特集 2025年8月9日

ロイヤルホストとセブン‐イレブンとデリーのカシミールカレーを食べ比べる

デリーのカシミールカレーを食べてみよう

こんなものを読んだら本家で食べない訳にはいかないだろうと、まんまと乗せられてデリーを目指す。

上野店と銀座店でかなり迷ったが、その歴史を感じようと創業の地である前者を訪れた。

015.jpg
上野駅や御徒町駅からも歩ける距離だが、最寄りは湯島駅。
016.jpg
雑多な飲み屋街を横断する大通り沿いに1956年から存在するデリー上野店。

デリー上野店はカウンターとテーブルを合わせても15席のコンパクトな店で、いわゆる街のカレースタンドという佇まい。最近になって知った料理と店なのに、「このデリー上野店からカシミールカレーの歴史は始まったのか……」と感慨深い。私は情報を率先して食べるタイプなのである。

看板には「インド料理」ではなく、「インドパキスタン料理」と大きく書かれていた。インド・ネパール料理の店は日本各地によくあるけれど、インド・パキスタン料理は珍しいかも。

017.jpg
こういう文章が大好物です。
018.jpg
カレーの種類がたくさんあって悩む。パキスタン風のコルマカレーとかヨーロッパ風のコンチネンタルカレーとかも食べたいよね。
いったん広告です

ちょうどお昼時に訪れたこともあって、店内は満席だった。入り口前でメニューを眺めつつしばらく待ち、縦長の店の一番奥のテーブルに案内していただき、うっかり間違えてデリーカレーと言いそうになりつつカシミールカレーを注文する。

今日は打ち合わせではないから、普通サイズだと足りなくなるであろうライスを中盛り(普通より多い量)にした。

019.jpg
これぞカレースタンドという規模の店。おそらくカレースタンドというフォーマットもここが発祥なのだろう。

改めてメニューをじっくりと眺めて、デリーカレーもインドカレーもカシミールカレーも、インドスタイルのチキンカレーであることを理解した。インドは宗教的に牛肉を食べられない人が多いので、デリーのカレーも基本はやはり鶏肉なのだろう。羊肉(マトン)だと日本人には馴染みがなかっただろうし。

デリーのサイトで学習した通り、カレーについている地名はこの店でだけ通じる辛さの記号であり、特に深い意味はないのだ。インドカレーをより辛く、より黒くしたものが、たまたまカシミールカレーという名称なのである(もちろん単純に唐辛子とカラメルの量を増やすのではないと思われる)。

020.jpg
写真を見る限り、デリーもインドもカシミールも入っている具は同じなのかな。

注文してすぐにやってきたカシミールカレーを見て、ライスの多さに笑ってしまった。超大盛だ。

どうやらファミレスのロイヤルホストとカレースタンドのデリーでは標準のライスの量がかなり違うようで、ここでは普通サイズのライスでよかったみたいだ。

でもきっと大丈夫。見るからに濃厚なカシミールカレーなのだから、ライスが多い分にはちっとも困らないだろう。

021.jpg
中盛りのライスはセブン‐イレブンの三倍くらいある。

シルバーのボート型の器に注がれているシャバシャバに磨きをかけたルーは、これぞカシミールカレーという黒寄りの茶褐色。

もし私がこの辺に勤める会社員だったならば、新人が入る度にデリーへと連れてきて、「このカラメルの黒さが辛さを連想させるんだよ」と蘊蓄を垂れていたかもしれない。ぜんぜん粋じゃない。

カシミールカレーも早三回目なので、この辛さにもだいぶ慣れてきた。ファーストインパクトで感じる甘さは、セブン‐イレブンにくらべるとやや控えめだろうか。スッと辛さが飛び込んでくるイメージで、江戸前の老舗蕎麦屋の真っ黒いつゆの如し。

IMG_8160.00_02_59_105.jpg
もう辛さに慣れたはずなのだが、写真を見返したらちょっと泣いていた。
022.jpg
シャバシャバの粋なルーをレードルでかける作業が楽しい。それにしても富山ブラック(富山のご当地ラーメン)を思い出させる黒さと濃さだ。

