勝手に修学旅行 2026年4月22日

30年前に弁当の汁漏れで台無しになった鎌倉修学旅行をやり直したい~勝手に修学旅行

中学2年生の時に行ったはずの鎌倉修学旅行の記憶がない。弁当の汁漏れという最悪の出来事が、鎌倉の記憶を上書きしてしまったのだ。

あれから30年以上経った。大人の知識と行動力であの忌まわしい記憶を払拭すべく、私は鎌倉に向かった。

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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こちらは「勝手に修学旅行」の1本です
大人だけど修学旅行ということで旅に出る。うその設定から始まる旅、2026年のエイプリルフール企画です。修学旅行という設定はうそですが、旅の感想は本物です。エイプリルフール企画として4月は毎週水曜日に掲載します。
企画説明
いろは坂・華厳の滝へ行く(べつやくれい)(2026.4.1)
豊橋総合動植物公園のんほいパーク(鈴木さくら)(2026.4.1)
日光おもろ旅(林雄司)(2026.4.1)
雨の浅草・北斎美術館・スカイツリーを巡る~勝手に修学旅行(2026.4.8)(んちゅたぐい)
一歩踏み間違えると死ぬ絶景がある沖永良部島〜勝手に修学旅行(2026.4.9)(西村まさゆき)
AI教師に導かれて、奈良・明日香村で巨石を愛でる~勝手に修学旅行(2026.4.9)(こーだい)
鎌倉で私立気分を味わう〜勝手に修学旅行(2026.4.15) (とりもちうずら)
「写ルンです」で思い出が遅延してやってくる高尾山の旅~勝手に修学旅行(2026.4.15)(與座ひかる)
僕たちは浅草を知らない〜勝手に修学旅行(2026.4.15) (トルーと北向ハナウタ)
30年前に弁当の汁漏れで台無しになった鎌倉修学旅行をやり直したい~勝手に修学旅行(2026.4.22)(石井公二)
原宿で白昼夢~勝手に修学旅行~(2026.4.22)(つりばんど岡村)
戦前の東京修学旅行案内で巡るハード旅~勝手に修学旅行(2026.4.22)(唐沢むぎこ)
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頼むよ母ちゃん

中学2年生の時の鎌倉修学旅行。事前に生徒側からの要望で革命が起きた。制服や学校指定ジャージではなく、私服が認められたのである。一部の生徒は喜んだが、私は正直「オシャレ・ダサい」の線引きが生まれない制服の方が良かった。

慌てて母親にせがんで小遣いを貰い、隣町のジーンズメイトに駆け込む。しかし何がオシャレなのかも分からず、可愛らしい哺乳類(リス?)の描かれたTシャツを買ってしまった。

(可愛い。でも、これはきっとオシャレじゃない…)。焦った私は6歳上の兄の部屋にそっと忍び込み、珍しいワンショルダーの茶色いリュックを見つけた。

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これならきっと周りと差をつけられる。私は兄に無断でリュックを持ち出した

そして修学旅行当日。電車が鎌倉に到着した途端、早くも悲劇に見舞われる。大はしゃぎで下車しようとした私に、クラスの女子が言った。「ねえ。リュックがびしょびしょになってるよ」。なんと弁当箱から汁がこぼれ出し、リュックが黒く変色していたのだ。

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巾着型のリュックが出汁のよく浸みた餅巾着みたいになっていた。思春期真っ盛りとしては女子に指摘されたのもキツかった

その後、大仏をはじめとした鎌倉の有名スポットを周ったはずなのに、一切の記憶がないのだ。唯一覚えているのは、銭洗弁天のトイレでリュックを洗ったこと。皆が銭を洗う中、私はリュックを洗っていた。

しかも帰宅後には兄に死ぬほど叱られて、心の傷口にたっぷりの塩が塗り込まれたのである。

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汁漏れ、ダメ、ゼッタイ!

私も45歳になった。今なら絶対に汁漏れせずに鎌倉を楽しむことができるはず。今度こそちゃんと銭を洗い、大仏をこの目に焼き付けてみせる。もう一度修学旅行をやり直すのだ。

トラウマを乗り越えるためには、ちゃんとお弁当を作って持っていこう。まずはネットで見つけた汁漏れがしにくいという弁当箱を購入した。

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フードマンの弁当箱400ml。立てても汁漏れしないらしい
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きゅうりと柴漬けのサラダ、豚肉炒めは汁漏れの危険性あり。年取ったのでご飯はなし
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蓋をしてビニール袋、さらにジップロックに入れ…
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その上でお弁当袋へ。国家機密かというほどの厳重なセキュリティ
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ただ無意識でしおりの表紙は汁漏れしてる風のデザインにしてしまった
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人類が初めて目にする旅の目的

さらに自分を追い込むため、あえて買ったばかりの新しいリュックをおろすことにした。

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ちょうどMAMMUTのリュックを買ったばかりだった。今なら私を怒鳴りつけた兄の気持ちが分かる
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ベタだけど書きます。「いざ、鎌倉へ」

良く晴れた4月の朝。私は妻と共に上野駅から鎌倉に向けて出発した。

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今回の旅程。葛原岡・大仏ハイキングコースで「北鎌倉→長谷→鎌倉」と周るので、まずは北鎌倉駅を目指す。妻に「ざっくり過ぎて役に立たない行程表だね」と言われた
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途中、戸塚駅にヤギがいた
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午前11時30分、北鎌倉到着。汁漏れなし!ひとまず無事に旅を始められる

それにしても「大人になったな」と実感するのは、行きたい場所が自分の中から幾つも出てくること。あの頃は若干の面倒臭さを引きずりながら、ただバスで連れまわされるだけだったのに。

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最初の目的地は東慶寺。江戸時代の駆け込み寺、縁切り寺として知られるが、何より私の人生を変えた赤瀬川原平さんのお墓があるのだ
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亡くなってから十数年。ようやくお墓に手を合わせられた

墓参りを終えたら、葛原岡・大仏ハイキングコースを歩き江ノ電長谷駅を目指す。

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歩いている時も常に汁漏れを気にする私
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おい、ちょっと待て

この日は本当に天候に恵まれ、絶好のハイキング日和。木陰を涼しい風が通り抜け、木漏れ日を浴びる苔や花々も目に美しい。今のところ肉汁臭も全然しない。

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この日の鎌倉はどこもシャガが咲き乱れていた

妻も「本当に来て良かったね」と嬉しそうだ。なんだ、鎌倉最高じゃん。はやくもトラウマ克服か?だがしばらくハイキングコースを歩いているうちに、ちょっと様子がおかしくなってきた。

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「結構な山道に入るんだね」
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「段差あるから気を付けて!」
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「…これ、こっちであってるよね?」

おい、これ結構な山道だな!もう少し整備された遊歩道を行くイメージだったのだが、かなりのハードモード。数日前の雨の影響でぬかるみも多く、ズボンもスニーカーも泥まみれ。でもすれ違う人たちはちゃんとトレッキングブーツなどを履いているし、きちんと調べておけば簡単に分かる情報だったようだ。

ついさっき「大人になった」なんて書いたけど、やっぱり全然成長してない。高校生の時に半袖短パン、ビーチサンダルで第1回フジロックに参加して死にかけたことを思い出す。

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