特集 2026年4月30日

戦前の旅行は思ったより今と同じ! 割引チラシや駅弁の包み紙まで見られる企画展「モダーン・ジャーニー」

お得なきっぷで鉄道旅をしたり、観光バスで団体ツアーに出かけたり、山でキャンプをしたり…

そんなおなじみの旅が、戦前の大正から昭和前期の間にすでに行われていたなんて知ってましたか…⁉

北区飛鳥山博物館の企画展「モダーン・ジャーニー」では、当時の旅行広告をズラリと展示中。

駅弁のかけ紙、駅スタンプ帳も…!近代日本の旅行の世界をぞんぶんに味わうことができます。

私の心にふかくふかく刺さったこの展覧会、取材してきました…!

大阪で生まれ育ちました。工作と漢字が好きです。チェキで盆栽を撮影したり、豆腐を千切りしたりしています。

前の記事:戦前の東京修学旅行案内で巡るハード旅~勝手に修学旅行

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取材前からハイに

唐沢と担当編集の石川さんの2人で訪問です。

JR王子駅からほどちかい飛鳥山公園の中にある博物館前に集合。

石川:桜がきれいですね

唐沢:きれいですよね!ここ飛鳥山公園は徳川吉宗が桜の名所として整備したらしくて…

しょっぱなから、べらべらしゃべりまくっている自分がいました。

なんてったって、この展覧会「モダーン・ジャーニー」の取材ができることが嬉しくて…!

脳が暴れぎみの己を律しながらのレポートが始まります。

展覧会の担当学芸員の佐々木さん(以下敬称略)にお話をお聞きしました

この展示、何がテンション上がるかっていうと、

会場に、
チラシやリーフレットがズラー!

 

戦前の駅弁のかけ紙も!

レトロなデザインが目にたのしく、なにより一点一点に情報がパンパン!

佐々木:今回の展示品のほとんどは、北区に関係のある方々の寄贈資料で構成されております。

その大部分が、かつて北区内で駅員として勤務されていた方のご子息からのご寄贈となっております

唐沢:とてもキレイに保存されていますね…!日焼けやシミもありません

佐々木:団体旅行の募集業務での資料として使用されていたようです

唐沢:そうですか…!旅先で使うとぐちゃっとしちゃいますもんね~(パンフ集めが趣味なのに、移動中ぐちゃぐちゃにしがちな私のへりくだった笑み)

佐々木こういったチラシ類はすぐに捨てられてしまいますし、こんなにキレイにまとまって残っているのは珍しいんじゃないかなと思います

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鉄道で旅がスピーディーに~お伊勢参りモデルコース

明治以来、鉄道の敷設がどんどん進んで交通が発達したことで、レジャーの形も変化していきました。

たとえばこの北区飛鳥山博物館が位置する王子では、明治16年に上野発熊谷行のルートが開通。

その様子をはなやかに描いたのがこちら。
「東京従上野山下中山道往復蒸気鉄道之図」明治16(1883)年、野川常吉

王子や飛鳥山のあたりは行楽シーズンには臨時列車が出て、とてもにぎわったそうです。

佐々木:大正から昭和前期は、経済的に多少の余裕が出た中間層の人が増え、同時に印刷メディアが成長していきました。

唐沢旅に行く余裕のある人も増え、広告もたくさん作られ、「旅」が盛り上がったんですね…!

さらに、鉄道の発達で旅にかかる時間は急速に短くコンパクトに。伝統的な「お参り」の旅も変化します。

東京方面から三重県伊勢神宮への旅のリーフレット。
「伊勢参宮 近畿の旅」昭和12(1937)年、大軌参急、関西急行電鉄東京出張所

佐々木:表紙の人の服装がいいですよね

唐沢:私、大阪出身なんですけど、伊勢にはサークルの旅行で行きましたね。石川さんは伊勢神宮には行ったことないですか?

石川:ないですね~。岐阜出身なんですが

佐々木:伊勢は近代以前から人気のスポットで、江戸時代と昭和期の旅の時間の変化を比較することができます

こちら、お伊勢参りの時代別モデルコースです!

江戸時代は徒歩で片道約2~3週間、昭和前期は列車で約11時間、現代は新幹線&電車で約4時間半…

江戸から昭和の変化がめちゃくちゃ急です。魔術…?

