さて、このオブジェがあるのは、どこの本社でしょうか?
企業の本社ビルといえば、やはりオブジェだろう。ビルの前とかエントランスにどーんと据え置かれがちなアレ。
アーティストの作家性が前面に出た難解なものとか、企業精神を象徴するものなど色々あるが、個人的には、メーカーが自社製品をイメージしてる、分かりやすいやつが好きだ。
見たらだいたい「あー、そういう業種だな」とイメージできて、親しみやすいし。
実際、オブジェを見ただけでどの企業の本社か当てられるんじゃないだろうか?
分かりにくい方の本社オブジェ例
さて、分かりやすいオブジェを見る前に、逆に分かりにくい例も挙げておこう。
有名どころで、まずはこれだ。
都内在住者はわりとご存知、大手町周辺の超有名ランドマーク。この辺で働いてる知人も「赤マカロニ」って言ってた。
うん、これだけだと、知らない限りはなんの企業かぜんぜん分からない。
ぶっちゃけ、初見だと「トマトソースのマカロニが冷えて固まったやつ」にしか見えないし、むしろそれ以外の見方をするのが難しいレベル。
ちなみに正解は東京サンケイビル=産経新聞(ほかサンケイグループ)本社である。
正解はサンケイビル。オブジェ前に人が並んでいたのは、広場に来てるフードカーがお目当てだった。
ランドマークとしては目立つし、アートとしての完成度も高いのかもしれない。しかし、僕のオブジェ嗜好からすると0点だ。
サンケイビルが日清フーズ(マ・マー)やニップン(オーマイ)の本社なら大納得なんだけど。マカロニがパスタメーカーのオブジェに相応しいかはさておき。
本社オブジェ当てクイズ(初級編)
じゃあ、どういうオブジェが好ましいかというと、こういうやつ。
うん、非常に分かりやすい。
この形に見覚えはないだろうか。子どもの頃に使っていたアレですよ。
かなり直接的…というか、ぶっちゃけ製品そのものである。
さらにいうと、他にもこの製品を出している同業メーカーはあるんだけど、先端形状の違いによってメーカーの特定ができる人はいるだろう。僕とか。
植栽を囲むように配置されたクレヨンと、「Pentel」のロゴ入り地球。クレヨンの長さが少しずつ変わっているのもいい。一番長いのは使用頻度の低い白あたりか。
周囲にオフィスビルが建ち並ぶ中でも、わりと目立つ感じに立派なぺんてる本社(日本橋蛎殻町)
クイズといいつつなんのタメもなくキャプションで正解を出している(以降もこんな感じ)が、答えは文房具メーカーのぺんてる本社前にあるオブジェ。
つまり、あの柱はぺんてるの「ぺんてる くれよん」を表しているのだ。
ぺんてるのクレヨンは少し先細りで、正面から見るとかなり背の高い台形になっている。同じくクレヨンのメジャーメーカーであるサクラクレパスのは台形部分が低く、海外最大手であるクレヨラは逆にもっと尖っている。
「ほら、ぺんてるのクレヨンの形でしょ」とドヤ顔するために比較写真を作ってみたが、せいぜい「サクラと比べたら近いかも」レベルだった。恥ずかしい。
クレヨンが地球を囲んでいて、なにかこう「俺らのクレヨンで世界を囲いこむぜ」的な、覇気のようなものも感じられる(勝手にそう感じてるだけだが)。
こういうのも本社オブジェの醍醐味の一つと言えるだろう。
ちなみにもうひとつ、文房具メーカーの本社オブジェとして知られているのが、三菱鉛筆本社の脇を通る小径沿いにある、6台のベンチ。
こちらは、2018年に三菱鉛筆が新社屋を建てたタイミングで作られたものである。
三菱鉛筆本社東側にある、地元民か三菱社員か文具マニアしか通らない小径に設置された、オブジェ的なベンチ。
一見、石造りでなんの変哲もないベンチに見えるんだけど、端から順番に追っていくと……
木材に溝を掘って、芯を入入れて、木材を被せて貼って、六角に削りあげて…鉛筆の完成だ!
