特集 2024年7月1日

9年かけて12本のハブの記事を書いている~伊藤さんハブまとめ

集落では探さないようにしている

林:
伊藤さんにハブの話を聞いております。今回は第2回です。
伊藤
よろしくお願いします。
林:
ハブの種類はだんだん分かってきましたよ。
伊藤:
実はまだ記事に登場してないハブもいるんですよ!
林:
話をまとめようとしてるんですけど、広げましたね。
伊藤:
すいません。
林:
地元の人ってハブ好きなんですか?
伊藤:
嫌いですね。
林:
嫌いなんだ。コブラとかって、ちょっと信仰されてるじゃないですか。
伊藤:
あ、でも、そういうのはありますよ。ハブのおかげで森があんまり開発されないで守られてきた、みたいなこともいわれていますし。。
林:
なるほど。
伊藤:
あと、やっぱり神格化されていたり。
林:
嫌いだけど、畏怖の念はあるわけですね。
伊藤:
あります。
ハブって、割と人の生活の近いところにいるヘビなんですね。畜産だとか、サトウキビ畑だとか、畑だとか農場にネズミが入り込んでくる。ハブはそれを食べに行く。割と人の生活に近いところに出るので、やっぱり人はハブを恐れた。 集落内で見つかったりしたものは駆除してきたんですよね。
特に奄美大島はハブも多いので、捕まえたハブは役所に届けるとお金がもらえる。
林:
お金もらえるって、書いてありましたね。
伊藤:
基本的に、自分の家の庭にや集落の道にハブが出たってなると、やっぱり駆除になるんですよね。
僕はハブは好きですけど、生活圏だとか出たハブは、やっぱり駆除されるしかないなと思ってますよ。
林:
「わー、ハブだ~!イエーイ!」って行くと、地元の人からすると「そんな楽しいもんじゃねえよ」ってなっちゃいますか?
伊藤:
そこはね、割と地元の方は寛容だったりするんですけどね。実は集落の周辺に実はハブが多いんですよ。
林:
そうですよね。
伊藤:
だけど、僕はあえて集落から遠いとこに探しに行く。
林:
伊藤さんが集落をぐるぐる回ってると、地元の人からするとあんまり印象が良くないってことですか?
伊藤:
そうですね。僕がそう思ってるだけなんですけど。
林:
よそ者が来て家の近所で「ハブ探そう!」っていうのは良くない。
伊藤:
集落の中でハブと人が、生活圏が重ならないように暮らしているなかで、よそ者が来て集落の近くでハブ見つけましたみたいな話は、良くないなっていうのは思ってます。
林:
なるほど
伊藤:
駆除となると、皆さんに余計な手間もかけるし。
林:
伊藤さんが集落で見つけると駆除しなきゃいけなかったりする。ハブもひっそりと見つからずに共存してたのが「いるぞ!」ってなっちゃうと駆除の対象になってしまう。
伊藤:
そういうところもあるので、あえて山の方へ探しに行きます。
林:
いないとこに探しに行ってるってことなんですね。
伊藤:
いないところと言うとちょっと語弊があるんですけど、極力、現地の人に迷惑かからないようにしているっていうことです。

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「ちょっとこれ、野生のハブ見てみたくなっちゃったな」

林:
『そもそもなんでハブが見たいのか』っていうことを聞きたいんですけど。
伊藤:
これはですね、何気にいろいろな場所で聞かれるんですよ。
林:
だと思います。
伊藤:
記事を読んでくれた人にも聞かれますし、ハブを探しに行った先でも聞かれます。集落の人と話した時に「なんでそんなに見たいの?」とか聞かれます。
林:
他にもいろんな蛇がいるじゃないですか。もっと綺麗な蛇とかではダメなんですか?

002_amami.jpg
奄美大島のヒャン

伊藤:
ダメじゃないですけど。やっぱりハブを見に行ってますね。
林:
ダメってことではないんですね。
伊藤:
ダメってことはないですけど。
林:
毒があるから?
伊藤:
いや、なんでしょう。ハブを見るために始めたからっていうところもあるし。
林:
トートロジーだ。
確かにハブって他のヘビと比べて頭がちょっと変わった形してますね。
伊藤:
まあ、そうですね。見た目も変わってるし。
あとは やっぱりちょっと大型ですよね。もちろんハブよりでかい蛇はいるんですけど、ヘビの中でかなり大型の部類ですよね。
林:
ハブ以外の蛇だと、伊藤さん手掴みしてる写真とかありますもんね。

