ホタルイカモドキというイカが気になる
私がホタルイカモドキの存在を知ったのは、確か富山県滑川市にあるほたるいかミュージアムだったと思う。ホタルイカの説明に「ホタルイカモドキ科」と書かれていたのだ。
ホタルイカモドキがホタルイカ科なのではなく、ホタルイカがホタルイカモドキ科というややこしさ。
なんでも日本ではホタルイカが先に発見されたので、後から見つかった似たイカをホタルイカモドキと命名したが、世界的にみるとホタルイカモドキに近い種が先だったため、このような逆転現象が起きているのだとか。
そんなホタルイカモドキって一体どんなイカなんだろうとずっと気になっていたのだが、捕獲経験のある富山在住の友人が貴重な情報を教えてくれたのだ。
なんでもホタルイカが接岸する3~5月よりも少し早い1~3月に比較的多く(多いといっても極少数で、ホタルイカの数がこの時期はまだ少ないのでモドキが目立つだけかも)、ホタルイカよりも一回り大きいくせに、すぐ弱ってしてしまうイカだそうだ。見れば明らかに違和感があるから、すぐにモドキだとわかるらしい。
その味をおいしいという人もいれば、まずいという人もいるとか。友人に言わせると「普通のイカ味」。なんだそれ。
ホタルイカの定置網にも混ざるのだが、ホタルイカモドキは漁師さんによってすべて取り除かれてしまうため、市場に出回ることはないそうだ。
二月の富山は寒かった
ホタルイカモドキ、聞けば聞くほど気になるじゃないか。商品価値はまったくないようだが、自分で捕まえなければ見られないレアな存在であるところにプライスレスな価値を感じる。
そこでホタルイカモドキと出会える可能性が高いと教わった二月に、新幹線で友人が待つ富山へと向かった。
ホタルイカおよびホタルイカモドキが接岸するのは夜。この日は気温こそ低めだが、波がなさそうなので狙い目だろうと予測して来たのだが、出迎えてくれた友人によると本日の予想最低気温は低めどころか氷点下。まさかの-3度とのこと。
しかも海に到着すると、予想以上に波があるという絶望的なコンディションだった。
こんな日に網を持って海に入っている物好きは他には一人もおらず、ホタルイカがピークの時期は湘南海岸よりも込み合う砂浜も貸切状態だった。
気持ちが高ぶっているので寒さは意外と感じない。一匹くらいはいるんじゃないかと一時間ほど友人と彷徨ってみたが、クサフグすらいない生命感が無の海だった。
北極圏のオーロラ見学と同じで、ダメな日はどうにもならないのがホタルイカ掬い。このまま粘っても疲れるだけなので、滞在を一日延長して明日の晩に掛けることとした。
のんびり富山観光
そのまま友人宅に泊めていただき、翌日は近場をふらっと探索して、しっかり昼寝をして夜に備えた。昨日に比べると気温がずっと高いので、今夜こそ期待ができそうだ。
でも夕方に目を覚ますと風がビュービュー吹いていて、またダメなのかと超絶不安になる。予報ではそろそろ穏やかになってくれるはずなのだが。昨日はその予報というものに裏切られたのだが。
お腹いっぱいにご飯を食べて、このまま酒でも飲んで寝てしまったら幸せだろうなと思いつつ出発の準備をしていると、明日は用事があって付き合えない家主が、「そういえばさっきホタルイカ漁師と話したんだけど、今朝の定置網に入ったホタルイカは3匹だけだったって。1匹300円の値が付いたらしいよ~」と絶望的な情報をニコニコと教えてくれた。
沖に設置した定置網で3匹。そこまでホタルイカがいないということは、そこに混ざるはずのホタルイカモドキも望み薄っていうやつですか。
だがそれはあくまで今朝の話なんですよ。ほらきっと今夜は今シーズン初の爆湧きだから。気の早いホタルイカハンター達も今日はたくさん浜にいるだろうねと、精一杯前向きな姿勢を見せつつ海へと向かう。でも万が一の空振りに備えて3月と4月のスケジュールの確認もした。