パンが飲めた
その本は「湯気を食べる」というオレンジページから出ているエッセイ集で、151ページに「パン蒸し」という章が掲載されている。
なんでも蒸籠好きの友人がやっている盛岡の宿で、くどうさんが特別に用意してもらっている朝ごはんが「パン蒸し」とのこと。
宿の人はくどうさんに「飲めるよ。パンなのに、飲めるのよ」と伝えたそうだ。詳しくは本を買って読もう。
このパン蒸しの話を読んですぐ、冷蔵庫から食パンを取り出して四つに切り、書かれていた通りココットに入れたバターと共に蒸して食べたら、本当にぬるんと飲めた。
これはやばい。うますぎて余裕で一斤飲める。この喉ごしは知らないほうが良かったかもとさえ思った。いや知れてよかったんだ。
食パンにバターという誰もが知っている組み合わせなのに、明かに知らない食べものになっている衝撃。私はこういう驚きにめっぽう弱い。初めてレタスをしゃぶしゃぶで食べたときとか。
もっといろんなパンを試したくなったが、膨大になるに決まっている摂取カロリーが怖すぎる。そこで当サイトの企画会議を調理室でやってもらう形にしていただき、みんなでパン蒸しの喜びと糖質を分かち合うことにした。
「飲めるよ、パンなのに」と訴える
会議の日は12月23日、クリスマスのイブイブだった。集まったメンバーは編集部の林さんと石川さん、ライターのべつやくさんと西村さんと文園さん。
参加者に試食内容の詳細を伝えてなかったので、最初に蒸したパンの魅力を熱く語ったのだが、全員まったくピンと来ていないようだ。
そうですよね、私も最初はそっち側でした。パンが飲めると言われてもね。
食パンは蒸すと飲めるようになる
まずはパン蒸し界隈で一番オーソドックスであると思われる(知らないけど)食パンから。
最初に自宅で食べたときはスーパーの最安プライベートブランド食パンだったが、ここでは見栄を張ってヤマザキロイヤルブレッド(8枚切り)をチョイスしてきた。バターは豪勢に佐渡乳業の佐渡バターをたっぷりと。
鍋にお湯を沸かして、持参した金属製の簡易蒸し器をセットし、8枚切りを4等分した32枚切りの食パンを並べる。その中央に小皿を置いてバターも蒸す。
「火が通るまで」という料理ではないので、適当な蒸し時間がよくわからないのだが、パンが蒸気を吸ってニョヘニョっとしたらきっと完成。
バターをたっぷり染みさせて召し上がれ。
以下、会話形式でお送りします。
べつやく(以下、べつ):まずパンの香りがすごいね。
玉置:香ばしさはないんだけど、すごくパン屋っぽい香り。
西村:じゃあ俺からいいですか。あ、うまい! 食パンの白いところは確かにつるっと飲める。それにパンの味が焼いたときよりもすごくする。
玉置:やっぱり飲めますよね。でもちょっと塩味が足りないかも。塩を用意すればよかった。ハーブソルトとか。
べつやく:うんうんうん、ちょっとびっくりする。しっとり感がすごい。私は塩なくても全然平気。なんだろう、これ。味は知っているけれど食感は知らないやつ。
文園:(舌鼓を打ちながら)あわわ、ジュワーとする! なんかとける!パンなのに口が全然パサパサにならない!
石川:今インプラントの治療中で歯の調子が良くないんですけど、これはいくらでも食べられます。ネジの歯でも噛める。
林:本当だ、めでたい味がする。お節料理にこういうの入っていないかった?(と言いながらバターを二度漬け)
べつ:あ、今バターの二度漬けした!
玉置:串カツ屋で怒られるやつだ!
西村:バターだけでこんなにうまいとは思わなかった。しいていうと名古屋の鬼まんじゅうが近いかな(これ)。
石川:フレンチトースト的なものを想像していたんですけど、数段柔らかいですね。
べつ:フレンチトーストなんか目じゃない。なんならバターなしでもうまい気がする。(といいながらバターなしで食べて悶絶)パンの味が好きならこっち!