大阪だと、伊勢・志摩方面へは近鉄電車が便利です。このリーフレットを発行した大軌(だいき)は近鉄の前身にあたります。

佐々木:このリーフレットを見ると、商売上手さも見てとれます

目立たせている地名にご注目…!
「伊勢参宮 近畿の旅」昭和12(1937)年

唐沢:上の図、「せっかく伊勢に行くなら、ここもどうですか!!」と奈良・橿原神宮・吉野をめちゃくちゃおすすめしてますね…(商魂を感じる…)

橿原神宮は、明治23(1890)年創建の神武天皇をまつる神社。吉野は、明治25(1892)年創建の後醍醐天皇をまつる吉野神宮があります。

モデルコースにも橿原神宮&吉野神宮をちゃっかり入れています。
「伊勢参宮 近畿の旅」昭和12(1937)年

唐沢:「ぜひいっぱい列車に乗ってくださいね!」という意図が見えますね…

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クーポン券でお得な旅へ

鉄道のおかげで身近になった旅に、さらにクーポン券の登場です。大正末・昭和前期には自動車も普及してきて、鉄道が少し苦戦したという事情もあるのだとか

佐々木:海外のお客さん向けに設立されたジャパン・ツーリスト・ビューローが、大正末には邦人向けに割引サービスをはじめました

唐沢:ジャパン・ツーリスト・ビューロー、JTBの前身ですね…!

佐々木:旅の目的地までの交通機関が割引で利用できるクーポン券を発行しました

ビューローがクーポン式遊覧券販売10周年を記念して出版した一冊。
『旅はクーポン』昭和10(1935)年、ジャパン・ツーリスト・ビューロー、個人蔵

表紙のカップルがパリッとしたファッションでかっこいい。

クーポン券が使える範囲はこちら…!!
「昭和10年8月におけるクーポンコース」『旅はクーポン』綴込み付録

全国を網羅しています!
 

鉄道のほか、汽船やケーブルカーのクーポンも。樺太にもお得に行けたようです。
「昭和10年8月におけるクーポンコース」『旅はクーポン』綴込み付録拡大

佐々木:当時、このクーポン券の宣伝企画で懸賞作文の募集がありました

賞をとった作文の一例がこちら。
菊田直治郎「クーポンの旅を語る」懸賞二等当選文(『旅はクーポン』より)

佐々木:この方の旅なれていない様子が伝わってきます。汽車の時間を間違えたり、自分には合わない宿に泊まっちゃったり…

唐沢:それが、クーポン券を使ったら快適な旅になったという…。会社にとってかなりありがたい「お客様の声」ですね

ビューローの窓口に行ったシーンもくわしく書かれています。

菊田直治郎「クーポンの旅を語る」懸賞二等当選文(『旅はクーポン』より)

唐沢:この人、日本橋の三越百貨店での買い物ついでに、ジャパン・ツーリスト・ビューローの案内所でクーポンを買ってますね。

石川:ほんとだ

唐沢:今でもショッピングモールには旅行会社の窓口がありますが、戦前から同じスタイルで営業していたんですね~

クーポンはほかにこんなものも。
「家族乗車券」昭和9(1934)年以降(戦前)、東京鉄道局

唐沢:これは家族向けのクーポンでしょうか。子どもの服がかわいい。

佐々木:大人1人、子ども1人から使えて、最大5人まで使えるクーポンです。

唐沢:色んな構成の家族も使えますね。そこは思ったより今風。

割引の対象になる場所は、日光や高尾山、鎌倉、長瀞など今でもメジャーなところが多い
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こぼれ話①

実は、私がこの展覧会に来るのは2回目。1回目は、3月に友達と訪れました。

「えー!知らんかった!そんでそんで⁉」の連続で、気づけば3時間経っていましたね...

展示室はそんなに大きくないのですが、展示品一点につき、話せることが多すぎるのです...!会場内には時間どろぼうだらけ。

そのうちの一つがこちら。

「東京から1~4円の旅」の図…!


唐沢:立川・大宮公園・船橋・横浜が1円の範囲内…

佐々木:貨幣価値の計算が難しいのですが、当時の1円は現在の2000~3000円くらいですかね

唐沢思ったよりお高めですね!成田に行くには6000円以上…

こうやって知ってる駅を見ていくだけで、時が過ぎていきます。正直、これだけで3時間もちます。

あと、マップ一点につき、細かい字でデータがぎっしり!

わ!見始めたら止まらない…!
「鉄道路線図 旅客事務用」昭和22(1947)年、東京鉄道局

会場では、小さい文字を拡大して見られる単眼鏡の貸出サービスがあるそうです。(正直、借りたら多分1日じゃ足りなくなりそうでこわい…。)

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