旅のはじまりは新幹線で4時間
今回もまったく下調べなしでいきなり新幹線に乗った。実を言うと秋田新幹線というのがどんなルートを走っているのかすら知らなかった。
アナウンスによると、東京から秋田まで4時間ほどである。
4時間!
新幹線で仕事をするとすごくはかどる、の法則に従い、最初の2時間くらいはかなりバリバリ働いた。
それでもあと2時間ある。ぼんやり音楽聞きながら本を読んでいると、座席周りがじぶんちみたいになっていることに気づいた。
盛岡を過ぎ、後ろの車両が切り離され、再出発してトンネルを抜けると、そこは雪国だった。
東京はあんなに晴れていたのに、である。遠くの方の席で赤ちゃんが泣きだした。外の景色が不安なんだろう、わかる。まだ16時過ぎなのにすでに暗くなってきているし雪が真横に降っている。
そんな不安な僕らを乗せて、新幹線は秋田へ到着した。
17時過ぎに秋田駅に到着。この時間ならばまだ歩き回れるだろうと思っていたのだけれど、すでに日が暮れて真っ暗である。そして予想の倍くらい寒い。
観光案内所で地元情報を入手
いつものようにノープランなので、まずは駅の観光案内所でこれからどうしたらいいのか聞くことに。
いつも観光案内所でおすすめを聞くと、とたんに旅の扉が開いたような気持ちになる。勝手に歓迎されているような気分になるのだ。
いろいろおすすめスポットを教えてもらったが、追加で、ライターの小堺丸子さん方式「個人的なおすすめってありますか?」を質問したところ、ちょっと離れた場所にある地元の居酒屋さんを教えてくれた。
歩いて20分ほどで、教えてもらったお店「秋田杉」に到着。教えてもらわなかったら絶対歩かない距離である。
おそるおそる引き戸を引いて「ひとりなんですけど入れますか」と聞くと、カウンターで飲んでいた地元のお客さんが「いいよ!隣空けるからさ」と言ってアクリルのついたてをどかしてくれた。日本酒の香りと焼き鳥の煙でメガネがくもる。
常連だという金内さんに言われるがまま「秋田まるごとセット」を注文。本当に秋田がまるごと出てきた。
金内さんは地元の歯医者さんとのこと。ここのマスターの後輩で、もう何十年も通っているのだとか。僕と同じでカメラが好きだったので初対面とは思えないくらい話が合った。
店の奥の座敷も満席で、何度か新しいお客さんがのぞいてはあきらめて出ていく。大繁盛である。
マスターはこの道50年以上のベテラン。ついこの間までコロナ自粛の影響で客足も途絶えていたのだけれど、今月に入ってから秋田も風向きが変わってきたと言っていた。
マスターはぽつりぽつりとしかしゃべらないんだけど、その一言ひとことに重みがあって聞き耳を立ててしまう。それを補うように金田さんがとにかくハイテンションで接客している。いい店を教えてもらった。これを書きながらまたあの空間に行きたいなって思っています。
僕たちが金内さんの彼女の写真を見せてもらっていると、マスターが最近秋田であたらしく売り出したという「サキホコレ」というお米がたまたま手に入ったから、ということで、サービスでおにぎりを握ってくれた。
さすが地元の人頼りの旅である。ぜんぶ地元に任せてみたら、初日から最高の夜になったのでした。
そしてホテルに帰って幸せに寝て、次の朝ですよ。