とりあえず生物の気配はある
海辺の駐車場は今日もガラガラだったが、夕方に吹き荒れていた風は予報通りピタっとおさまり、気温も昨日に比べて10度近くも上がっていた。
人は全然いないけど、やっぱり今夜は期待できそうだよねとニヤニヤしながらウェーダーを履き、ヘッドライトのスイッチを入れる。こういう遊びで一番盛り上がるのは得てして準備の時間だったりする。
ちなみに去年は4月のハイシーズンに来たけど、二日で一匹だけだった。ホタルイカ掬いは昼に食べたソフトクリームのようには甘くないのだ。
やはり気温が上がって波も穏やかになると、海の活性が一気にアップするようで、昨日は見かけなかった生物がいろいろいる。
もちろん目的はホタルイカとホタルイカモドキだが、捕まえられるなら食べる対象でなくても基本的に何でも楽しい。
ホタルイカモドキを発見した
「いたよー!」
一時間ほど散策しても結果が出ず若干不安になってきた頃、少し離れた場所で友人が声を上げた。急いで近づくと網の中には小さなイカがヒョコヒョコと動いている。
これは……ホタルイカの方かな。
よしよしよし、こうしてホタルイカがいるということは、きっとホタルイカモドキも泳いでいるはず。やっぱり今日は当たりの日なんだと気合を入れなおし、「HUNTER×HUNTER」で覚えた目にオーラを集中させる方法(凝)でターゲットを真剣に探す。
目力全開でしばらく歩いていると、巨大なクリオネが海面付近を泳いでいるのが見えた。いやクリオネが富山湾にいる訳ないし、ホタルイカにしては大きすぎる。違和感がすごい。
ということはホタルイカモドキか!
イカは鳥のように飛んで逃げる訳ではないので、焦りつつも冷静になって、動画用カメラの電源を入れて一呼吸置く。ふぅ。
波を立てないようにそっと近づき、謎の遊泳物体を網で掬って覗き込む。
ホタルイカよりも一回り大きく、明らかにシルエットの違うイカだ。色や光り方も全然違う。これは絶対にあいつだろう。
念のため友人に確認してもらうと、やはりこれがホタルイカモドキで間違いないのこと。よし!
やったー!とったー!すごい、すごい、すごーい!
こうして実物を見てみると、ホタルイカモドキという名前だがホタルイカっぽさは全然ない。大きいホタルイカではなく小さな普通のイカ。ヤリイカとかスルメイカ系。いや普通というよりはダイオウイカなどの深海系イカが持つ妖しさを感じさせてくれる造形と質感。
このイカに悪魔か宇宙人っぽさがすごい。あるいはゾンビ化してしまったイカ。ホタルイカデビルかスペースホタルイカかホタルイカゾンビと呼ばせてください。
細部を見れば見るほど魅力的なイカだが、明らかにホタルイカよりも弱りやすく、観察しているとすぐにダラーンとなってしまう。こいつの飼育は難しそうだ。
ようやく捕まえることができたホタルイカモドキが嬉しすぎて、同行の友人がびっくりするくらいハイテンションになってしまった。後で動画を見返すのがちょっと恥ずかしいなと思いつつカメラを停止しようとしたら、録画ボタンを押し忘れていたことに気が付いた。
ギャーーーーーー!
慌てて動画を撮り直したのだが、すでにモドキはグロッキー状態。貴重なホタルイカモドキの元気な生体映像(とハイテンションの私)を撮りそこなって超凹んだ。
でもそのあとすぐにもう一匹を発見し、今度こそ無事に撮影成功。やっぱり一匹目こそが嬉しいので、二匹目はそこまでテンションが上がらなかったけど、とにかく良かった。
先ほど載せた泳いでいるのと網に入った写真は、その時の映像からの切り出しでした。
ということでホタルイカとホタルイカモドキの捕獲から観察までを動画にまとめました。