特集 2026年7月21日

インド人とカレーラーメンを作る食文化交流会

カレーラーメンの可能性がまた広がりました。

カレーとラーメン、日本人が大好きな二大帰化料理を組み合わせたカレーラーメンの存在が好きで、以前には「大真面目にカレーラーメンを考える会」をやったこともある。

とてもおもしろい会だったが、やはりインド人と一緒に作ってこそ、カレーラーメンの夜明けが訪れるのではということで、今回はインド人の料理人とチャレンジしてみた。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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ハラールのカレーラーメンを作ろう

この酔狂な企画に協力してくれるのは、「ラマダン明けに食べるハラールマトンラーメンを考える」という企画で、マトンラーメンの試食をしてもらった、インド東部の西ベンガル州からやってきたソニさんだ。

彼女はインド料理教室やレストラン事業をしているプロの料理人。私もチャパティの作り方を習ったことがあるのだが、レシピだけでなく実際にやってみないとわからない細かいコツやその料理の文化的背景なども学べる、とても有意義な時間だった。

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私が以前に作ったハラールマトンラーメン。スパイスをほとんど使わなかったので、カレーラーメンではなく塩ラーメンかな。
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試食をしてくれたソニさん。ラーメンを食べたのはこれが人生初とのこと。

ソニさんはもちろんラーメンを作ったことがないので、カレーラーメンを作ってもらう前に、私が普通のラーメンを作ってみせて、さらに私なりのカレーラーメンを試してもらい、そのアンサーとしてソニさん流の一杯に挑んでいただこう。

ただソニさんはイスラム教徒なので、「普通のラーメン」といってもハラールフード(イスラム教徒が食べることを許されている食品)を使う必要がある。

そのためハラールショップを訪れて、使う食材を検討するところからラーメン作りは始まる。具体的には豚肉や酒類が一切使えないのだが、日本でルールを守って暮らすのはなかなか大変そうだ。

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埼玉県三郷市にあるボンゴバザールというお気に入りのハラールショップにやってきた。ハラール食品をチェックする協会が認証した「HALAL Certification」と、認証はされていないけれど豚や酒類などが含まれていないことを確認している「Muslim Friendly」と、含まれている(かもしれない)「NON HALAL or SYUBHAH(疑いがある)」に分けられている。
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豚が食べられない分、鶏、羊、牛が充実している。
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エスビー食品のゴールデンカレーは通常版だと豚などが使われているが、ハラールのルーも存在する。日本風カレーをイスラム教徒と一緒に食べられるのだ。
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赤缶はハラール認証を受けていないけれど、原材料がスパイスだけなのでムスリムフレンドリーな食材となる。隣の普通のルーはノンハラール。
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ラーメンといえば味の素が欠かせないが(偏見)、ハラール認証のタイ産があった。
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日本産の味の素はさとうきびから作られるが、タイ産はタピオカ澱粉から作られている。これは宗教の話ではなく、その土地の安い食材を使っているということだろう。

ラーメンに使う中華麺の材料は、小麦粉と塩とかんすい(アルカリ性の食品添加物)なので問題ないが、市販品は保存期間を長くするために酒精(アルコール)を加えている場合があるので、やはり手作りするべきだろう。本当は製麺したいだけなのだが。

せっかくなのでマイダ(ナンなどに使う白い小麦粉)とアター(チャパティなどに使う茶色い全粒粉)を買って、マイダだけで打った中華麺と、アターを3割使った全粒粉入りを用意した。

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カメリアと書かれているマイダ(強力粉)。
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左がマイダだけ、右がアター入りの生地。粉100に対して水38と塩1と粉末かんすい1。
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ローラー間隔1.5ミリで生地を伸ばし、幅2.2ミリの切り刃で裁断する。これはアター入りの麺。

普通のハラールラーメンを作る

ラーメンとカレーラーメンに使うハラール食材を持って、ソニさんのキッチンスタジオへと向かう。一人で行くのは心細いしもったいないので、スパイスを使った料理に詳しいプロダクトデザイナーの辻村哲也さんに同行いただいた。