伊藤:
毒がなかったりするとしますし、噛まれたこともありますよ。
林:
痛いだけなんですか?
伊藤:
痛い。ちゃんと消毒しないといけない。それは動物全般そうですけど。
林:
伊藤さんのバックグラウンドとして毒が好きですもんね。元々ね。
伊藤:
そもそも、そうです。
2015年に石垣島のハブの記事を初めて書いたんですけど、
ハブにすごく興味を持ち始めたのは、それより前にイボイモリっていうイモリを沖縄に探しに行った記事があって。
記事【海の幸のようにかっこいいイモリのポスターを作る】
伊藤:
その時に、夜の沖縄の林道っての初めて歩いたんですね。そこで『ハブ注意』っていう看板が普通にたってて。ここにハブがいるなんて、なんかすげえなって思ったんですよ。わかってはいたけど、実際目の当たりにすると「すげえなってな」って。そして、「ちょっとこれ、野生のハブ見てみたくなっちゃったな」っていうのがきっかけ。
林:
『ハブ注意』って書いてあることで確かにドキドキしますね。
伊藤:
ハブに注意しろって看板なんですけど、逆にそれでモチベーションが立ち上がってきちゃった。
林:
伊藤さんの性癖を刺激してしまったわけですね。
伊藤:
ハブがいる島といない島があるっていうのも、すごく気持ちを搔き立てられたんですよ。
ハブって、沖縄と奄美の全部の島にいるわけじゃなくて、生息している島としていない島があって。ざっくり60余りの島々の中で大体30~45、半分ぐらいの島にしかハブはいないんですね。諸説はあるんですけど…。
林:
そうなんですね。
伊藤:
じゃあ全部回ってみて、どういう場所にいるのかとか、どういう種類がいるのかとか。
種類というか見た目の特徴だとか、そういうのを全部見てみたいなっていうのが、モチベーションになったんですよ。
林:
ハブって同じ種でも島によって姿と形が違うんですよね。
伊藤:
そうなんです。
林:
集めたくなる気持ちはわかる

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ハブと人の関わりが好き

伊藤:
あと、人との関わりもやっぱりちょっと違ったりだとか。 あと、ハブ注意の看板のデザインが違っている。
ハブ対策の方法もちょっと違う。そういう人と関わる部分がものすごく面白いんですよ。
林:
ハブの周辺の文化っていうか、そういうところですね。
伊藤:
最近思ったんですけど、生物学っぽい感じっていうよりも、どっちかっていうと、地理学なのかな。
ハブのいる場所に行って、どういうとこにハブがいたとかを知るのが嬉しい。
林:
ハブをそのまま見るんじゃなくて、そのハブの状況とかに興味があるんですね。
伊藤:
そういうのがなんかいいなって思ってます。
林:
毒ヘビじゃないと、ハブ注意みたいな看板は現れないですもんね。
伊藤:
そうですね。
林:
ハブ名人がいたりとか、飼ってる施設とかもないですもんね。
伊藤:
沖縄の南部で、擁壁の石の隙間とかにペットボトルがバンバン突っ込んであったんですね。
林:
ありますね。
伊藤:
塀の隙間にペットボトルがボコボコ、ボコボコ押し込まれてて。
一緒に回ってたハブ獲り名人に「みんなこういうところにペットボトルガンガン押し込んで捨ててくんですね。態度悪いですね」みたいなこと言ったら、「これはハブが入り込まないようにしてるんだよ」って言ってて。「なるほど、そうなんだ!」って感心しました。
林:
隙間にハブが入らないようにしてるんだ
伊藤:
石垣の隙間って、やっぱハブが入りやすいんだそうです。
林:
沖縄南部ではペットボトルが詰められてるんですね。
伊藤:
そこだけで見たんですよ。
林:
最近の奄美の記事で出てた、ハブを叩くための棒、「用心棒」っていうのは、奄美の風習なんですか?

002_yojinbo.jpg
【与路島の山奥でとぐろを巻く三名様 〜ハブのいる島めぐり】より

伊藤:
そうですね、僕が見たのは奄美です。やっぱり多いとこ少ないとこあるんですけど、南部の方が多いかな。

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面と向かって遭遇したらハブはそんなに怖いもんじゃないというか

