特集 2026年4月30日

戦前の旅行は思ったより今と同じ! 割引チラシや駅弁の包み紙まで見られる企画展「モダーン・ジャーニー」

季節の旅もプッシュ

春はお花見、秋は紅葉…といった季節の行楽にも、割引のちらしのおでましです。

デザインがかわいい!
「ちらし『はなごよみ』」昭和初期(戦前)、東京鉄道局

唐沢:よく見ると、江戸川、小金井、長瀞などの昨年の桜の開花情報がぐるっと載ってます。情報たっぷり。

佐々木:これはお花見のお客さん用の割引案内です。今だと、乗客が少ない時期に割引がありますが、これは乗客が多い時期にクーポンを出していますね。

ほかにもこんな春のチラシが。
「ちらし『享けよ 春光‼』」昭和初期(戦前)、東京鉄道局

佐々木:こちらは、「享(う)けよ 春光‼」というキャッチコピーがあります。

石川路線図が桜の木の枝みたいですね

唐沢:あ、ほんとだ!凝っててかわいい

夏は海や山!
「夏に鍛へよ 海辺林間行小学生徒の割引」昭和初期(戦前)、東京鉄道局
海は湘南や房総半島、山は北関東はもちろん長野まで割引対象!(あと山手線がどでかい)

佐々木「夏に鍛へよ」というキャッチコピーがありますが、海水浴やハイキングなどで体を鍛えるのは当時の国策とも相性がよかったみたいです

ん?ラジオ体操指導のイベント…?
「夏に鍛へよ!!」昭和前期(戦前)、東京日日新聞社ほか

佐々木:「井ノ頭公園」や「大宮公園」でラジオ体操の指導をしたようです。鉄道料金5割引は大きいですよね

唐沢:ここにも「夏に鍛へよ」がありますね。

 

簡易保険事業を担当していた逓信省が、「国民に健康になってもらわないと」と作ったのがラジオ体操だそう。

唐沢:ていうか、左下の写真、参加者めちゃくちゃ多いですね

佐々木:ほんとですね。奥まで人いますね

秋は紅葉狩りや栗拾い!
「秋の行楽」昭和5(1930)年9月、東京鉄道局

佐々木:このリーフレットには秋のレジャーとして「狩猟」も紹介されていました

「秋の運賃割引地一覧」には、奥多摩や筑波山、身延山などがピックアップされています。

佐々木:季節ごとのパンフレットを調べてみると、それぞれ少しずつ紹介されているスポットが違いました。適当に使いまわしているわけではないみたいです。

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冬はスキー&スケート⁉

唐沢:冬のアクティビティはどうでしょうか

え?スキー&スケート⁉「東京中心スキー・スケート地一覧」(「3日で出来るSKI術 附東京中心スキー地案内」拡大図)

唐沢スキーやスケートはバブル期に流行ったイメージがあったのですが…!

佐々木:戦前、スキーは若者の間で流行ったようです。特に経済的に余裕のある大学生などが好んだようですね

スピード感あふるるスキーイラスト。
「3日で出来るSKI術 附東京中心スキー地案内」昭和初期(戦前)、東京鉄道局

佐々木:このパンフレットがすごくて、

「3日で出来るSKI術 附東京中心スキー地案内」昭和初期(戦前)、東京鉄道局

佐々木スキーの滑り方を細かく解説してくれています

唐沢:すご!これが無料だったんですね。解説動画が身近にない時代、これはありがたかったでしょうね

佐々木当時の婦人雑誌にもスキーウェアの紹介が見られます

石川:そういえば、さっきの駅弁のかけ紙エリアにあったスキーの絵、

「冬の行楽はスキー」昭和前期(戦前)、東鉄管内立売組合連合会

石川女性がハイヒールでスキーしてますよね

唐沢:ほんとだ。おしゃれすぎて危ない…

佐々木:危ないですね…

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キャンプまで…もう「今」やん

佐々木:近世以前は、山登りは信仰に基づくことが多い行為でしたが、近代になるとヨーロッパからスポーツとしての登山やハイキングが入ってきます。

そしてキャンプも流行!
「キャムピング」昭和8(1933)年、東京鉄道局

唐沢:え!今とほとんどかわらないキャンプ、してますね…!

