猫が好きなマタタビ
個体差もあるが、一般的に猫はマタタビが好きだ。枝や粉末がホームセンターなどで市販されていて、与えると酔っぱらったようにへろへろになる。
近年の研究結果により、猫がマタタビに夢中になるのは蚊を忌避する成分を体に擦りつけるためだと明らかになっている。すなわち蚊が媒介する伝染病から身を守ることができるのだ。依存性や体への毒性もないそうだ。霊薬すぎるだろ。
そんなマタタビが近所に生えているってなんだかワクワクする。何気なく見たことのある植物がマタタビだったかもしれないという驚きと、市販されているものがタダで採取できるという興奮。猫はマタタビに弱いかも知れないが、ぼくはなによりタダに弱い。
祖父に案内してもらう
祖父にマタタビが自生している場所を教えてもらうことにした。80歳を超えてなお農業と神職業で多忙を極める祖父と歩くのは小学生ぶりかもしれない。
小学生のころの夏休み、川釣りをしてみたいというぼくのために、祖父は「じゃあエサ捕りにいくばい」とだかなんだか言って、田の畔に歩いて連れていってくれた。着いた先にはスズメバチの巣があった。
祖父は「幼虫がエサになるとよ」みたいなことを言いながら殺虫剤をほんの一瞬ふりかけたあと、素手で巣をほじくりだした。ぶんぶん飛び回るハチを蚊でも除けるかのようにさっと手で払って。
さされるよ。こわいよ。ぼくはドン引きした。ドン引きしたので今でも記憶に残っている。子どもに一生残る思い出を作ってあげたいなら、ドン引きさせるに限りますよ。担任の先生のドギツイ水着とか忘れないもんな。
そんな昔話はなんだか照れくさいのでいっさい口に出さずに歩くこと数分(信号変わるのはやいっすね~~みたいな話をした)、マタタビが自生しているという場所についた。
マタタビは日本各地に自生しているが、山地の沢沿いに多いらしい。まさにそんな場所に生えている。
そして、マタタビの葉は花をつける時期になると緑色から白色に変化するとのことだ。マタタビは花が目立たないので、受粉のために虫を誘引するために葉を明るく変色させるといわれている。
今は開花の時期のすこしあとだが、そのときの白さが残っているのかもしれない。猫を喜ばせたり葉っぱの色が変わったり、要素がいろいろあっておもしろいな。
場所はしっかり分かったのでまた出直すことにした。
マタタビを採りにいく
後日、時間が作れたので夕方にマタタビを採りにきた。
少しは絵になるかもなと思って仕事着のまま川に来たところ、想像以上に写真のインパクトがあってなんの話か分からなくなってしまった。
ええと、なんだっけ、そう、マタタビです。川の向こう岸に生えているマタタビを採取するのです。それではお先に失礼して川を渡らせていただきます。
運動神経は悪いのだけど危険を厭わないのは好きなので楽しかった。普段サボらせてる身体と脳をフルで使わなきゃえらいことになるぞという逼迫感がいい。こういう仕事がしたい。
して、マタタビのある場所にたどり着いた。
マタタビをもちかえる
マタタビは葉が白いことを除いて、どこにでもあるツル性の植物に見える。撮影日は8月3日、花はついていない。お盆の頃になると実ができるそうなので、これから先も緊張感を持って注視していきたい。
そのままの葉、変色した葉、変色しかけの葉などいろんな姿かたちがある。
においとかはどうだろうか。すりつぶして嗅いでみよう。
やはり葉の色以外は変哲もないような植物に思える。これが本当に猫を夢中にさせるのかね。家に猫がいるので枝を少し持ち帰って嗅がせてみよう。
自生のマタタビ、猫の反応は
持ちかえってきた枝葉を洗って猫に見せてみる。
うちで飼っている猫は土台葉っぱが好きなのだけど、それを差し引いても夢中になっている様子だ。この瞬間まで信じてなかったよ。じいちゃんごめん。
ただ、市販されているパウダーよりは反応が弱い気がする。乾燥しているほうがよかったりするのだろうか。枝よりは葉っぱのほうがお気に入りのご様子である。
猫がちゃんと喜んでくれてうれしい。たった6畳のミクロな世界の出来事ではあれど、世界の幸福の総量を増やせたみたいでいいですよねこういうの。