伏見稲荷の千本鳥居はいつ出来たのか?
まずは伏見稲荷大社だ。
外国から来る観光客にとっては、日本を代表する景観になっているであろう、伏見稲荷の千本鳥居。
では、この千本鳥居はいつ頃できたのだろうか。
これにパッと答えられる人は少ないんじゃないか。ちょっと、読者の皆さんも想像してほしい。
伏見稲荷大社は711年に創建されたといわれ、平安京以前からある、お稲荷さんの総本社である。
とはいえ、そんなに古くから千本鳥居があるとは、ほとんどの方は思わないだろう。
これらの鳥居は、主に商売繁盛を願って奉納される。
となると、武士ではなく商人たちが奉納した、ということになる。
現在の価格では一番小さい鳥居が30万円、一番大きい鳥居は200万円近くするという鳥居の奉納。商業が発達した江戸時代中期以降あたりじゃないと、それだけの余裕がある商人は少ないんじゃないだろうか……など、推測するのは楽しいが、実際はどうか。
答え合わせに、江戸時代のふたつの絵図を見てみよう。
絵の向きが左右逆なのだが、注目すべきは絵図の一番奥にある、上の社/上ノ殿(現在の奥の宮)のところだ。
1780年には鳥居らしきものはないが、幕末の1864年には鳥居の列が描かれている。また、今と同じように二手に分かれているのもわかる。一方、山の方に続く鳥居は描かれていない。
けっこう当たっていた。
鳥居の奉納は江戸時代後期に一般化し、明治以降に本格化した、というのが本当のところなのだろう。
江戸時代、日本橋の越後屋(現在の三井・三越の祖)がお稲荷さんを祀って大繁盛したことがきっかけで、商人たちの間で稲荷信仰がブームになった……なんて話もあるそうだ。
十分古いとも言えるけど、1300年の神社の歴史を考えると、最近はじまったと言うこともできる。
少なくともこのマスゲーム的過剰さは、ここ200年くらいの習慣なのだ。

