用意周到
羽田空港から飛行機で1時間弱、まずは石川県の小松空港に降り立った。小松空港からタクシーで小松駅に向かい、特急で芦原温泉駅を目指す。芦原温泉から東尋坊まではバスで40分。14時には東尋坊に到着する予定である。
小松空港から東尋坊までの移動中は、林さんの企画「福井ライムツアー」で韻を踏んでいた。その中で僕は、「東尋坊はイカの香り、これからの事はドントウォーリ-」とライムを残した。崖を目前にして、自らを励ましていたのだ。
それくらいナーバスな気持ちで崖に向かっている途中、林さんは小松駅前のデパートでニンジンが沢山入った「大根煮」を購入していた。レンジで熱々に温めてもらった後、保温バッグまで買う徹底ぶりだ。そこまでして僕に熱いニンジンを食べさせたいのだろうか。崖の上で。
挑む絶壁は東尋坊大池
東尋坊。日本海の荒波に削られた断崖絶壁が続く場所。絶壁の高さは約25メートル、自殺の名所としても知られている。
現地に来るまではうら淋しい景色を想像していたのだが、実際は違った。絶壁に向かうまでの道にはお土産屋さんが軒を並べ、観光客も沢山いる。僕も浮かれて思わず頭に被る傘を買ってしまった。
しかし、そんな観光気分もそこまでであった。絶壁への道を示す看板が何だか寒々しいのだ。一気に浮かれ気分がどこかへ行ってしまう。
それではここで、今回の舞台について解説しよう。
今回、僕が挑む(挑まされる)のは、東尋坊の中で最も有名な「東尋坊大池」という絶壁である。
崖っぷちに手すりはなく、足元は岩がゴツゴツしていて歩きづらい。強風が吹いたら落ちてしまいそうだ。
そんな崖っぷちに立って下を覗きながら熱いニンジンを食べるのだ。
本気でまずい感じがする。