食後にお茶をいただきながら、次はどんな食材や麺を使ってみたいか、保守的なイスラム教徒にどうしたらカレーラーメンを食べてもらえるかなどを真面目に話し合う。別にカレーラーメン屋を開く訳ではないのだが、こういうディスカッションが楽しいのだ。
私が「インドでラーメン屋さんをやったら流行るんじゃないですか」と冗談で言ったら、ソニさんは「人気になると思いますよ。でも私はこれからも日本に住みたいです。安全な国だから」と笑っていた。
ソニさん、ありがとうございました。またなにか作りましょう。
続いてはカレーラーメン。スープは同じものを使うのだが、タレと油をハラールなインド風に変えてみよう。
この「スープは一種類でもタレと油でバリエーションが作れる」という構造も、ラーメンを語る上では大切なポイントだ。
ソニ:「これはインド人が全然OKの味。たぶんこっちのほうが味が強いからみんな好き。ただ麺がちょっと長くて食べにくいので(すするという行為をしたことがない)、もう少し短めがいいかも。
ラーメンはいろいろな味があるんですね。前回のマトンラーメンもおいしかったですが、インドよりもモンゴルとかウイグルの人が好む味だと思います」
ソニさんが麺をすするのに苦戦している様子を見て、カップヌードルが海外進出するにあたって、フォークで食べやすいように麺の長さを短くしたという話を思い出した。
これくらい強いスープと油だと、アター入りの太麺が生きてくる。このラーメンのほうが煮干しの風味が不思議とより強く感じられ、ちょっとフィッシュカレーっぽい味になった。
続いては辻村さんが家で作ってきてくれた、「ハラール羊豆ポタつけめん」を試してみる。最近流行りのベジポタ(野菜のポタージュ)ではなく、豆ポタなのがポイントだ。
スープの正体は「ハリーム」という料理で、インドやパキスタンでよく食べられている肉と穀物のスパイス煮込み。麺に合うように味付けを変えることはせず、そのままでも麺に合うインド料理をピックアップしてきたのである。
普通のハリームと違うのは(普通のハリームもいろいろだが、普段辻村さんが作るハリームと比べて)、肉をスープから取り出してチャーシューのように扱うところだけ。
作り方をざっくり聞いたところ、ヨーグルトと塩でマリネしておいた羊肉(ラムのヒャクラという胸肉)を炒めタマネギとニンニクとショウガと炒めてスパイスと水で煮込み、豆類と麦のペーストを加えて、仕上げにとろみをつけてガラムマサラで香りをプラスして完成。
ソニ:「すごい準備をしてきたんですね!」
辻村:「すごい準備をしてきたんですよ!」
詳しくは以下の付箋をご確認ください。ラーメンスープと違ってダシガラのゴミが発生しないのがいいですね。
ソニ:「つけめん! テレビで見たことがあって気になっていました。おもしろい食べ方ですね。レモンを絞ったらもっとおいしいと思います(辻村さんはもともと添えるつもりで、二人の心が通じ合った瞬間だ)。
仕上げに入れたガラムマサラは自家製ですか。香りですぐわかりました。挽きたてはやっぱり全然違います(また心が通じ合う)。
パキスタン人はハリームをロティ(チャパティ)などと食べますが、インド人はハリームだけで食べる。この中に豆や麦が入っているから。でも麺と食べるのもおいしいですね」
ハリーム自体はインドやパキスタンの作り方そのままなのに、つけめんのスープとして成立しているのが実におもしろい。このとろみと味の濃さがいいのだろう。別盛りにした肉の存在感もラーメンっぽい。事前に肉をマリネしておくと、長時間煮ても味があまり抜けないそうだ。
これもまた楽しいカレーラーメンだ。ハリーム以外にもいろいろなカレー(広義)を用意して、麺の周りにたくさん並べたら楽しそうだ。
我々からのカレーラーメンに関するプレゼンを踏まえて、ソニさんが作ってくれたのは、なんとベジカレーラーメンだった。
ハラール料理よりもラーメンから遠いところにあるであろうベジ料理。野菜とスパイスだけで、この太い麺を受け止められるのだろうか。
ソニ:「これはイスラム教徒だけでなく、ベジタリアンの人も食べられるラーメンです。でもノンベジの後だから味があまりしないかもしれません。
ショウガやニンニクはペーストだけよりも、刻んだものも入れた方がラーメンっぽいかなと思って入れました。もう少しスープの量が多いほうがよかったですか。
これは私が普段作るレシピではありません。二人が作るのを見て、初めて試してみたオリジナルのレシピ。さっきのネギ油を入れてもおいしそうですね」
明らかにこれまで見たことのないタイプのカレーラーメンに驚きが止まらない。辻村さんや私の発想にない一杯である。これはラーメンの延長線ではなく、具に麺を入れたベジカレーなのかもしれない。
肉類を一切使っていないのだが、これがしみじみうまい。軽いけれど深みのあるスパイシーなスープ、麺と一緒に食べる野菜の食感、ベジなのにノンベジの後でも物足りなさがまったくない。
カレーラーメンというお題に対して、まさかこんな回答が返ってくるとは。これぞ食文化の化学反応。こういう一期一会の料理との出会いが最高に嬉しいのである。
最高のベジカレーラーメンを食べ終えたところで、「もう一つアイデアが出ました!」とソニさんが目を輝かせた。
ここにある材料をアレンジして、もう一つのカレーラーメンを作ってくれるらしい。
ソニ:「玉置さんのスープと合わせてノンベジにしてみました。これならラーメンに見えますか?
でも味はさっきのベジカレーのほうが好みですね。煮干しの味が合わないのかも。もう少し酸味が欲しいから、途中で玉置さんが二杯目で使ったトマトのタレを加えるといいかもしれません(味変!)。
ソニさんが作る人生二杯目のカレーラーメンは、一気にラーメンへと寄せてベジポタと鶏のダブルスープ。理解力と応用力が本当に凄い。
これはこれでおいしいし、日本人の多くの人がイメージするカレーラーメンとしてはこっちが正解なのかもしれないが、ベジでこれだけの満足感が味わえるという驚きに満ちた一杯目のほうが私も好み。あるいは鶏スープで割らずベジカレーのポタージュだけで食べるのもうまそうだ。
それにしても、頭とお腹が大満足した異文化交流会だった。
食後にお茶をいただきながら、次はどんな食材や麺を使ってみたいか、保守的なイスラム教徒にどうしたらカレーラーメンを食べてもらえるかなどを真面目に話し合う。別にカレーラーメン屋を開く訳ではないのだが、こういうディスカッションが楽しいのだ。
私が「インドでラーメン屋さんをやったら流行るんじゃないですか」と冗談で言ったら、ソニさんは「人気になると思いますよ。でも私はこれからも日本に住みたいです。安全な国だから」と笑っていた。
ソニさん、ありがとうございました。またなにか作りましょう。
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