特集 2025年8月9日

ロイヤルホストとセブン‐イレブンとデリーのカシミールカレーを食べ比べる

これがカシミールカレーです。

たまたまロイヤルホストでカシミールビーフカレーという料理を食べたら、しっかり辛くて驚くほどおいしかった。ファミレスのカレーでこんなに尖っているものがあるなんて。

ところでカシミールカレーってなんだろう。その名の通りカシミール地方のカレーだろうか。ちょっと気になったので、セブン‐イレブンのカシミールカレー、それを監修しているデリーのカシミールカレーと食べ歩いてみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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打ち合わせで入ったロイヤルホストでカレーを注文したら驚いた

ある平日のお昼時、とある編集者の方との打ち合わせでロイヤルホストに入った。

「なんでも食べてください」と言われたのだが、先方は朝食が遅めだったからと、アップルマンゴーのブリュレパフェとコーヒーにするそうだ。

この流れで300g厚切りアンガスサーロインステーキのセットを頼める関係性はまだないが、お腹はかなり空いている。そこでカレーならすぐ食べ終わるだろうと、たまたま目に入ったカシミールビーフカレーとやらを注文したのだが、これがうまくて驚いた。

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特に記事を書くとか考えていなかったので、写真はこれしかない。

まるで老舗のビーフシチューのような見た目ながら、予想よりもしっかり辛く、濃厚だけどシャバシャバなルーに目を見開く。油断していて、ちょっとむせた。

これを食べていたら会話が上の空になりそうだったので、打ち合わせは一旦止めてもらい、カレーに注力させていただく。

個性的なルーのうまさはもちろんだが、柔らかく煮込まれた角切り牛バラ肉、歯応えが絶妙なニンジンにジャガイモ、トロットロのナス、青臭さがアクセントになるピーマンという具の共演がまた素晴らしい。

ロイヤルホストってすごいなと今更ながら感心しつつ、大汗をかきつつ夢中で食べ終えた。欠点はライスが全然足りないことだろうか。おかわりをするのはわんぱくすぎて恥ずかしいから我慢した。

ところでカシミールカレーってなんだろう。

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食べかけのコーヒーゼリーの写真が残っていた。
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セブン‐イレブンにカシミールカレーが売られていた

しばらく脳内であの味を反芻する日々を送っていたのだが、ある日セブン‐イレブンに寄ったところ、お弁当コーナーに『銀座デリー監修 カシミールカレー』が売られていて驚いた。どうやら季節限定商品のようだ。

デリーという名前なら何度か聞いたことがある。そういえば前にセブンで買って一度食べたことがあるような気もするなと自分のTwitter(X)を確認したら、それはチキンコルマカレーというメニューだった。

カルマカレーってなんだよと三年前の自分に一応つっこんでおく。コルマカレーだ。コルマカレーがなんなのかはわからないけど。

今はカシミールカレーが食べたくて仕方がない口なので(近所にロイヤルホストは無い)、セブン‐イレブンの味を確認すべく、前のめりに掴んでレジへと向かった。

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焦って写真を撮る前にビニールを破いてしまった。「激辛注意!辛い食べ物が得意な方のみご購入ください」と書かれていて怖い。
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ライスとルーだけというシンプルな構成。

電子レンジで温めたカシミールカレーは、ルーがロイヤルホスト以上にシャバシャバだった。具がチキンとジャガイモだけというシンプルな構成だからこそ際立つシャバシャバ感。

具が牛肉ではなく鶏肉なのは、監修している銀座デリーがそうだからなのか、あるいはコンビニ版だからなのか。

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まるでスープカレーのようだ。開封時にこぼさないよう注意しよう。
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インディカ米(長粒米)ではなくジャポニカ米(短粒米)。パリッと固めに炊かれている。
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シャバシャバシャバシャバ~(11PMのテーマ曲を口ずさみながら)。

