さすがに続編はやめておきます
全国の20人の方々は「麹町駅はどうした」「住吉駅は?」「地下鉄関内駅を忘れてもらっては困る」「初台こそ」「いや、桜新町だ」とおっしゃることだろう。分かっている。上下ホームはまだたくさんある。
いつもだったら、これらもいずれ見て回ってあらためてレポートしたい、と言って締めるところだが、さすがに2回目を書くのがはばかられるほどの分かりづらさだ。やめておこう。
ホームの両脇に別々の方面に向かう列車の線路があるタイプではなく、2つのホームに挟まれたところに線路があるタイプでもなく、上の階と下の階に分かれているタイプの地下鉄駅が、なぜか好き。
なぜ惹かれるのだろう。
自分でもよく分からないので、魅力的な上下に分かれたタイプの駅をめぐりながら考えました。
あらかじめ申し上げておきますが、すごーーく共感を得づらい内容です。
とりあえず、そういうぼくが惹かれるタイプの地下鉄駅を「上下ホーム」と名付けよう。たぶん正式名称があるのだと思うが。
で、ぼくがよく使う上下ホーム駅をまずは見ていただきたい。都営地下鉄三田線の三田駅である。
こういうことです。
と、言ってみたものの、すごぶる分かりづらい。写真を見ても全然伝わった気がしない。以前書いた「この駅での乗り換えが好き」というやつより分かりづらい。
こんな分かりづらい記事を書いて良いものだろうかとけっこう悩んだ。せめて分かりやすく写真を撮ろうと頑張った。
しかし地下で上下に空間が分かれているということは、両方いっぺんに写真におさめることができないわけで、それぞれ別個に撮ってこうやって並べるしかないわけだ。そうなると、このように「同じような写真が並んでいるだけ」になる。これはもうしょうがない。
ただ、まさにこの「見た目が一緒」であることがぼくが惹かれる理由じゃないかと思った。つまり「どっちのホームにいるか、空間の感じだけでは分からない」ということに、なんでだかぼくはわくわくするのだ。
たぶん。
「たぶん」などと弱腰になったのは、「どっちのホームにいるか、空間の感じだけでは分からない」ことは、ぜんぜん「惹かれる」の理由になってないから。
要するに、自分でもよく分からないのだ。なんでぼくは上下ホームが好物なのでしょうか。
本来であれば、なぜ駅によってホームと線路の位置関係が異なるのか、それぞれのメリットとデメリットなどについて解説すべきかもしれない。上下ホームはおそらく利用できる土地の問題と、工法の関係からそうなっているのだと思う。
しかし、今重要なのはそういう小難しい話ではない。本記事は、いくつかの上下ホームをめぐり「なんでぼくは上下ホームが好物なのか」をおのれに問いかけた記録ということになります。
ということで、原点に立ち返り、ぼくが最初に「上下ホームっていいな」と思った駅に行ってみよう。東西線の神楽坂駅である。
実家が西船橋のぼくは、通勤や買い物などで日常的に東西線を利用していた。最もなじみのある地下鉄である。高校生ぐらいのときに、この駅に降り立ち(なんの用事だったのかは思い出せない。もしかしたら乗り過ごしたのかもしれない)、この上下っぷりに「おっ」と思ったのだ。
ホームの両側に線路がある(島式)わけでもなく、線路の両脇にホームがある(相対式)でもない。まるで単線のような佇まいにぐっときたのだと思う。
それにしても、やっぱりこれ写真並べたところで全然伝わらないな。
上のように手前と奥の階段がそれぞれ行き着く深さが違っている、というだけでぼくは「こういうのなんかいいー!」って盛り上がるのだ。
って、説明すればするほどどんどん伝わらなくなっていく気がする。
もうしょうがない。「なんか分かるかも」っていう方だけ読み進めてください。そういう方が果たしていらっしゃるのか疑問ですが。たぶん全国に20人ぐらいいると思う。
さて、その20人の方々は「上下ホームといえば赤坂見附駅だよねえ」とおっしゃるはず(そういう声が聞こえた)。そう言われてぼくも気がつきました。そうだ、確かに赤坂見附駅は上下ホームだ。
でもなあ、なんか、違うんだよなあ。
上下ホームの形式をとっている銀座線と丸ノ内線をドッキングさせたら結果的に「島式」になった、と言えばいいだろうか。
これは以前香港の地下鉄を愛でる記事(→「香港は撫でまわしたくなる街だ」)でも書いたが「対面乗り換え」という方式らしい。乗り換えが便利なのだ。子どもの頃、両親に連れられて新宿に行ったりするとき、銀座線から丸ノ内線にこの駅で乗り換えたものだ。ホームの向かいに乗り換える列車がいて「なんて便利なんだろう!」とそのたびに思った。