テントの模様がオシャレ!
「キャムピング」昭和8(1933)年、東京鉄道局
キャンプに適した山の紹介に加え、火の用心の心得も。
「キャムピング」昭和8(1933)年、東京鉄道局

「野外で三本の燐寸(マッチ)で火を作り得ぬ人は好いキャムパーになれない」という強い格言も見えます。

ほかにも、キャンプ用具の無料輸送についても書かれています。当時はグランピングなぞないので、道具の持ち運びは大変だったでしょうね…!

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駅スタンプ~日本人のコレクション魂今昔 

めくるめく旅行広告を見た最後は、

唐沢:これは…!

唐沢:駅スタンプですか…!

佐々木:駅や観光地に置かれているスタンプはかなり前からあったようで、駅スタンプだと昭和6(1931)年に福井駅のものが最初だと言われています。

最近のものだと言われても違和感のないデザイン

唐沢:日本の人は昔からスタンプ集めが好きなイメージです。私の最寄り駅でも、ポケモンスタンプラリーで子どもが並びまくってました

佐々木:昔から御朱印などもありましたからね…!『旅』という雑誌で特集が組まれて大ブームになったそうです。

戦時色がつよいデザインも

佐々木:このあたりになると昭和10年代後半(1935~1945)かなと思います

唐沢:「天業翼賛」、「挙国一心」…!観光地のスタンプにも時世が見えますね

戦時体制が強まってくると、今度は旅を楽しむことが難しくなっていきます。そうして旅の盛り上がりは一度落ち着くことに。

しかし、敗戦と復興を経た今、再び盛り上がった旅...!「旅」を手がかりに、戦前に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。

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自分なりの楽しみ方で

唐沢:観覧の方々からの反応が多い展示はどれですか?

佐々木:それがかなりばらばらで、みなさん、自分の知っている場所や行ったことのある場所に反応されていますね。「ここに行くなら、この時間じゃ足りない!」などおっしゃられたりして

唐沢:なるほど、自分なりの楽しみ方ができる展覧会ですね…!

「モダーンジャーニー 大正・昭和期の旅行広告でたどる旅の近代史」は、北区飛鳥山博物館の学芸員さんの熱意のこもった展示です。

そしてなんと入場無料…!

旅が好きな方、近代のイラストや地図が好きな方、ご当地グルメが好きな方、鉄道が好きな方、みなさんぜひ行ってください!

 


取材協力

北区飛鳥山博物館

春期企画展
モダーン・ジャーニー 大正・昭和期の旅行広告でたどる旅の近代史

【会期】2026年3月20日(金曜日)から2026年5月17日(日曜日)まで

【休館日】:5月4日をのぞく毎週月曜日および5月7日(木曜日)
【時間】午前10時 から 午後5時 まで
【会場】北区飛鳥山博物館 特別展示室・ホワイエ
【観覧料】無料

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
取材中からもう唐沢さんと佐々木さんの会話が盛り上がりまくっていたのですが、そのテンションそのままの熱のこもった原稿が届きました。
唐沢さん自身もその自覚があり、入場前の桜のエピソードで「この記事、長くなりそうだぞ…」と心の準備をさせてくれる親切設計です。こぼれ話②のエピソードに笑いました。
内容も面白いので、ぜひ最後まで読んでほしいです。個人的お気に入りは食堂車の呼出札。
はげます会会員の方は過去おそらく最長の会員特典、本編に書ききれなかった興奮の記録が見られます。(石川)

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3時間の濃密な取材、書きたかったけど書ききれなかったことはすべてここに置いていきます…

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