特集 2026年7月21日

インド人とカレーラーメンを作る食文化交流会

私なりのハラールカレーラーメンを作る

続いてはカレーラーメン。スープは同じものを使うのだが、タレと油をハラールなインド風に変えてみよう。

この「スープは一種類でもタレと油でバリエーションが作れる」という構造も、ラーメンを語る上では大切なポイントだ。

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多めの油でタマネギ、ジンジャーガーリックペースト、トマトを炒める。
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トマトが崩れたらカレー粉の日本代表をドサドサ入れる。
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多めのハラール醤油と少なめの甘味調味料で和風のカレーダレに仕上げる。
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油を熱したら、マスタードシード、唐辛子、クミンシード、フェンネルシードを加えて、香り高いスパイス油を作る。
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丼にカレーダレ(というか和風トマトカレー)、スパイス油、塩を入れて、先程のスープを注ぐ。

ソニ:「これはインド人が全然OKの味。たぶんこっちのほうが味が強いからみんな好き。ただ麺がちょっと長くて食べにくいので(すするという行為をしたことがない)、もう少し短めがいいかも。

ラーメンはいろいろな味があるんですね。前回のマトンラーメンもおいしかったですが、インドよりもモンゴルとかウイグルの人が好む味だと思います」

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アター(全粒粉)入りの茶色い麺を茹でて、刻みパクチーをのせたら完成。カレー好きとラーメン好きをこじらせた守備範囲広めのマニアが間借り営業で作りそうな一杯だ。

ソニさんが麺をすするのに苦戦している様子を見て、カップヌードルが海外進出するにあたって、フォークで食べやすいように麺の長さを短くしたという話を思い出した。

これくらい強いスープと油だと、アター入りの太麺が生きてくる。このラーメンのほうが煮干しの風味が不思議とより強く感じられ、ちょっとフィッシュカレーっぽい味になった。

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辻村さんが作るカレーラーメンはつけめんだった

続いては辻村さんが家で作ってきてくれた、「ハラール羊豆ポタつけめん」を試してみる。最近流行りのベジポタ(野菜のポタージュ)ではなく、豆ポタなのがポイントだ。

スープの正体は「ハリーム」という料理で、インドやパキスタンでよく食べられている肉と穀物のスパイス煮込み。麺に合うように味付けを変えることはせず、そのままでも麺に合うインド料理をピックアップしてきたのである。

普通のハリームと違うのは(普通のハリームもいろいろだが、普段辻村さんが作るハリームと比べて)、肉をスープから取り出してチャーシューのように扱うところだけ。

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とても手間暇のかかる料理なので、自宅で作ってきたものを現場で仕上げてもらった。

作り方をざっくり聞いたところ、ヨーグルトと塩でマリネしておいた羊肉(ラムのヒャクラという胸肉)を炒めタマネギとニンニクとショウガと炒めてスパイスと水で煮込み、豆類と麦のペーストを加えて、仕上げにとろみをつけてガラムマサラで香りをプラスして完成。

ソニ:「すごい準備をしてきたんですね!」

辻村:「すごい準備をしてきたんですよ!」

詳しくは以下の付箋をご確認ください。ラーメンスープと違ってダシガラのゴミが発生しないのがいいですね。

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辻村さんはいつもレシピを付箋一枚にまとめる。仕上げに片栗粉ではなくアターでとろみをつけるのがおもしろい。
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インド料理そのままのハリームが中華麺に合うのだろうか。しかもつけめんだなんて。
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麺は風味の強いアター入りをセレクト。しっかり茹でて、水で洗って締めておく。

ソニ:「つけめん! テレビで見たことがあって気になっていました。おもしろい食べ方ですね。レモンを絞ったらもっとおいしいと思います(辻村さんはもともと添えるつもりで、二人の心が通じ合った瞬間だ)。

仕上げに入れたガラムマサラは自家製ですか。香りですぐわかりました。挽きたてはやっぱり全然違います(また心が通じ合う)。

パキスタン人はハリームをロティ(チャパティ)などと食べますが、インド人はハリームだけで食べる。この中に豆や麦が入っているから。でも麺と食べるのもおいしいですね」

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ハリームと冷やした中華麺という組み合わせが意外とうまいんですよ。

ハリーム自体はインドやパキスタンの作り方そのままなのに、つけめんのスープとして成立しているのが実におもしろい。このとろみと味の濃さがいいのだろう。別盛りにした肉の存在感もラーメンっぽい。事前に肉をマリネしておくと、長時間煮ても味があまり抜けないそうだ。

