推し手は石川、聞き手はウェブマスターの林さんと、編集部の安藤さん、古賀さんです。
ライターの好奇心が行政を動かした
推しポイント
- 記事が行政を動かした
- 孤独だけど愛されるライオン
- その愛されるきっかけを作った
石川:
これは去年から続くシリーズなんですけど、今年1月に完結編が出ました。
これ、今はライオンだけぽつんと残ってるんですけど、以前は公園だった。もしかしていまも基礎が残ってるのでは?ってことで公園管理事務所が発掘調査をすることになったんです。ほりさんがこのライオンのルーツを調べたことによって、行政が動いてるんですよ。
安藤:
この記事がきっかけで行政が動いたの?
石川:
そう。何かの工事のついでってことではなさそうなんです。で、実際発掘してみて…
石川:
枠みたいなのが出てきたのあるのわかります? 砂場の跡なんですよ。ほとんど遺跡みたいなものが見つかった。
安藤:
そんな数年、数十年でこんなに遺跡になっちゃうんですね。公園って。
石川:
河川敷だから、台風で増水したりして埋まるんですって。
石川:
この写真とか、ライオンを傷つけないようにわざわざスコップで手で掘ってるんですよね。
そのあとSNSとかにも「あのライオンだ」とかって写真付きで書いてる人もいたりして、ほりさんが取り上げたことでみんなに愛されるライオンになったなっていう。そういうきっかけを作った記事で、すごくよかったなと思いました。
家族にしかできない距離感のインタビュー
推しポイント
- 家族ならではのテンションのインタビュー
- 話の粒度の違いが生々しさ
- 自分の体験につながってくるラスト
石川:
窪田さんのお父さんが中学時代に家族で夜逃げを経験していて、大変な目にあったという。そのお父さんに、窪田さんが詳しい話を聞くという記事。
石川:
借金取りがドアをドンドン叩いてくる話とか、(お父さんの)両親が宗教にハマったりとか、借金取りから電話がかかってくるからクッションでふさぐとか、けっこう壮絶なんですよ、状況が。なんですけど…
石川:
窪田さんがね。お父さんの感動に「本人にしかわからん感情やな」って返したり、大変な話に「最後まで島根のおじいちゃんの立ち回りがアレやな」とか。けっこうドライなの。
安藤:
悲壮感ないよね。
石川:
そう。普通のインタビュアーだったら「大変な思いをされたんですね」みたいな感じになると思うけど、家族だから。家族ならでは距離感、家族ならではのテンションのインタビューだなと思って。
あと細かいところだけど、「離れみたいなところに風呂場があってな。オガライトっていう燃料で湯船のお湯沸かして」っていう一節があって。この急に燃料の名前だけ具体的に出てくるところとか、話粒度が一定じゃないのがすごく人の語りとして生々しいと思ったんです。
石川:
最後にこうやって自分とおじいさんのエピソードも出てきて、これまで純粋に聞き手だった窪田さんが、最後の最後で実は地続きの登場人物だって気づいてハッとするんです。ここもすごいと思いました。
安藤:
いい写真だなあ、これ。
積年の夢がうみだす興奮と緊張
推しポイント
- 人生の重要シーンを切り取った記事
- 登場する剥製が単純にすごい
- 知らないイベントなのに舞台裏まで知れる
石川:
剥製(はくせい)づくりを趣味にしているこーだいさんが、オーストリアのコンテストに出展する記事。
安藤:
こーだいさん、仕事じゃなくて趣味なの?剥製づくり?
石川:
趣味です。
安藤:
趣味で剥製作ることあるんだ!ちょっとびっくりした。
石川:
そこがまさに僕の推しポイントでもあるんです。
こーだいさんって剥製を作る仕事がしたくて、ドイツの職業訓練校に留学が決まってたんですよ。でもコロナで中心になってしまって、行けなかったんですね、結局。(詳しい話)
この記事でようやく本場の剥製イベントで自分の作品を展示できたという、背景まで含めたいい話なんです。
石川:
文章全体に、すごくテンション高いわけではなくて押さえたトーンではあるんですけど、その中から興奮と緊張がすごく伝わってくる。そういう、ちょっとたまらない記事です。
あとは単純に…
石川:
出てくる剥製のクオリティがすごい。この生き生きとした感じ!