具はセブン‐イレブンのやつよりも二回り大きい鶏もも肉とジャガイモがドーン。やはりオリジナルは迫力が違う。さすがに値段が倍近いので当然といえば当然なのだが。

そしてライスは程よく硬めで、これがシャバシャバのルーを見事に受け止める。あのセブンの炊き具合がしっかり範を取ったものであることに感動を覚えた。

023.jpg
ごろんごろん。

食べ応えのある大きな鶏もも肉はもちろんだが、しっかり火が通っているけれど煮崩れていないジャガイモがうまい。

煮崩れはルーのシャバシャバを邪魔する要因にもなるので、そこは最大限の注意を払っているのだろう。

いったん広告です
IMG_8160.00_01_04_25.jpg
具が大きい。久しぶりに幼き日の安達祐実が思い出された(咖喱工房のCM)。
024.jpg
噛みしめる喜びのある鶏もも肉は、ルーとのコントラストなのか豊かな甘味を感じる。
025.jpg
カレーリーフではなくローリエが入っていた。このタイプのカレーならこっちが正解なのだろう

そして地味に驚いたのが、卓上に置かれた付け合わせのキュウリとタマネギ。一応食べておくかというくらいのテンションでとったのだが、どちらも滅法うまいのだ。

セブン‐イレブンやロイヤルホストとの最大の差は、このキュウリとタマネギの有無かもしれないと思う程気に入った。

026.jpg
これは食べないと大損ですよ。
027.jpg
乱切りにされたキュウリと、ちょっと不安になるほど真っ赤なタマネギ。

ガーリックが香るシャキッとした生タマネギは、その見た目ほど辛くはなく、カシミールカレーを食べているからか甘さを強く感じた。

大振りに切られたシャキシャキのキュウリもまた素晴らしい。よくある漬物とはちょっと違って、ピクルスと呼ぶべき酸味とスパイスの風味がある。

両者の鮮やかな色と歯ごたえは最高のアクセントで、この一皿に足りない要素を見事に補完してくれている。これらの付け合わせは、例の佃煮を作っていた職人が考えたものなのだろうか。

028.jpg
おかわりをしたときにクローブを発見。きっと複数のスパイスが使われているのだろう。

中盛りのライスを少し持て余したけれど、超好みの付け合わせのおかげで食べ飽きることなく完食。

元祖であるデリーのカシミールカレーは当然おいしかったけれど、ロイヤルホストみたいにビーフを使った贅沢な味も食べてみたかった。あれはロイホのオリジナルなのだろうか。

デリーはファミレスではなくインド料理を謳う店。安易に牛肉を使えないのだろう……と思ったら、曜日替わりのカレーというものが存在して、その月曜日が『牛バラ肉のカシミールカレー』であることに気がついた。ロイヤルホストの原型はこっちか!(どっちが先にビーフのカシミールを出したのかはわからないけど)

029.jpg
魅力的なメニューが並ぶ曜日替わりのカレー。

牛バラ肉のカシミールカレーを食べにやってきた

三日後の月曜日、迷うことなくまたデリー上野店へとやってきた。連日異常とも言える暑さでまったく外出したくなかったが、この気温もカレーをおいしく食べるためと思えば我慢もできる。

注文するのは当然ながら牛バラ肉のカシミールカレー。ライスのサイズは普通で十分。

030.jpg
またカシミールカレーを食べにやってきた。
031.jpg
壁の写真がかっこいい。キングフィッシュという魚だろうか。

チキンもビーフもベースのルーはおそらく同じなのだろうが、やっぱりコクが圧倒的に違う。鶏肉のカシミールカレーが日常における贅沢ならば、牛バラ肉のそれは非日常を彩るご馳走様の味。

しっかりと煮込まれた肉は角煮サイズ。大きすぎてナイフが欲しくなるけれど、そのまま口に入れれば繊維がホロリとほぐれる柔らかさ。それでいて肉の旨味をルーに出し切ることなく蓄えている。

牛肉の中でも脂肪や筋膜の多いバラ肉を使っているので、ちょっとワイルドでホルモンっぽさがあって素晴らしい。ご飯の量は普通で正解。予想通り十分な量だった。

032.jpg
見た目だけだと赤味噌煮込み料理。
033.jpg
これは完全にご馳走だ。
034.jpg
噛めばすぐにほぐれるから、塊肉をそのまま口に入れても大丈夫。
035.jpg
そしてやっぱり付け合わせが絶品。インドのアチャールほど塩辛くないのでバクバクいける。

ちなみにカシミールカレーの作り方を検索したら、デリー上野店の総料理長がレシピをほぼ公開していてびっくりした(こちら)。

自分で作る気にはまったくならない材料の多さ(種類も量も)と作業行程の複雑さだが、この味の組み立て方や理屈が少し判明してうれしい。どうやら甘口のデリーカレーをベースに使って、仕上げの段階で辛さと黒さを調節してカシミールカレーにしているようである。

⏩ 次ページに続きます

<もどる ▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