実はベンチの端で、鉛筆ができるまでの流れを表しているのだ。
なかなか気が利いているし、なにより、いかにも鉛筆メーカーらしさ満点のオブジェだろう。
ちなみにこの小径自体も「えんぴつロード」という愛称で地元の散歩道として人気、とのことである。
本社オブジェ当てクイズ(超初級編)
もっと分かりやすいところだと、この銅像は見間違いようもないアレで。
見た瞬間に全日本国民の脳内で戸田恵子の声がするやつ。
どこかの児童館と言われても違和感無い雰囲気だけど、ここは天下のフレーベル館。
ここがなんの本社かというと、当然のように「アンパンマン」を始めとした児童書の出版社、フレーベル館である。
自社を代表する製品…というかキャラクタなので、このオブジェはまったく正しい。
むしろ分かり易すぎてちょっと物足りない感じがするほどである。
なんの気なしに裏側に回ってみると、おお、こんなところに作者のサインが彫り込まれている。
ちなみにおもちゃメーカー バンダイの本社横にもアンパンマン像はあるけど、それはプラ製。
対してフレーベル館が銅像なのは、やはり本家本元の気合いというべき部分なんだろうか。
こちらはバンダイ本社横の「キャラクターストリート」と名付けられた通り。アンパンマン以外にもいろいろ見知ったのがいるなぁ。
あと、アンパンマンのアニメ製作を手がけるトムス・エンタテインメント本社前はこんな感じ。
御影石製のドキンちゃん・しょくぱんまん・カレーパンマン。なんか珍しい3ショットな気がする。そして墓石っぽい。
アンパンマンは社内の内側にあるベンチに鎮座。主人公だから椅子にゆったり座れるのか。
あれ?なんかあちこちの本社でアンパンマンがオブジェ化されてないか。
だとすると、アンパンマンのオブジェだけ見て「どこの本社か」を当てるの、逆に難しかったのかも?
それにしても、これだけいろんな企業で奉られるのって、すごいなアンパンマン。お腹が減ってる人だけじゃなくて、経済的にもヒーローなのか。
本社オブジェ当てクイズ(中級編)
さて、少し難易度を上げて、こちらのオブジェはどうだろう。
一見すると「なにこれ?」なんだけど、よく見ると「あー!」ってなる感じがとても好きだ。
エントランスにあるので、この企業を訪れた人はたぶん全員が「あー!」って言うんだと思う。
さあ、この赤い格子に見覚えはないか。
定礎の近くにあるこれも、実は本社オブジェと呼べるものだ。
ヒントとしては、上写真のオブジェが製品デザインで、下写真のオブジェがその原料である。
少なくとも、この製品を見たことがないって人は、まずいないんじゃないだろうか。
ということで、正解はこちら。
赤い格子でお馴染み、キユーピーマヨネーズ!(あー!)
宮下公園から宮益坂上に抜ける途中にあるキユーピー本社ビル。
渋谷にあるキユーピー本社のオブジェである。つまり、あの赤い格子状のものは、「キユーピーマヨネーズ」のパッケージの柄、というわけ。もちろん、タマゴのオブジェはマヨネーズの原料ってことで。
なんかこちらも見覚えのあるお姿が。
ちなみに本社前から見上げると、窓際に立つキユーピーちゃんの後ろ姿も拝むことができる。
さて、中級でもうひとつ。
このオブジェはわりと有名なので、もしかしたら見たことがあるという人もいるかも。
銅像ががっつりランニングシューズ履いてる、というのもやや珍しい気がする。
「絆」と刻まれた台座もなかなかのヒント。
企業の製品を表すものではないんだけど、でも、その企業が共催している一大イベントを象徴している像である。
あと念のために言っておくと、ここは江崎グリコ本社ではない。
読売新聞本社ビル。オブジェは正面から右側に回り込んだあたりに建ってます。
そう、ここは毎年1月に開催される「箱根駅伝」の復路ゴール地点、大手町の読売新聞本社である。
オブジェの名前はズバリ「絆の像」で、箱根駅伝開催90回を記念して建てられたもの。ゴールテープを切るランナーの歓喜の表情を表しているそうだ。へー。
本社オブジェ当てクイズ(上級編)
次はオブジェというか、本社の社屋そのものがオブジェ扱いになっている、というもの。