あと
石川:
そもそも剥製を、(検疫的な意味で)飛行機に載せて持ち込めるのか、みたいな出展の裏話も面白くて。
石川:
見どころのたくさんある記事でした。
AIを現実までつなげて楽しい体験を作る
- AIブームでAI系の記事が乱立していた時期
- AIの出力をフィジカルにつなげて楽しい体験を作るセンスの良さ
- 凡百のAI記事との違いを見せつけてくれた
石川:
近況をテキストで入力すると、AIが賞の名前をつけて表彰してくれるっていう、デバイスを爲房さんが作ったという記事。
石川:
例として、古賀さんが水の備蓄を買った話を入れたら、「忘れない備蓄、ありがとね賞」が贈呈されてました。
古賀:
あ、今と同じ服だ!
安藤:
ちょっと恥ずかしい(笑)
古賀:
ごめん、反射的に本当にどうでもいいことを言ってしまった
石川:
あはは。で記事に戻ると、AIのすごく幸せな使い方が書いてあるなって思うんです。
石川:
賞の名前が全部かわいいんですよね。
安藤:
この賞状、うちにまだ飾ってあるよ。
石川:
今年、特に前半くらいってAIブームでAI系の記事が乱立してて、デイリーでもほかのメディアでも、ネットにAI系の記事が乱立してる記事だったじゃないですか。
その中にはわりと「AI使ってみました」みたいな安易なのも多かったと思うんですけど、これはその使い方が頭一つ抜けてたというか、AIの出力を現実までつなげて楽しい体験を作るっていうところのセンスがめちゃくちゃよかったなと思ったんです。
林:
この写真の橋田さん、 AIにものすごい喜ばされてるね。
安藤:
メガネ曇っちゃってる。
林:
「AIに操られてる人」だね。
石川:
ははは
これが2023年現在のデイリーポータルZ
推しポイント
- 2023年のデイリーポータルZを煮詰めたもの
- 二人のパーソナリティーが完全に出きってる
- 写真で何度も噴いてしまった
石川:
江ノ島さんがトルーと一緒に、木更津にある「トルー」っていう店に行って、トルーにインタビューする記事。
安藤:
これ、はげます会会員限定記事じゃなかったっけ?
石川:
そうです。みんな読める記事から選ぼうと思ったんだけど、あまりにも良くて。途中までなら非会員でも読めるから読んでみてほしい。
まず、この2人の組み合わせが、2023年の…というか近年のデイリーポータルZをすごく象徴してるなと思って。
林:
うん、そうだよね。スターウォーズみたい。
安藤:
C-3POとR2-D2(笑)
石川:
行く道中がメインかと思ったら、店に着いてからけっこう長めのインタビューパートがあるんですよね。ご飯食べながら、記事づくりについてとか意外に真面目な話をしてて。
なんですけど、おかしいのが、後半から急に何の必然性もなく「恋バナを聞こう」って言いだして、恋愛の話になるんです。
石川:
江ノ島さんはインタビュアーの仕事をなんだと思ってるんだ、と思って(笑)
ただエピソードはすごく良いんですね。江ノ島さんが女の子から好意があるようなことを言われたんだけど、まさか自分なんかにと思って聞こえないふりをしちゃった話、とか。
林:
こういう話、年取るとしないよね。だいたい親の介護の話じゃん。
古賀:
健康とね。恋バナはしない。
石川:
あと個人的にすごい笑ったところが2カ所あって、これ流れもあるから絶対記事の方で見てほしいんですけど
石川:
「遠くのトルー」「少し遠いトルー」っていう2枚組の写真、あと恋バナで当時を思い出して動きが速くなる江ノ島、この2カ所でめちゃくちゃ笑いました。
安藤:
キョロキョロしてるんだ。コーヒーだけビシッと止まってるね。
林:
ほかのメディアだったら絶対使わない写真だよね。
古賀:
デイリーだからこその宝だよ。
石川:
この写真は昨日読み返しててめちゃくちゃ笑いました
林:
江ノ島、うまいところと下手なところが極端で面白いんだよね。