特集 2024年4月3日

私が選んだデイリーポータルZベスト盤:ヨシタケシンスケさん

これまで2万本以上の記事を公開してきたデイリーポータルZ。読者はどの記事が好きで、どんな読み方をしているのだろうか?

毎回、あえて著名人に好きな記事を選んでもらう不遜な企画、今回は絵本作家、イラストレーターのヨシタケシンスケさんです。

(インタビュー・構成   林雄司  /  撮影・ 安藤昌教)

インターネットにラブとコメディを振りまく、たのしいよみものサイトです。

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ヨシタケシンスケさんが最初に挙げた記事は

イラストレーターとして活動しながら2013年に『りんごかもしれない』を上梓、以来絵本作家として大活躍中だ。

 

りんごかもしれない

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たぶんデイリーポータルZを読んでいる人は知っているし好きだろう。そんなヨシタケさんが選ぶデイリーポータルZの記事とは!

林:
デイリーポータルを見ていただいているんですね。ありがとうございます。
ヨシタケ:
わりと昔からずっと見ています。
林:
気になる記事があったら教えてもらいたいのですが。
ヨシタケ:
個人的にはトルーさんのがやっぱり。
林:
おっ! へえ!
ヨシタケ:
毎回すごいなってびっくりしてますね。着眼点というか、何考えてるんだろう感がさすがだなって。
ヨシタケ:
最近のだとコーヒーの蓋。いろんなスタバとか、コーヒーのプラスチックの蓋の形の凹みのところが座り心地が良さそうっていうコメントにゾッとしましたね。さすが。見てるところが全然違うなというか。すごく共感できる記事。共感というか、あーって、そうだったそうだった感というか、いいとこ見つけてくるなって。

林:
トルーの興味と世間の興味が20回に1回ぐらい合うときがあって、そのときに記事がバズるんです。20個に1個ぐらい、世の中の人の興味とシンクロする。
ヨシタケ:
20個に1個は高確率だと思いますよ。結局その19個が大事な気がしていて。物珍しさがトルーさんの記事は安定感があるというか、見てて思いますね。
小野法師丸さんも、足を長くしてキャプテン翼になるが、あれが印象に残りましたね。どこのタイミングでいけるって思うんだろうって。
やっぱり全般通して勝算を考えずにやってみる感がいいところだと思うし、そこを無理やりうまくいってもいかなくても着地させる力量とかもみなさんすごい。そういう意味では小野さんもトルーさんに通じる見方の変さがありますね。 

林:
デイリーポータルZらしさですね。
ヨシタケ:
なんでもないところでニヤニヤし始めたりするんだろうなという感じ。いつも別の回路が回ってそうなところはすごく親近感がわく。
林:
トルーの20回に1回をもっと確率あげるにはどうしたらいいんだろうとは思ってるんです。
ヨシタケ:
それはたくさんヒットしたほうがいいんでしょうけど、僕みたいなマニアックな人もいるでしょうし。そういう人たちを救うメディアでもあるだろうから。

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いいね〜! 気が散ってるね〜!

ヨシタケ:
あと、古賀さんの炊飯器をポイーンって叩く音。みんなの音を集めるっていうのも感動したんですよ。

林:
あの記事、なんでしょうね。
ヨシタケ:
この瞬間に日本の各地で鳴ってる音が一度に聞けるって、何かが可視化されてる、聞ける状態になってるとか、価値観が可視化される記事が好きですね。
林:
日本中で普段行われているけど、まとめられてなかったものですよね。
ヨシタケ:
それって存在しているけど誰も名前を付けたことがないし、まとめたこともないけど、でもあるでしょっていう、そういうものが僕は好きで。
一個一個には全く価値がないんだけど、あるよねっていうことを発見する価値。デイリーポータルZがやっていることってそういうことなのかな。
林:
あるけど、みんな気にしてないものを見つけて見せたいねって話はライターとよくしてます。
ヨシタケ:
僕も絵本でやろうとしていることはまさに、人を嫌いなときってあるよねって。あることをないことにしない。あるものをちゃんとあるものとして一個ずつ名前を付けていくというのが面白いことなので。そういうことが記事になるとすごく感動しますね。
林:
嫌な感情とかないことにしちゃったりとか、見ないことにしちゃったりしますね。
ヨシタケ:
でも、ないことにする理由もよくわかるじゃないですか。そのほうが物事がうまくまわるし。理屈もみんなの立場もわかるけど、あるよなって。
林:
すごく感動したり、不幸な目にあってるときに、『あれ?家の鍵閉めたっけな』みたいなノイズが。
ヨシタケ:
そのノイズがすごく人間らしさじゃないですか。いいね〜! 気が散ってるね〜! って。
林:
気が散ってるね〜。
ヨシタケ:
紛れてるね〜っていう。その瞬間に世の中が愛おしくなる。

紛れてるね〜っていう。その瞬間に世の中が愛おしくなる
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いろんなものの見え方がある

ヨシタケ:
専門家に聞く、専門家と渋谷を歩くとかもすごく好きで。単純にあれはブラタモリ的な楽しさもありますし、同じものを見ててもいろんなものの見え方があるんだなっていうことが可視化されてるというか。

ヨシタケ:
じゃあ、自分はあの街をどういうものだと思っていたかなって、自分に落とし込んで見ている人もいただろうし。
なんの専門家でもない人達だって、自分自身の専門家だから、あのシリーズでなんの専門家でもない人の話も聞いてみたいですよね。
林:
自分の個人的な視点で語る。
ヨシタケ:
専門学校に通っていた街だったりとか。初見の街とかでも。それこそ『東京の生活史』とかに近いものがあるのかもしれない。人生だけはオリジナルなので。
注)東京の生活史 岸政彦さんがまとめた東京に暮らしている人のインタビュー集。
林:
ヨシタケさんも『東京の生活史』を読まれてるんですね。
ヨシタケ:
全然ちゃんとは読んでないけど。
林:
読むの大変ですもんね。
ヨシタケ:
ああいう本があるっていうことが嬉しい。こういうのを一冊にまとめようとした人がいるのが嬉しくて持っておきたいんですよ。
林:
記録として。
ヨシタケ:
どういう企画書を書いたんだこれっていう。こんなの作りたかった人がいるというのに勇気づけられるんですよ。

⏩ あと、べつやくさんの「うまいラーメンうまい」

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