これもまた楽しいカレーラーメンだ。ハリーム以外にもいろいろなカレー(広義)を用意して、麺の周りにたくさん並べたら楽しそうだ。

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ソニさんはベジカレーラーメンに挑戦

我々からのカレーラーメンに関するプレゼンを踏まえて、ソニさんが作ってくれたのは、なんとベジカレーラーメンだった。

ハラール料理よりもラーメンから遠いところにあるであろうベジ料理。野菜とスパイスだけで、この太い麺を受け止められるのだろうか。

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ソニさんが用意した野菜は、ダイコン、ピーマン、トマト、ニンジン、タマネギ、ショウガ、ニンニクなど。一体どんなラーメンになるのだろう。
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油でマスタードシード、クミンシード、唐辛子を炒めて、タマネギ、ニンニク、ショウガを加える。
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ダイコン、ニンジンを炒めたら、大豆から作られるソイミートを投入。ソイミートはどの宗教の人も食べられるので、学校や病院のような公共の食堂でもよく使われるそうだ。
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自家製のガーリックジンジャーペーストをたっぷり入れる。よく使うものだからこそ手作りして常備しているのだ。
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パウダースパイスはコリアンダー、クミン、ターメリック、唐辛子。インド料理はスパイスの種類をたくさん使うイメージだが、ベジ料理であればこれだけでだいたい作れるとのこと。
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今のところラーメンっぽさはまったくない。
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タマネギ(2度目)、ピーマン、グリンピースを加えたら、水を入れて軽く煮込む。
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汁多めのベジカレーが完成。

ソニ:「これはイスラム教徒だけでなく、ベジタリアンの人も食べられるラーメンです。でもノンベジの後だから味があまりしないかもしれません。

ショウガやニンニクはペーストだけよりも、刻んだものも入れた方がラーメンっぽいかなと思って入れました。もう少しスープの量が多いほうがよかったですか。

これは私が普段作るレシピではありません。二人が作るのを見て、初めて試してみたオリジナルのレシピ。さっきのネギ油を入れてもおいしそうですね」

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アター入りの麺を茹でて、ベジカレーをかけて、パクチーとライムをトッピング。こういう料理が世界のどこかにありそう。

明らかにこれまで見たことのないタイプのカレーラーメンに驚きが止まらない。辻村さんや私の発想にない一杯である。これはラーメンの延長線ではなく、具に麺を入れたベジカレーなのかもしれない。

肉類を一切使っていないのだが、これがしみじみうまい。軽いけれど深みのあるスパイシーなスープ、麺と一緒に食べる野菜の食感、ベジなのにノンベジの後でも物足りなさがまったくない。

カレーラーメンというお題に対して、まさかこんな回答が返ってくるとは。これぞ食文化の化学反応。こういう一期一会の料理との出会いが最高に嬉しいのである。

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スープの量や具の大きさなど、フォークで食べやすいラーメンであることに後から気が付いた。
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ノンベジのベジポタカレーラーメンも作ってもらった

最高のベジカレーラーメンを食べ終えたところで、「もう一つアイデアが出ました!」とソニさんが目を輝かせた。

ここにある材料をアレンジして、もう一つのカレーラーメンを作ってくれるらしい。

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なにかを思いついたソニさんが、ベジカレーをミキサーにかけた。
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油でクミンシード、シナモン、ブラウンカルダモン、クローブ、ベイリーフ、ターメリック、ガラムマサラを炒める。スパイスの種類が多いのはノンベジカレーにするため。
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油にポタージュ状のベジカレーを入れてベジポタスープを作り、さらに私の親鶏スープを加える。誰も教えていないのに、ラーメン界隈ではお馴染みのダブルスープ製法に辿り着いているのが凄い(興奮するところですよ!)。

ソニ:「玉置さんのスープと合わせてノンベジにしてみました。これならラーメンに見えますか?

でも味はさっきのベジカレーのほうが好みですね。煮干しの味が合わないのかも。もう少し酸味が欲しいから、途中で玉置さんが二杯目で使ったトマトのタレを加えるといいかもしれません(味変!)。

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マイダで作った麺を茹でて、ネギと青菜ではなく青唐辛子とパクチーをトッピング。

ソニさんが作る人生二杯目のカレーラーメンは、一気にラーメンへと寄せてベジポタと鶏のダブルスープ。理解力と応用力が本当に凄い。

これはこれでおいしいし、日本人の多くの人がイメージするカレーラーメンとしてはこっちが正解なのかもしれないが、ベジでこれだけの満足感が味わえるという驚きに満ちた一杯目のほうが私も好み。あるいは鶏スープで割らずベジカレーのポタージュだけで食べるのもうまそうだ。

それにしても、頭とお腹が大満足した異文化交流会だった。

■取材協力:ソニさん


食後にお茶をいただきながら、次はどんな食材や麺を使ってみたいか、保守的なイスラム教徒にどうしたらカレーラーメンを食べてもらえるかなどを真面目に話し合う。別にカレーラーメン屋を開く訳ではないのだが、こういうディスカッションが楽しいのだ。

私が「インドでラーメン屋さんをやったら流行るんじゃないですか」と冗談で言ったら、ソニさんは「人気になると思いますよ。でも私はこれからも日本に住みたいです。安全な国だから」と笑っていた。

ソニさん、ありがとうございました。またなにか作りましょう。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
美味しそう、というシンプルな感想しか出てこないのですが、ソニさんも「ンフフフ、超うまい~。」と言ってるので美味しいに違いありません。
タイ産の味の素やハラールしょうゆのラベルなど、知ってるブランドだけどちょっと違う雰囲気もたまりません。(林)

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