意味が分からないかもしれないが、いや、見たら分かるって。
今回はいきなり本社ビルからスタート。この辺りを歩いてると、突き出した円柱がやたらと目を引くのだ。
ごく普通な四角いビルなんだけど、そこをくびれのある円柱の塔がドーンと猛々しく突き抜けている。どうだろう、このインパクトありすぎな見た目は、ある意味オブジェといってもいいんじゃないだろうか。
問題は、この円柱がいったい何を表しているか、という部分である。
そそり立つ円柱の根元が本社ビルの入り口。
正解は、「コンドーム」でお馴染み、竹橋にある不二ラテックス本社だ。
つまり、この円柱は自社製品を装着した状態をイメージしているわけで。
なかなかに「マジかよ」という気分にさせられるが、
「建設時の社長はもっとリアルにしたかったが、皇居が近いためにリアルさは抑えられた」(Wikipedia「不二ラテックス」より引用)
あの中はどんな感じになってるのか、気になる。最上階は社長室だったりするんだろうか。
…という、さらに「おいおいマジかよ」な情報もある。
確かに150mほど行けば皇居のお堀に行き当たる場所ではあるんだけど。
しかしそれでも、気にせずにやりきったバージョンの社屋も見たかったような気はする。
円柱+四角いビルの組み合わせで、しかもすぐ近くにあるから、絶対に関係あると思ってた。
あと、このコンドームビルから少し行ったところに、似たような建物がもうひとつある。
「不二ラテックスアネックス(別館)?」と思ったが、こちらはなんの関係もないビルのようだ。
(単にラテックスアネックスって言いたかったから紹介してみました)
本社オブジェ当てクイズ(超級編)
最後に残るは、最高難度のオブジェである。
東京駅八重洲口を出て、日本橋三丁目交差点にある、こちらの巨大なキリンのオブジェ。
これがあるのはどこの本社でしょうか?と聞きたいところだが、実は、正解の企業は別の場所に移転済み。ビルの前にキリンだけが残されている状態なので、正しくは「どこの本社だったでしょうか?」なんだけど。
東京駅の八重洲口を出て少し歩くと、だいたい確実に目に入るキリン像。ビル現在、不動産業のスターツグループが本社として使用している。
キリンの特徴のひとつである、前肢付け根の膨らみ(関節が他の偶蹄類より前にせり出してる)も再現。
正解は、漢方薬品メーカーのツムラ。あと、バスクリンとか。
由来を検索すると「キリンが『漢方の王様』として知られているため、王冠をかぶったキリン像を建てた」という話が出てきた。
なるほど、ツムラといえば漢方薬の国内トップメーカー。漢方の王様が王冠かぶってるなら、たしかに相応しいオブジェだなー、と一旦は納得した…んだけど。
王冠かぶって呑気な顔してるけど、結局オマエなんなんだ、という謎が残った。
「キリンは漢方の王様」という部分を調べても、それっぽい話がまったく出てこないのである。キリンが漢方薬の材料になったという話でも無さそうだし。想像上の動物である麒麟の方も別に漢方は関係ないし。
とりあえずツムラのサイトから「キリン像の由来」について質問メールを送ってみたんだけど、そちらも今の時点で返答無し。
つまり、製品を表しているようで実は由来があやふや、という意味で難度マックスになっているというわけだ。
この企画のために改めて調べてみると、こういった本社オブジェ、昔よりもかなり減っているように思う。
特に都心では、固定資産税や管理費の関係で、自社ビルを廃して賃貸オフィスに入るというケースがどんどん増えている。で、その結果、賃貸だからオブジェが置けない、ということに。
つまりは「うちのマンション、賃貸だから壁に釘を打てない」みたいな話だろうか。
逆に言うと、本社オブジェのある企業は、今のご時世で自社ビルを維持できるだけの安定した体力がある、とも考えられる。
株を買うなら本社オブジェのある企業、という考え方もありなんだろうか。株やったことないから分かんないけど。
本社オブジェの話をしてたら、知人が送ってくれた写真。エイベックス本社の受付はあのロゴの形をしている。
確かに受付というよりはオブジェ要素強い。