でもなあ、上下ホームとしてはなんか、ちょっと、違う気がする。結局見た目は島式だし。ざんねん。
上下ホームに感じている魅力が何なのかを説明しきらないうちに「違うんだよなあ」などと言って例外を紹介するのもどうかと思うが、違うんだよなあ。 申し訳ないけど。誰に向かって申し訳ないのかよく分かりませんが。
「申し訳ないけど違うんだよなあ」のついでに「ぼくが惹かれる上下ホーム」の定義をもうちょっとはっきりさせたい。
「ちょっと違うんだよなあ」の特徴から逆算して「なぜ惹かれるか」が見えてくるかもしれない。
その1。まず、地下であること。
三田駅も神楽坂駅も地下鉄だった。だから惹かれる。ぼくのなじみがある他の上下ホーム駅に、京急蒲田駅や京成青砥駅などがあるが、両者ともなんかちょっと違う。それは地下じゃないからだ。
逆に、線自体は地下鉄線ではなくても、駅が地下なら惹かれる。りんかい線の大井町駅とかいいよね。
その2。上下のホームそれぞれ線路が一本だけ、なのがいい。
これは赤坂見附が「ちょっと違う」理由だ。同様の理由で小田急線の下北沢駅も、上下と言えば上下なんだけど、島式なのでやっぱりちょっと違う。
まだ工事中だった2012年に現場の様子を見せてもらったことがあって、その光景がとてもかっこよくて、すっかり下北沢駅のファンになってしまっただけに、この「ちょっと違う」は残念である。
あまりに地味な写真が続いたもんだから、派手なものを入れて記事に彩りを、と思ったのだがどうだろう。
下北沢と同じように「好きなんだけど、上下ホーム的には残念ながら違う」のが北千住駅である。
各線入り乱れた巨大駅でかつ地下ではないので(地下にホームはあるが、全部が地下ではない)、今回愛でるべき上下ホームではない。
でも、北千住、良いんだよね。
歴史ある北千住駅なので、これはきっと昔線路だった土地に建った「トレインハウス」に違いないと思ったが、どうも違うようだ。(参考→「線路跡に立つ不思議な建物『トレインハウス』を見に行った」)
閑話休題。北千住の魅力について語ったのは、記事の彩りのためだけではない(彩りになっているかどうかあやしいが)。
じつは、ここ北千住駅から地下鉄千代田線に乗ると(前記「トレインハウス」の下を走っている)、隣の町屋駅から、なんと実に4駅に渡って正統派の上下ホーム駅が連続するのだ。
素晴らしい。4連続上下ホームとは。他にこれほど連続して上下になっている地下鉄線はないのではないか(あったら教えてください)。
で、これだけ並ぶと「おや」と思うことが出てくる。前2つの町屋駅・西日暮里駅、と、後2つの千駄木駅・根津駅では、ホームと線路の並びが逆だ。
写真はすべてホームの大手町方面側の端っこから撮っている。前2つは向かってホームが右・線路が左だが、後ろ2つでそれが逆になっているのが分かるだろう。
たぶんこれは地上出口を地下鉄が通っている上の道路のどちら側に作れるか、などによるのだろう。特に西日暮里駅は「道の上の駅がすごくいい」で書いたように、地形的にアクロバティックな場所にあるので、それが影響しているのかもしれない。
最初の方で、なぜ上下ホームになるのかという小難しい話はどうでもいい、みたいなことを言ってしまったが、こうしてみるとやっぱり地面の問題(土地所有や地形)を考えてしまう。
もしかしたら、地下にいながらそこから見えないはずの地上の事情が空間としてなんとなく感じることが出来てしまうから、上下ホームは面白いのかもしれない。上の地図などを見ると、なおさらそう感じる。
どうだろう。こじつけかな。ちょっと理屈っぽすぎるだろうか。自分の嗜好こそ一番の謎だな。
全国の20人の方々は「麹町駅はどうした」「住吉駅は?」「地下鉄関内駅を忘れてもらっては困る」「初台こそ」「いや、桜新町だ」とおっしゃることだろう。分かっている。上下ホームはまだたくさんある。
いつもだったら、これらもいずれ見て回ってあらためてレポートしたい、と言って締めるところだが、さすがに2回目を書くのがはばかられるほどの分かりづらさだ。やめておこう。
DPZでも何回か記事にしている、こちらもぼくの特殊な趣味。ジャンクション鑑賞。12年ぶりに写真集になりました! 詳しくは→こちら
自分でいうのもなんですが、いい出来映えです。みなさん、ぜひ。
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