「チュアカイ」はベトナムのスパイスです
たしか横浜中華街のスパイス屋さんだったと思う、「チュアカイディップソルト」という見たことないスパイスを見つけたので買った。知らないものは買ってみなさいという教育方針で育った(ただし500円以下に限る)。
原材料名を見ると「砂糖、塩、赤唐辛子、ねぎ、ブラックペッパー」と書かれていた。それなら美味そうだし何にでも使えそうじゃないか。この並びで日本人の僕が思い浮かべるものといえばせんべいだろうか。この粉、せんべいなのか。
パッケージには
「酸味」×「辛味」の味付けを果物や野菜等に。
とだけ書かれていた。辛味はわかるが、上の原材料のどこから酸味が生まれるのか。ねぎが野菜庫の隅で発酵しているのだろうか。
まずはちょっとだけそのまま舐めてみた。
これがとても美味しかったのだ。
ただの塩ではない。甘味と酸味、辛味のバランスが実に絶妙。ネギの青臭さだろうか、目を閉じるとアジアの風がふわっと頬をかすめる。予想したせんべいではなかったが、これはいわば粉のお菓子である。すごくいいものを見つけてしまったかもしれない。
果物には合うのか
この美味しい粉の実力を発揮させるため、パッケージに書かれていたとおり果物に付けてみた。そんなのぜったい美味しいだろう。
柿につけて食べてみた。
……うん、
前にライター地主さんがフルーツにチリパウダーをかけると海外の味になる、という記事を書いていたのを思いだした。
正直この「チュアカイ」も同じような感じかな、と思っていたのだ。ほら、スイカに塩をかけると甘さが引き立つというではないか、あの原理である。
しかしぜんぜん違った。
よく熟れた甘い柿にすっぱ辛い塩が絶望的に合わない。それどころかピリッとした刺激が舌をよそ見させ、その隙に味がわからないままの柿が胃に収まっていくのだ。まてよ!おれまだ味わってない!
実はこのあとでパイナップルにも付けてみたのだが、やはり合わなかったので、パッケージに書かれていた「果物に合う」という説はいったん保留とさせてもらう。もちろん僕個人の感想なので異論は認めますが、わりと大多数の人が僕についてきてくれると信じています。
野菜にはどうか
次は野菜である。この粉、甘いものには合わないが、野菜にかけたら一気に美味くて子どもの野菜嫌いが直ったりして。
トマトにはそのままだとノリが悪いかと思い、マヨネーズに混ぜてつけてみた。この見た目で美味しくないなんてことあるわけないだろう。
マヨネーズと混ぜるとチュアカイの良さが消える。これが今回の重要な学びである。
マヨネーズ本来の深みと豊かな酸味が、チュアカイのうま味を完全にブロックしていた。あとにネギの青臭さみたいなものだけが漏れて残る。試しに粉だけの状態でキュウリにも付けてみたが、今度は酸っぱさが前に出てきてすぐにマヨネーズを足した。
肉はどうか
次は肉料理に使ってみることにする。こういう知らないスパイスは肉にまぶして焼くと本領を発揮するものなのだ。そうに違いない。
鳥のもも肉をコショウとチュアカイで焼いてみる。
本筋とずれるが、このくらいの少量の肉を焼くときにはホットサンドメーカーが便利である。ライター松本さんの言うように(記事「ホットサンドメーカー=オーブン説」より)、オーブンで焼いたみたいにジューシーかつカリっと焼ける。
途中からものすごくいい香りがしてきたが、これは単にもも肉を焼いた香りだろう。果たしてチュアカイは肉料理の美味しさを引き出してくれるのか。
食べてみた。
チュアカイをかけて焼いた肉は美味しかった。しかしどうもチュアカイ本来の良さが生きていないように思うのだ。甘酸っぱさが感じられなくなり、これなら塩でいいんじゃないかと思う。
他にもいろいろ試してみたのだけれど、僕にはいまだ「これぞ!」というマッチングが見つけられていない。中でも特によしてもらいたいチュアカイの使い方がこちらである。
だってさつまいもご飯ってゴマ塩かけると美味しいじゃないですか。あの流れだと思ったのだけれど、チュアカイの酸っぱさが悪目立ちしてしまっている。東南アジアでたまたま見つけた日本食屋さんに入ったら全部のメニューがなんとなく現地風にアレンジされていた、みたいな感じ。
何に加えても和解できない感じなのだ。コミュニケーション不足あじ。
一番美味しい食べ方はこれだ!
というわけで振り出しに戻るが、僕が今のところ提案するチュアカイの一番おいしい食べ方がこちらである。
このスパイスに関しては料理に使うんじゃなくてそのまま舐めるのが一番うまいのである。おいおい、と思うが本当だから仕方がない。
これからも探し続けます
一通り試したあとにネットでも調べてみたのだけれど、やはりいまいち正解といえるレシピが出てこなかった。みんな買ったはいいが使い道に困っているんじゃないだろうか。そのまま舐めてほしい。
とはいえ粉はまだ9割がた残っているので、これからもそのまま舐めつつ、いろいろなものにもかけてみたいと思います。