林:
伊藤さんの記事を読む限り、ハブって夜行性で臆病なんですよね。
伊藤:
ものすごい臆病で夜行性ですね。日が落ちてからじゃないと出てこない。
林:
あの棒で地面ガンガン叩けばハブは逃げていく。
伊藤:
基本的に人みたいにでかいものが寄っていけば、 ハブはもう逃げちゃいます。
ただ、やっぱり追い詰められてパニックになって攻撃はしてくることはあります。
この言い方は気を遣うけど、面と向かって遭遇したらハブはそんなに怖いもんじゃないというか
伊藤:
こっちに気づかないふりしてるか、逃げるかですから。ハブに噛まれるのって、大体こっちから手を出したりしたときですよ。
林:
ハブに手は出さないで
伊藤:
昼間にハブが隠れてる藪に入って踏んじゃったりだとか。
あとは、夜でも山の中でハブが待ち伏せてる時に近くを通って、驚いたハブに攻撃されることもありますね。
僕は久米島で見つけたと思ったらすぐ逃げられてますし。
ハブはそんなに目も良くないけど、光の明滅とかにはやっぱり敏感に反応するので、そういうので逃げちゃいますね。
伊藤:
だから、奄美大島なんかで見たハブも逃げようとするのを棒でなんとか押さえて、写真撮ったりだとかっていうのも結構あります。

image3.jpg

林:
久米島のはまさに逃げようとつける瞬間ですもんね、これは。

005_kumejima.jpg

伊藤:
これも2017年とかですよね。
まだ自分が全然未熟だった時ですね。
専用のハブ棒も持ってなかったし。
林:
今、 持ってるんですか?
伊藤:
マジックハンドみたいなやつ持ってます。それ持ってってぱっと捕まえて、 逃げられないポジションに置いてから、写真撮ったりしてます。
林:
棒みたいな?空港で引っかかったってやつではないんですね?

image15.jpg

伊藤:
空港で引っかかったって書きましたっけ。
林:
徳之島の記事に載ってましたね。
伊藤:
徳之島の時はフック型の棒だ。それより今進化して、マジックハンドみたいなやつ。 2つ折りできるんで、キャリーケースに入れて運んでます。
伊藤:
もちろんハブを捕まえるって目的もあるんですけど。夜にハブ棒を持ってると島の人が興味を持ってくれるんですね。
すごくいいハブ棒持ってるじゃないか、みたいな
林:
警戒されることなく
伊藤:
あらかじめ、ハブを見に来てますよって言ってあるので大丈夫。

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サトウキビの品種改良がハブ被害を増やした

伊藤:
徳之島のハブ、最近ニュースになりましたね。
林:
どんなニュースですか?
伊藤:
この「ハブの館」からハブが脱走したんですよ。

image2.jpg

ハブ11匹が徳之島の役場内施設から脱走…職員20人で捜索、防災無線で注意を呼びかけ(読売新聞)

林:
大変ですね。
伊藤:
そうなんです。
林:
徳之島のハブは危険なんですか?
伊藤:
気性が荒いと言われます。被害が島の面積の割に多いみたいです。ただ、やっぱりそれも産業次第なんですね。サトウキビ 栽培が盛んで農地も多いから。畑にハブが入り込んで被害が多くなる。
伊藤:
サトウキビも面白くて、まだ調べてる途中なんですけど。
1960年代ぐらいの論文かなんかで「どこでハブに噛まれましたか」っていう統計を取ってるんですよね。ある時まではサトウキビ畑で噛まれた人ってほとんどゼロだったんですけど、ある時から増えてきてる。
林:
それはなんで?​​​​​​
伊藤:
サトウキビの品種改良が原因じゃないか、と言われてるんです。
奄美とか沖縄の写真で、サトウキビ畑っていうと葉っぱがもうめちゃめちゃ生い茂ってるけど、元々サトウキビってもっと小ぶりな葉でスカスカだったんですよ。そうすると、日光を防げないし日陰にならないので、ハブはサトウキビ畑に入ってこられないですね。もちろんネズミも隠れ場所ないから入ってこない。
林:
品種改良前はハブはサトウキビ畑に入り込んでなかったんだ。
伊藤:
そうです。
林:
品種改良してわさわさにしたのは、理由があるんですか?
伊藤:
確か、糖度がもっと強くなる品種を導入したみたいです。
林:
そしたらハブが入り込むようになっちゃって、みんな噛まれるようになっちゃった。 繋がってますね。
伊藤:
やっぱり、色々、繋がってるっていうのが興味深い。


林:
第2回目も10分ぐらい話したと思うんで終わりにしましょうか。
伊藤さんがハブを見たい理由が分かってきました。ハブは毒が強いので、その周辺の対策にも興味がある。
伊藤:
そうですね。あとは、こういっちゃなんだけど、 出かける動機なんでしょうね。
林:
ハブを見に行くことが、旅に出る動機になってるんですね。
伊藤:
そうですね。旅に出るモチベーションも、1つとしてはあるかなって思います。
林:
「そこに山があるから」みたいな話ですね。

⏩ GWと夏休みはすべてハブにつぎ込む

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