特集 2026年2月3日

中東の炊き込みごはん、マックルーベ

マックルーベ=ひっくり返す

マックルーベが炊きあがったら、大皿の上に鍋をひっくり返して、なべ底をポンポン叩いて中身を落とす。

そして斉藤さんが慎重に鍋を持ち上げる。今日一番盛り上がる瞬間だ。

お米は焦げ付くこともなく、見事に炊きあがっていた。

013.jpg
太鼓のように叩いて鍋底の素揚げ野菜を落とす。マックルーベがアラビア語で『ひっくり返す』という意味だと教えてもらい、とてもナイスな名前だなと思った。
014.jpg
マックルーベで一番盛り上がる瞬間!
015.jpg
底に敷いたナスが適度に焦げてものすごくうまそう。

『マックルーベに使える鍋には2つの条件があって、ひとつは厚手で焦げ付きにくいこと、もうひとつは持ち手の位置が鍋の縁より低いこと。

鍋をひっくり返すとき、持ち手が鍋の縁よりも高いと、皿に指がぶつかるんですよ』

こういった知らない世界のノウハウを教えてもらうことが本当に楽しい。もしマックルーベを作ってみようという人がいたら、まずは自宅の鍋の取っ手の位置を確認してみよう。

いったん広告です
016.jpg
歯ごたえと香ばしさを与える素揚げのアーモンドとイタリアンパセリをたっぷりトッピングして完成。
017.jpg
こちらはバスマティライス版。パラパラの長粒米なので崩れやすい。
018.jpg
押し寿司タイプのマックルーベにはローストされた松の実をトッピング。

別の機会に食べたマックルーベと、今回の押し寿司スタイルのマックルーベをひっくり返す様子。

こうして3種類のマックルーベが食卓に並んだ。日本でいえば、ちらし寿司のようなご馳走だろうか。めでたいことがあったとき、親戚が集まったとき、遠方から友人がやってきたとき、みんなが注目される中でこうして大鍋がひっくり返るのだろう。仕込みの一部を見せてもらったからこそわかる、大変手間暇の掛かる料理である。

いったん広告です

 

019.jpg
マックルーベの食べ比べという贅沢。キャベツ太郎の味はしなかった。
020.jpg
中東では欠かせない食材だというザクロのサラダも用意された。
021.jpg
こちらは『クナーファ屋』の山田柊さんによる、クナーファというアラブの甘いお菓子。
022.jpg
チーズが入っていてビローンと伸びるのがおもしろい。

自分が知っている料理との共通点や相違点を探しながら、もりもりと食べ進める。日本人向けに塩と油を抑えめにしていることもあり、どの料理も口に馴染むおいしさだった。特に香ばしく素揚げしたカリフラワーの溶けた部分がうまい。確かに味を支えていた。

中東で長く暮らしていた斉藤さんが習ってきた料理は、マックルーベやマスグーフだけではないようなので、ぜひ現地での思い出話がセットになったレシピ本を出してほしいと思った。

023.jpg
そして数年後、二度目にいただいたマックルーベ。スープ用に煮込んだ鶏肉に加えて、オーブンで焼いた鶏肉も一緒に炊くという、より凝ったスタイルだった。
024.jpg
こちらは中東の魚を使った炊き込みご飯の『サイヤディーヤ』は、アラビア語で『漁師の~』という意味。この料理には白身魚を使うそうで、マダラのスープで炊かれたバスマティにウマズラハギのフライが豪快に乗っていた。

エジプト人シェフが作るマックルーベ

マックルーベには地域色があるようなので、いつか別の人が作ったものも食べてみたいなと思っていたら、とある会の打ち上げで、神楽坂にある『Abu Essam』というアラブ料理店のマックルーベを食べる機会が訪れた。

こちらはエジプト人シェフのイブラヒムさんが作る予約制の特別料理で、斉藤さんのものとは材料も味付けもまったく違うものだった。

025.jpg
神楽坂にあるアラブ料理の店、Abu Essam。
026.jpg
本日の幹事であるカフェバグダットこと久保健一さんによるマックルーベの同人誌『Oh! Maqluba』の表紙を飾ったイブラヒムさん。
027.jpg
アルコール類は置いていないので、レモンミントジュースをいただいた。うまい。
028.jpg
マックルーベにはフムス(ひよこ豆のムース)、ファラフェル(中身が緑色をしたひよこ豆の団子)、ピタパンなどがついてくる。

エジプト出身のイブラヒムさんが作るマックルーベは、大皿を鍋の上に乗せて、テーブルの上にドンとひっくり返す豪快なスタイルだった。

肉は柔らかく煮込まれたラムシャンク(仔羊の骨付き脛肉)がたっぷりで、ニンジン、ジャガイモ、ナッツ類なども入っている。これはなかなかのハイカロリーだ。プロの料理人によるマックルーベなので、これはエジプトの家庭料理ではなく外食スタイルなのかもしれない。久保さんが数年前にここで食べたときはナスなどが使われていたそうなので、材料は都度違うのだろう。

いったん広告です

 

マックルーベをひっくり返す様子。豪快!

029.jpg
肉の量がすごい。スパイスは入っているが辛くはない。
030.jpg
こってりしたマックルーベにさっぱりしたヨーグルトソースをたっぷりとかけていただく。
031.jpg
お米はパラパラの長粒米。これもまたおいしいマックルーベだった。

異国の食文化を体験する行為はとても楽しい。舌の記憶にない味つけ、知らなかった食材の組み合わせ、調理方法のバックボーンを紐解く喜び。

斉藤さんがシリアやパレスチナで教わったマックルーベと、エジプト人のイブラヒムさんが作るマックルーベは、味つけも材料もまったく違うものだった。峠の釜めしとバンガロールのビリヤニくらい違うかもしれない。

でもどちらが正しいという話ではなく、それだけマックルーベの幅が広いという話、そして豊かな食文化が存在するという話。どちらも本人にとって思い入れのあるマックルーベなのである。ごちそうさまでした。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
どのマックルーベもこれでもかという美味しそうな見た目。押し寿司スタイルの制作過程、炊飯器の底に敷き詰められた牛肉だけで声が出ました。
キャベツ太郎の匂いがすること、鍋の取っ手の位置が大事なこと、こういう体験しないと分からないディテールが愛おしいんですよね(林)

<もどる ▽デイリーポータルZトップへ

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