林:今度、風邪をひいたとき食べる。
西村:まんまで全然うまい。これを飲めるって表現した人はすごいですね。
玉置:きっと流行りますよ。麻辣湯(マーラータン)の次はこれじゃないですか。
べつ:飲めるパン専門店。
林:「これ考えた人すげえ」っていう店名にしましょう。
玉置:高級食パン屋の文脈だ。
文園:耳がなければ咀嚼がまったくいらないかも。
玉置:じゃあ次は食パンの耳なしチーズ乗せとかやっちゃいます?
全員:あーーーーーーーー!
チーズを乗せてパンを蒸すと餅になるし、耳だけ食べてもうまい
玉置:これは見た目からしてやばいですよ。チーズとパンという誰でも味が想像できる組み合わせがどう化けるか。
林:もうみんな箸をもって待ち構えているよね。
文園:次は私からいいですか。うわこれ、もっとすごいことになりましたよ。もはや噛めないです。溶ける餅みたい。笑っちゃいます。
玉置:そんなバカな。うお、もう正月は餅じゃななくてこれがいいんじゃないかな。
べつ:あー、すごいねこれ。確かにこれなら老人も安全に食べられるし。
林:ほーほー、なんかうまい汁が染み出てくる。
玉置:パンとチーズなのに、ピザトーストの真逆というね。
べつやく:香ばしさがゼロ。
文園:カリカリ感なし。
西村:耳と分けることで飲める度が増しますね。でも飲んじゃうともったいない。試食じゃなくて、普通に2枚、3枚食べたい。
石川:確かに大量に食べられそうな味。
べつ:私は蒸しただけのパンが好きかも。これだとチーズに負けちゃう気がする。
玉置:パン蒸しを味わうならプレーン!
西村:耳だけ食べてもおいしいですよ。焼くとパサパサするけど、これなら全然いける。パンの味は耳のほうが濃く出ます。
べつ:小麦の匂いがしっかりするし、耳のほうが甘味がある。
玉置:魚も皮のほうがうまいっていうし。
べつ:それちょっと違うかも。原理がね。
林:確かに風味があるね。鰻の白焼きみたいな感じ。
玉置:関東風の蒸したフカフカのやつだ。
林:うまいうまい。
べつ:あ、また二度漬けした!
玉置:耳は歯ごたえがあるのにこんなにも柔らかい。ぬいぐるみをギュッとしているみたい。歯で抱きしめるパン、咀嚼で癒される。
西村:飲むなら白い部分だけど、噛むなら耳!
フニャフニャのバケットがうまい
玉置:ここから先は食べたいものを好きに蒸して食べてください。
林:今日はそういうパーティーなんですね。
玉置:クリスマスイブイブですから。
西村:やっぱりバゲットじゃないですか。普通は硬いイメージですよね。これがどこまで柔らかくなるか。
べつ:ヤマザキのバケット、安くてうまいよね。
西村:僕が新聞配達をしていた頃、朝食は毎日これとカレーヌードルでした。
石川:うわ、柔らか!むほほ~。
玉置:おー、パンの味がはっきりわかりますね。蒸した食パンを先に食べているから、柔らかさの驚きはちょっと少ないけど。
べつ:でも「まさかヤマザキのバケットが!」って言う感じはある。皮の部分がうまい。
西村:なるほど、味が濃くなりますね。好みで食パンよりもこっちのほうがいいって言う人もいる。
べつ:私はこっちも結構好き。
文園:しっかり柔らかいけど味がバケット。やっぱり白い部分は溶けますね。
玉置: はんぺんみたい。知っている味なのに知らない食感というコントラストに混乱する。
林:密度が濃いはんぺん。
西村:なんで今までやらなかったんだろう、パン蒸し。俺も蒸し器を買いますよ。
べつ:うちはあるからね、蒸し器。明日から出しっぱなしにしておこう。
文園:私も絶対に蒸し器を買います。年末年始に実家でやろう。
玉置:鍋みたいにテーブルの真ん中に蒸し器を置いてね。
文園:チーズフォンデュみたい。
べつ:クリスマスはもうそれでいい。
玉置:ブロッコリーとかも一緒に蒸しちゃって。
全員:あーーー!

