はじめは見逃しました
最初に「牛とろ丼」を見たのは札幌のレストランだった。
へー札幌には変わった食べ物があるなー、くらいに思い、滞在中にいつか食べればいいやと通り過ぎたのだ。
それからしばらく牛トロ丼のことは忘れていて、サンドイッチを食べたりチャーハンを食べたりセイコーマートに行ったりして楽しく過ごした。
こうしてすっかり忘れていた牛トロ丼だが、この数日後に思いがけず食べることになる。運命ってほんとにあるのね、そう思った。
その前にちょっと札幌で食べたうまいカレーのことを紹介させてください。
カリーハウス「コロンボ」
そのお店は札幌駅からほど近い地下街の一角にあった。
カリーハウスコロンボは50周年を迎える老舗のカレー屋さんなのだとか。これを名物と言わずしてなにを名物と言おうか。迷うことなく入店。
お昼の時間の少し前に行ったらすでに満席だった。
お客さんはみな慣れた様子である。初心者の僕はみんなの動きを参考にして、直前に空いた一番端の席に座った。
こういうときは勢いが大切!とカツカレー大盛りをお願いしたところ
「ジャンボ(大盛り)は多いけど大丈夫ですか?普通でこれくらい、ジャンボだとさらにです。ルーが乗らないから別に入れますね」
と現物を示しながら説明してくれた。
なめてもらっちゃ困る、と思いながらも、見せてもらった普通盛りがすでに予想していた「普通盛り」ではなかったので素直に大盛りは撤回させてもらった。僕なんてしょせんその程度の人間なんです。
店内はカウンター席のみ。低い垣根を超えて厨房と対峙するレイアウトである。
僕は端の席に座ったのでカレーを待つあいだに厨房とお客との真剣勝負、みたいな図式をわくわくしながらながめられた。
ほどなくして僕の前にもカツカレーがやってきた。
これがもう最高だったんです。
札幌はスープカレーが有名だと思う。たしかに前に来た時に食べたスープカレーは「これぞ名物」という華があったし、展開の柔軟性からも人気店がたくさん出てきて当然だなと思ったのだ。
しかしコロンボのカレーを食べて(やっぱりこれがカレーだよな)とにやけてしまった。
カレーは誰が作ってもある程度おいしく出来るだろう。僕も料理が好きなのでそこそこ美味いカレーを作る自信がある。でも素人のカレーはわりとすぐに美味さの限界に達するのだ。
コロンボのカレーを食べて、こりゃかなわんわい、と思った。だって美味しいもん。無理だよこんなの作れない。50年の老舗に対して素人が何言ってんだ、という話ではありますが。
そういえば普通盛りのご飯は1合である。とにかく多いので一生懸命食べ進めていると、絶妙なタイミングでカウンターの中から「ルーかけましょうか」と聞いてきてくれた。
ナンのおかわりどうですか、はたまにあるが、ルーを足してくれるカレー屋さんはめずらしい。ちょっとだけ追加してもらって最後までバランスよく食べさせてもらいました。
コロンボ、全部が完ぺきなカレー屋さんでした。