素揚げした野菜がマックルーベの肝
イベント当日、集合時間より前に来れば料理の様子が見られるというので早めに伺うと、大量のナス、カリフラワー、ジャガイモに塩をまぶしているところだった。
これらを素揚げしたものが、斉藤さんの愛するマックルーベの味を支えるそうだ。炊き込みごはんなのに大量の野菜、まったく味の想像がつかなくて身悶えする。
そもそもマックルーベとはなにかと伺ったところ、中東(特にレバント地方)で食べられている肉の出汁を使った炊き込みごはんで、鍋ごとひっくり返して盛り付けるのが特徴の家庭料理。ハレの日や来客時にもよく作られるそうだ。稀にレストランで出されることもあるが、本当においしいものは現地の人と仲良くなって、その家に呼ばれないと食べられないのだとか。
地域や家庭によってマックルーベの作り方や食材は様々だが、野菜はナスを使うことが多く、トマトやニンジンなどを入れることもある。
今日はヨルダンやパレスチナで教わったレシピがベースだが、日本人向けに油や塩の量を少し手加減するとのこと。
素揚げされたカリフラワーを勧められたのでつまみぐいすると、これがものすごくおいしくて驚いた。
「素揚げのカリフラワーってうまいんですよ。ごはんと炊くとほとんど溶けてしまうけど、これがマックルーベの味になる。茶色くなるまでしっかり素揚げするのがポイントで、これをしないと甘さと香りが出ない。
現地で作り方を教わった時、普段料理をしない夫が『カリフラワーの色が薄い!』って、横から文句を言って夫婦喧嘩になっていました」
それくらいカリフラワーの揚げ具合が大事ということなのだろう。遠い異国の話なのに、はっきりとそのシーンが目に浮かぶ。
ご飯を炊くスープは、大量の丸鶏をマックルーベ用に配合された粉末スパイスやカルダモンなどと煮込んだもの。最近の家庭ではマギーブイヨンなどを使うことも多いそうだが、もちろん斉藤さんは妥協しない。
マックルーベを炊くとキャベツ太郎の匂いがした
下拵えが終わったら、大鍋にバターを薄く塗って、素揚げした野菜とスープに使った鶏肉をきれいに並べ、浸水させてからスパイスをまぶした米と鶏のスープを注いで炊く。
「中東は小麦のパンやパスタをたくさん食べますが、米もよく食べる炭水化物天国。マックルーベにはパラパラの長粒米もモチモチの短粒米も使います。今日はインドのビリヤニでよく使われるバスマティライスと日本米の2種類を食べ比べましょう。
スープにもスパイスは入っていますが、どうしても煮込んでいる途中に香りが揮発してしまので、炊く前に米にもまぶすと仕上がりがよりシャープになります」
鍋から立ちこめる湯気は、自分が訪れたことのない異国を感じさせてくれる素敵な香りを運んでくれるが、どこかで嗅いだことのあるような気もする。これなんだったっけな。
「いい匂いですよね。でも不思議とキャベツ太郎みたいなんですよ」
言われてみれば確かに駄菓子のキャベツ太郎の匂いだった。逆にキャベツ太郎入りの炊き込みご飯は、中東の人からするとマックルーベ風になるのかもしれない。
押し寿司スタイルのマックルーベもある
今日はなんともう一種類、斉藤さんがシリアのダマスカスで食べたという牛肉を使った高級感のあるマックルーベもご披露いただいた。
こちらは炊飯器でスープと米を炊いておき、空になった釜に素揚げの野菜と炒めた牛肉を並べて、そこに炊いたごはんをぎゅうぎゅうと詰める、まさに押し寿司スタイルだった。

