告知『大阪の奥深き食文化を巡る旅』という同人誌を作りました
東京から大阪に移り住んだライターのスズキナオさんに案内してもらいながら、『シチューうどん』『各種ホルモン』『冷やしあめ』といった関東の人間には馴染みのない隠れた名物を巡って、その奥深き食文化を体感した記録を同人誌にまとめました。 詳しい内容や購入先はこちらから。ちなみに夏コミは不参加なので、別の機会に会いましょう。
北インドのカシミール地方を訪れても食べられないのがカシミールカレー。ナポリにナポリタンがない、台湾に台湾ラーメンがないのと同じ話だったのだ(名古屋の台湾ラーメンを出す店が台湾にもあるけど)。
海外のレシピやイメージをベースにした、日本人による日本人のための創作外国料理であり、その存在があまりにも大きすぎて『カシミールカレーの概念』が出来上がったため、デリー以外でも提供する店がでてきたのだろう。おそらくロイヤルホストもその一つ。
ところでロイホのカシミールカレーってどんなのだったかなと、デリーの味を覚えているうちに再訪してみた。デリー上野店を出て、そのまま歩いてロイヤルホスト秋葉原店へとやってきたのだ。
お腹はまったく空いていないのだが、カシミールビーフカレーランチをライス大盛でオーダー。ライスの大盛りは無料のようだ。
これは個人的な見解だが、ロイヤルホストではライスを大盛りにすることで、ようやくルーとのバランスが取れると思う。
こうして改めてロイヤルホストのカシミールビーフカレーを食べてみると、ルーの方向性こそ同じではあるが、デリーのそれとは結構違う料理のようだ。
まず違うのが提供時間。注文したらすぐに運ばれてくるデリーと違い、ロイヤルホストは出てくるまでに時間がかかる。これは決して悪い意味ではなく、回転重視のカレースタンドではできない注文ごとの調理を厨房内でしているということだ。
焦げたココットで出てくるということは、最終的にオーブンで加熱調理しているのだろうか。さすがファミレス界の大横綱、優雅すぎるぜ。
さっき食べたデリーの写真と見比べると、ロイホのほうがより黒いかも。「青は藍より出でて藍より青し」みたいな話だろうか。後発だからこその割増の黒さか。
肝心の味についてだが、口に入れた瞬間は結構甘く、そこからじんわり辛くなる。この時間差攻撃はデリーよりもセブンのほうが近いかも。
牛肉はおそらくバラ肉。デリーほどの大きさはないけれど、それでも十分満足感のあるサイズで、噛むと魔法のように溶けていく柔らかさだ。ロイヤルホストならやっぱりチキンよりもビーフだろう。
そしてバラエティに富んだ野菜が嬉しい。ごろっとしたジャガイモと甘いニンジン、シャキシャキ感の残るタマネギ、トッロトロのナス、青臭さがうれしいピーマン。
それぞれの野菜が別行程で火入れされているのだろう。そりゃ提供に時間も掛かるというものだ。よかったら一度調理マニュアルを読ませてくれないだろうか。
付け合わせはピンクの柴漬けと茶色いチャツネ。このチャツネはシナモンを効かせたアップルパイの中身みたいなもので、キャラメルクリームくらいしっかりと甘い。カレーに対する使いどころがまだ私にはわからないのだが、ルーに対する味変だろうか。ライスの上にコクと食感が加わるフライドオニオンが乗っているのも特徴的だ。
カレースタンドであるデリーの「ルー、肉、芋、米、以上!」みたいなシンプルさとは違う、レストランならではの手間暇と多様な食材。時間をかけて味わいたくなるカレーである。
この日はカシミールビーフカレーを二杯食べたので、帰宅してからまったく自分が使い物にならなかった。だがおいしかったので後悔はしていない。でも今後カレーは一日一杯にしようと思った。
ところでロイヤルホストのカレーは、ビーフジャワカレーこそ至高という説もあるそうだ。なぜにジャワ。ロイホは奥が深すぎる。
ジャワカレーも気になるが、デリーの違うカレーもいろいろあるし、デリー銀座店にある今月のカレーというのも気になる。暖簾分けされたデリー札幌店にはラム肉のカシミールカレーもあるのだとか。カレーを食べ歩く人の気持ちがちょっとだけわかった気がした。
最後にデリー、ロイヤルホスト、セブンイレブンのシャバシャバ具合を比べる動画をどうぞ。
以下余談。この原稿を書いていたらセブン‐イレブンの味をもう一度確認したくなって、またつい買ってしまった。
これでまたデリーに行ったら、カシミール無限ループに陥るところである。カシミーループ。
このカレーを食べるとルーが絶対に余るので、どうせならできるだけたくさん余らせて、それを使ったビリヤニにチャレンジしてみることにした。どうも性根が貧乏くさくて嫌になるが。
小鍋でホールスパイスを炒め、そこにカシミールカレーのルーを入れて、8分茹でたバスマティを湯切りして加え、蓋をして最弱の火加減で3分加熱。火を止めてさらに3分蒸らす。
もちろんぶっつけ本番の適当レシピだ。
こうして出来上がったカシミールビリヤニは、欲張ってライスを多く入れ過ぎたので味がちょっと薄いが、ルーのあるところはすごくうまかった。
今はセブン‐イレブンでビリヤニを売っていないので(たまにエリックサウス監修のビリヤニが販売されている)、どうしてもセブンのビリヤニを食べたいという人は試すといいかもしれない。
これをセブン‐イレブンのビリヤニと呼ぶのかは謎だが(呼ばない)、とりあえあずお腹いっぱいになることは保証する。
東京から大阪に移り住んだライターのスズキナオさんに案内してもらいながら、『シチューうどん』『各種ホルモン』『冷やしあめ』といった関東の人間には馴染みのない隠れた名物を巡って、その奥深き食文化を体感した記録を同人誌にまとめました。 詳しい内容や購入先はこちらから。ちなみに夏コミは不参加なので、別の機会に会いましょう。
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