特集 2024年6月18日

ミャンマーの国民的麺料理、モヒンガーを作ってみた

映像関係の仕事をしている平田悠子さんという友人が突然ミャンマーに渡り、数年して帰ってきたと思ったら、『一杯のモヒンガー』という短編映画を完成させていた。

モヒンガーとはミャンマーで人気の麺料理で、この映画はミャンマー発の料理バトルムービーだとか。予告編はこちら。本編は「ミャンマー語日本語 対訳! 一杯のモヒンガー」に視聴コードがあるそうです。

上映会でDVDを購入したら、モヒンガーのレシピが載っていたので、作ってみたら大変すぎておもしろかった。

趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

前の記事:羊の丸焼き(パキスタン式フルマトンロースト会)に参加した

> 個人サイト 私的標本 趣味の製麺

映画「一杯のモヒンガー」に出てくるモヒンガーを作ってみよう

モヒンガーはミャンマーの朝食に欠かせない国民食だそうで、ナマズスープの麺料理。このレシピは映画で主人公が作ったモヒンガーの元となった、Yin Yin Soeさんの伝統的レシピとのこと。

レシピを眺めてみたら、作業工程が26番まであって驚いた。しかもメインの材料は二種類のナマズと難易度は相当高い。これを見て実際に作った日本人はいるのだろうか。

もちろんわざわざ作らなくても、レシピを読んで理解するだけでも映画をより深く楽しむことにつながるのだが、せっかくなので挑戦してみよう。

002.jpg
ミャンマーNo.1のモヒンガー職人だった父が悪のモヒンガー秘密結社に殺され、その仇討ちで料理対決をするドラマチックな映画でした。
003.jpg
2017年に作成された短編映画。監督と脚本は日本人だけど、出演者は全員現地の人。
いったん広告です

まずミャンマー料理店で食べてみた

モヒンガーを作るにあたって、あまりにも味の想像がつかな過ぎたので、下手に勘違いしたものを作って理解した気にならないように、一度本物を食べてみることにした。

調べてみると、どうやら高田馬場周辺にミャンマー料理の店が多いらしく、ミンガラバーという店でモヒンガーが食べられるようだ。

004.jpg
これは2021年の話なので、いろいろ変わっていると思いますが、ここがミンガラバー。

メニューを確認すると、『モッヒンガ(温かい魚スープかけソーメン)』という名前でお目当てが載っていた。

英語表記だと『Catfish and Thin Noodles Soup』なので、魚はやっぱりナマズなのだろう。

005.jpg
口に出して言いたい言葉、モッヒンガ。

作っていただいたモッヒンガを食べてみると、天下一品のこってりくらいドロドロなのだが、それでいて軽い口当たりでおもしろい。

ナマズらしさはよくわからなかったが、魚の出汁が効いたおいしいスープと、細い米粉の麺がよくあっていた。

ランチタイムに食べてみたが、これは朝食に最適だろう。台湾で食べた麺線を思い出す優しい味。

006.jpg
トッピングの豆煎餅みたいなのもうまい。
007.jpg
いろいろなものが溶け込んでいるようだが、このとろみはどうやって出すのだろう。現地の人は箸ではなくスプーンで食べるようです。

 

いったん広告です

ナマズが捕れたので作ってみよう

いつかモヒンガーを作ろうと思いつつ、やっぱり面倒くさいよなあと先延ばしにしていたのだが、たまたま良型のナマズを捕まえる機会があったので、ようやく重い腰を上げて作ってみることにした。

008.jpg
立派なナマズが捕れたのだから、もう作るしかない。

もちろんナマズだけではモヒンガーは作れないので、足りない材料は高田馬場にあるミャンマー食材店で店員さんに相談しつつ購入。

普通に冷凍のナマズも売られていたので、ミャンマーでは一般的な食材なのだろう。

009.jpg
タックイレブンビルという建物にミャンマー関連の店が集まっていた。

 

いったん広告です

ナマズとレモングラスを煮る

まず内蔵を取ったナマズをよく洗い、ぶつ切りにして魚醤を加えて強火にかけて、そこに叩いて香りを立たせたレモングラスを加えて煮込む。

ナマズの臭み消しにレモングラスという組み合わせが新鮮だ。

010.jpg
レモングラスの香りが素晴らしい。

続いて『ナギナタナマズ』という種類のナマズをすり身にして、ニンニク、ショウガ、塩を加えると書かれている。

ナギナタナマズ?

調てみたところ、ナギナタナマズは英名でナイフフィッシュと呼ばれる、平べったい形をした東南アジアの淡水魚。ナマズではなく観賞魚として有名なアロワナの仲間の古代魚だとか。

011.jpg
これがナギナタナマズ。写真提供:さかまつき

探せばどこかで買えるのだろうけれど、冷凍庫に眠っているタチウオがあるので、薙刀の代わりに太刀を振るうことにした。

生物学的な分類上は遠いかもしれないが、刃物という点では同じである。

012.jpg
これが俺のナギナタナマズだ!

だがタチウオだと思って解凍した魚はウツボだった。

ナイフのような鋭い歯を持っているからこれもナイフフィッシュだよねと自分に言い聞かせて、とりあえず進めることにする。

013.jpg
もうなんでもいいか。
014.jpg
本来は重量感のある石のすり鉢とすりこぎですり身にするのだが、さすがに持っていないので中華包丁でよく叩いた。
いったん広告です

乾煎りした小麦粉を濾す

この次の工程が謎だった。小麦粉(米粉を使う場合も)を香ばしくなるまで乾煎りして、水で洗って濾すというのだ。しかもそれを三回繰り返すと書かれている。

レシピは写真付きなのだが、乾煎りした小麦粉を溶いたドロドロの液体を器に流し込んでいる。この器がザルなのかはちょっとわからない。

015.jpg
とりあえず小麦粉を乾煎りする。
016.jpg
香ばしい香りがしてきた。
017.jpg
これを水で洗う。水に溶ける粉状のものを洗うってどういうことだ。
018.jpg
ザルで濾してみたら、焦げがダマになった部分以外は全部落ちた。これでいいのだろうか。

実際にやってみても正解がまったくわからないのだが、おそらく香ばしさと粘度をスープに加えるための作業なのだろう。

なにを三回繰り返すべきかわからなかったので、とりあえず次へ行こう。

※後日、平田さんに確認したところ、精製度の低い現地の小麦粉に含まれるゴミや焦げを取り除くために濾すということで、日本で市販されているような小麦粉であれば、乾煎りして溶くだけでいいそうです。

⏩ 二種類のナマズをスープに加えるというダブルナマズ製法

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