シャバシャバのルーを固めに炊かれたライスにかけると、溶岩石に降る雨のようにサーっと染み込んでいった。

コンビニ飯とはいえかなりの辛さだろうなと覚悟しつつスプーンで口に運ぶと、ファーストタッチの「甘い?」から、0.5秒遅れて訪れる「辛い!」のワンツーパンチ。電光石火の味変である。

ルーのベースに優しい甘さがありつつも、舌を刺激する攻撃的な辛さの二段構成。日本料理の文脈にはない甘辛さが興味深いのだが、ルーに含まれている旨み成分には馴染みがあるように思える。なんとなく醤油とウスターソースを感じるが、まさかねえと思いつつワシワシ食べ進める。

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シンプルな構成なのでルーの味に集中できる。
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具は大振りの鶏肉とジャガイモが二個ずつ。

コンビニのカレーに具を期待するのは野暮なことだと思っていたが、食べ応えのある鶏モモ肉、煮崩れていないエッヂの立ったジャガイモに驚く。レトルトでは難しいであろうボリューム感が素直にうれしい。

あー、辛い。甘辛い。だがそこがいい。サラサラした汗と鼻水がとめどなく溢れてくる。それにしてもこの馴染みのある旨味の正体はなんだろう。

コンビニの商品は原材料が書かれていることを思い出して、貼られていたシールの文字を確認すると、うるち米、鶏肉、じゃがいもの次に、なんと醤油が書かれていた。米と具以外で一番多い材料が醤油!

その先に続くのは多種多様なスパイスや野菜ペースト。ラードや牛乳なども入っていて、自分では絶対作れないタイプのカレーであることがよくわかる。

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レシピの開発担当者にそれぞれの役割を解説してほしい。

ルーを多めに使いつつライスを食べたつもりだったが、それでもそこそこのルーが残ってしまった。

これが外出先だったら、余ったルーを持ち帰るか一瞬迷ったかもしれない。そして鞄の中でこぼす。自宅でよかった。

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ルーがしっかり辛いのでライスが足りなくなった。余ルー。
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カシミールカレーはマドラスカレーだった

ロイヤルホストでカシミールカレーを知り、セブン‐イレブンでデリーの存在を覚えた私は、さらに深く学ぶべくデリーのサイトにあった「カシミールカレーができるまで」を読んでみたところ、衝撃的な事実がいくつも書かれていた。以下要約。

・辛いカレーの要望が増えたので、これまでのチキンカレー(商品名はインドカレー)を辛くしたメニューである。
・辛さを視覚でも訴えるためにカラメルを加えて黒くしている。
・創業者にとって辛いカレーのイメージである「マドラスカレー」とするはずが、うっかり「カシミールカレー」と書いてしまい、そのまま提供した。
・シャバシャバであるほど粋なので、工夫と努力でよりシャバシャバにしてきた
・日本の米の甘味と絡み合うことで激辛カレーは完成した。

ちょっと創業者さん、南インドのマドラス(タミル・ナード州の州都で現チェンナイ)とインド北部のカシミールって2000キロくらい離れていませんか。

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これはタミルナード州のマドゥライで食べたシャバシャバのチキンカレー(チェティナードチキングレイヴィー)。すごくうまかった。
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同じくノンベジミールスのマトン、フィッシュ、チキンの超シャバシャバなグレイヴィー。すごくうまかった。詳しくは同人誌「南インドを食べ歩く」をお読みください。

ついでに「デリーの歩み」というページも読んだところ、こちらも興味深さが底なしだ。創業者は醤油を扱う食品会社に生まれたとか、佃煮を作っていた料理人とカレーを開発したとか、セブン‐イレブンのカシミールカレーには「銀座デリー監修」って書いてあったけどデリーの創業は上野だとか(デリー銀座店もある)。

可能なら関係者に一万文字くらいのインタビューをしたいところである。

⏩ 次ページに続きます

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