ハラールのカレーラーメンを作ろう
この酔狂な企画に協力してくれるのは、「ラマダン明けに食べるハラールマトンラーメンを考える」という企画で、マトンラーメンの試食をしてもらった、インド東部の西ベンガル州からやってきたソニさんだ。
彼女はインド料理教室やレストラン事業をしているプロの料理人。私もチャパティの作り方を習ったことがあるのだが、レシピだけでなく実際にやってみないとわからない細かいコツやその料理の文化的背景なども学べる、とても有意義な時間だった。
ソニさんはもちろんラーメンを作ったことがないので、カレーラーメンを作ってもらう前に、私が普通のラーメンを作ってみせて、さらに私なりのカレーラーメンを試してもらい、そのアンサーとしてソニさん流の一杯に挑んでいただこう。
ただソニさんはイスラム教徒なので、「普通のラーメン」といってもハラールフード(イスラム教徒が食べることを許されている食品)を使う必要がある。
そのためハラールショップを訪れて、使う食材を検討するところからラーメン作りは始まる。具体的には豚肉や酒類が一切使えないのだが、日本でルールを守って暮らすのはなかなか大変そうだ。
ラーメンに使う中華麺の材料は、小麦粉と塩とかんすい(アルカリ性の食品添加物)なので問題ないが、市販品は保存期間を長くするために酒精(アルコール)を加えている場合があるので、やはり手作りするべきだろう。本当は製麺したいだけなのだが。
せっかくなのでマイダ(ナンなどに使う白い小麦粉)とアター(チャパティなどに使う茶色い全粒粉)を買って、マイダだけで打った中華麺と、アターを3割使った全粒粉入りを用意した。
普通のハラールラーメンを作る
ラーメンとカレーラーメンに使うハラール食材を持って、ソニさんのキッチンスタジオへと向かう。一人で行くのは心細いしもったいないので、スパイスを使った料理に詳しいプロダクトデザイナーの辻村哲也さんに同行いただいた。
ちなみにこの日は2024年10月。「この楽しかった体験をいつか記事にするんだ!」と思いつつも、ちょっとマニアックすぎるかなと書くのを躊躇してしまったのだが、今こそ食の文化交流の楽しさを書くべきだろう。
まずは普通のラーメンを作って、ラーメンがどういう食べ物なのかをソニさんに理解していただく。
ここで問題となるのが「普通のラーメン」の定義だ。日本中には様々なラーメンがあり、例えば北海道と東京と福岡では「普通のラーメン」がまったく違うのである。
どんなラーメンにしようか結構悩んだのだが、そもそも豚が使えないので、ハラール(イスラム法に則り適切に処理された)の親鶏ぶつ切り、煮干し、ネギ、ショウガ、ニンニク、昆布を煮込んだスープの醤油ラーメンにする。昔ながらの東京っぽい感じだろうか。
タレはハラール醤油(どこまでを許容範囲とするかは人それぞれなのだろうが、普通の醤油は醸造時にアルコールが生成されるので厳密にいうとダメらしい)、みりん風のハラール甘味調味料(水飴っぽい味)、インド料理には欠かせない存在のガーリックジンジャーペーストを一煮立ちさせたもの。
よりラーメンらしい仕上がりにするため、サラダ油とネギの葉でネギ油も作っておく。
カレーラーメンにする前提の中華麺なので、かなりの太麺になってしまったが、普通のハラール醤油ラーメンができあがった。普通とはなにか。
ソニさんにはまるで馴染みのない、細長い麺と醤油味のスープは口に合うだろうか。
ソニ:「ンフフフ、超うまい~。この前(マトンラーメン)のとは全然違います。ネギ油がいいですね。
私がインドに住んでいたのは15年以上前ですが、インドで麺類は食べませんでした。甘いデザート(ファルーダ?)か、南インドのバーミセリ(極細のパスタ)で作るウプマとかパヤサムくらい。
最近はストリートフードで焼きそば(チョウメン)が流行っているみたいだけど、汁のある麺料理は今も珍しいと思います」
私も食べてみたところ、煮込み時間が短かったこともあり、なんだか優しい味のラーメンだった。なるほど、これが普通のハラールラーメンか。
このスープなら麺がもうちょっと細いほうがいいのだが、とりあえずはラーメンの概念は伝わったはずだ。


