬味だった。


というか種類の多さ!

からしと和からしの2種が存在しているのを知らなかった時点で自分の意識の低さに気づかされたが、それにしてもチューブの薬味にこんなに種類があるとは思わなかった。

いや、メーカー各社から出ているんだろうなというのは想像していたが、ハウスとエスビーが作りすぎだ(べたぼめです)。

こんなにチューブ調味料の海が広いとは、またひとつ新たな大陸を発見した手ごたえすらある。

家庭のテーブルは日々進化しているわけで、薬味の代表メニューは、特にからしにおいては今後何かがおこりそうな予感しかない。

どのブランドも一斉にパッケージをリニューアルするようなタイミングが今後あるだろう。メーカーがまるまるブランドごと見直す可能性もある。

10年後に比較の調査が必要だ。「チューブ調味料のパッケージの写真を見比べる」と書いたメモをタイムカプセルに入れて埋めよう。

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そしてこれ、賞味期限内に使いきれる気がしない……! しばらくは会った人に配ろうと思います
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