秋田といえばなまはげ
他県で秋田といえば?と尋ねると、5人中4人はなまはげと答えるだろう(あと一人はきりたんぽ)。
県内にはなまはげが名前に入ったお店や施設がやたらと多い。
こんなに県民に愛されている(もしくは恐れられている)なまはげに会わずに帰るわけにはいかない。
初日に行った居酒屋「山形杉」で歯医者の金内さんに勧められた、男鹿半島にあるなまはげ館にやってきた。
こういう施設のなまはげは観光地化されていて怖くないと思うだろう。それが、である。
館内、どのなまはげもバリバリ本気モードなのだ。直視できないくらい怖い。
館内のスクリーンでは「なまはげの一夜」というストーリー仕立ての説明ビデオを見ることができるのだが、これを見ると本当に怖くて帰りたくなる。
なまはげはじつは単なる鬼ではなく、家の中の災厄を追い払っていいものを連れてきてくれる「来訪神」と考えられているらしい。なまはげ館では怖がりながらも、こうしたなまはげのすべてを学ぶことができる。
ビデオを見終えたら、多くのなまはげの間を通って、隣にある男鹿真山伝承館へと移動しよう。
男鹿真山伝承館
ここも全くと言っていいほど観光地用にカスタマイズされておらず、秋田の古民家ほぼそのままである。だからリアリティがすごい。
この男鹿真山伝承館では、大晦日に現れるという真山地方のなまはげ行事を完コピして再現してくれるという。
なまはげはいきなり入ってくるわけではない。
赤ちゃんや病人がいたら迷惑になってしまうので、あらかじめ先人と呼ばれる人が様子をうかがいに来て、なまはげが入っていいか主人に聞くのだ。
先人が聞きに来てしばらくすると、玄関の方からこの世の物とは思えないうなり声が聞こえてくる。来るぞ!
なはまげは「う゛~」などとうなりながらしこを踏み、だんだんだん!と家中を練り歩く。「泣く子はいねえが~、なまけものはいねえが~」
ひととおり暴れたあと、お膳とお酒が運ばれてきていったん落ち着いてなまはげの話を聞くタームに入る。これをなまはげ問答という。
最後にもうひと暴れしたあと、なはまげは勢いそのままに障子を「だーん!」と開けて帰っていった。
毎年大晦日にこれが来るとなると、うかうか紅白歌合戦とか見ていられないだろう。
なはまげは怖い。ものすごく怖い。泣く子はいないか、なまけものはいないか。それは脅しではないかという人もいるかもしれない、そのくらい怖い。
でも家の中に鬼がやってきて、それを主人が話し合いでなだめ、帰ってもらう。この一連の流れは、厄払い以外にも、家の中の秩序みたいなものを正常に保つ役目もあるんじゃないかと思った。