ちなみにこの日は2024年10月。「この楽しかった体験をいつか記事にするんだ!」と思いつつも、ちょっとマニアックすぎるかなと書くのを躊躇してしまったのだが、今こそ食の文化交流の楽しさを書くべきだろう。

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左の辻村さんにもカレーラーメンを作ってもらいます。
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それではやっていきましょう。

まずは普通のラーメンを作って、ラーメンがどういう食べ物なのかをソニさんに理解していただく。

ここで問題となるのが「普通のラーメン」の定義だ。日本中には様々なラーメンがあり、例えば北海道と東京と福岡では「普通のラーメン」がまったく違うのである。

どんなラーメンにしようか結構悩んだのだが、そもそも豚が使えないので、ハラール(イスラム法に則り適切に処理された)の親鶏ぶつ切り、煮干し、ネギ、ショウガ、ニンニク、昆布を煮込んだスープの醤油ラーメンにする。昔ながらの東京っぽい感じだろうか。

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肉や骨+乾物+香味野菜というスープの構造を理解していただく。鶏ガラではなくぶつ切りを使ったのは、チャーシュー代わりに使うから。
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タレはハラール醤油(どこまでを許容範囲とするかは人それぞれなのだろうが、普通の醤油は醸造時にアルコールが生成されるので厳密にいうとダメらしい)、みりん風のハラール甘味調味料(水飴っぽい味)、インド料理には欠かせない存在のガーリックジンジャーペーストを一煮立ちさせたもの。

よりラーメンらしい仕上がりにするため、サラダ油とネギの葉でネギ油も作っておく。

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タレの材料。ハラール醤油はキッコーマンだけあって、普通の醤油とほとんど変わらない味がする。
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醤油の味をチェックするソニさん。インドの中華料理店などではマレーシアやインドネシアのハラール醤油が使われるそうだ。
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つい大きなボトルで買ったため、ガーリックジンジャーペーストを入れ過ぎた。味見したらちょっと甘かったので(甘味調味料がみりんより甘い)、多めの塩を加えた。
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油っ気がないとうどんっぽくなるので、ネギの青いところをサラダ油でジュクジュク加熱しておく。
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本当は3時間くらい煮込みたいけれど、進行の都合で1時間でスープの完成とする。
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マイダだけで作った中華麺をたっぷりのお湯で茹でる。菜箸を借りようとしたらなかった。そりゃ使わないですよね。
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丼にタレと油をいれて、スープを注いでおく。
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麺、ネギ、鶏肉を盛って完成。
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カレーラーメンにする前提の中華麺なので、かなりの太麺になってしまったが、普通のハラール醤油ラーメンができあがった。普通とはなにか。

ソニさんにはまるで馴染みのない、細長い麺と醤油味のスープは口に合うだろうか。

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日本の食文化に対してソニさんが興味津々なのが嬉しい。フォークではなく割りばしでチャレンジ。

ソニ:「ンフフフ、超うまい~。この前(マトンラーメン)のとは全然違います。ネギ油がいいですね。

私がインドに住んでいたのは15年以上前ですが、インドで麺類は食べませんでした。甘いデザート(ファルーダ?)か、南インドのバーミセリ(極細のパスタ)で作るウプマとかパヤサムくらい。

最近はストリートフードで焼きそば(チョウメン)が流行っているみたいだけど、汁のある麺料理は今も珍しいと思います」

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喜んでもらえてよかった!
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タイ産の味の素は結晶が大きい。ちょっと入れると良くも悪くも店っぽい味になる。

私も食べてみたところ、煮込み時間が短かったこともあり、なんだか優しい味のラーメンだった。なるほど、これが普通のハラールラーメンか。

このスープなら麺がもうちょっと細いほうがいいのだが、とりあえずはラーメンの概念は伝わったはずだ。

⏩ 次ページに続きます

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