GPS地上絵で体力の衰えを実感
今回こんなにしんどかったのは、たぶん加齢のせいだ。最初のGPS描き初めは2011年の「卯」だった。もう8年前。あと3回「子」「丑」「寅」で干支を一周するが、これは体力をつけないとまずかもしれない。
(顔チームの写真は@zhenmeimaoさん、@hirechopさんにいただきました、ありがとう!)
ぼくは、移動の記録をするGPSロガー(スマホでも可)を持って歩き、そのデータで絵を描く「GPS地上絵」という遊びをときどきやっている。
「GPS描き初め」とは、その手法で年始にその年の干支を描くこと。去年は東京は大森に子犬を描いた(→「GPS描き初め2018・山王子犬」)。
で、今年の干支「亥」。今年も描き初めました。
まずはとにかくそのGPS描き初め「亥」の成果をご覧ください。
今年の干支・イノシシ。全長5kmのウリ坊。2チームに分かれて描き初めた、GPSログを航空写真に乗せて動画にしたもの。
地図で見るとこんな。大阪は泉北の地にこんなに大きなウリ坊がいるとは。
かわいい。かわいいといっても体長約5kmとウリ坊にしては破格のサイズだけど。
毎年、参加者を募って描いていて、場所はだいたい東京なのだが、今回見つけたウリ坊は大阪は泉北。自分でコースを設計するのだが、どこに見つかるかはそのとき次第なのだ。
大阪か。しょうがない、描きに行くか。
募集ツイートでは「誰も来なかったらひとりで描きます」と言ったものの、今回の道のりは20kmを超えている。初めての慣れない土地でこれを全部歩ききるのは、正直、きつい。なんせ迷子が許されないのだ。散歩じゃなくて絵を描くのだから。間違った道はログに残ってしまう。
と、心配だったのですが、この意味不明な催しを面白がってくれた方々、計9名が集合してくれました。ありがたい。大阪まで出張した甲斐があった。きっとみなさんの今年一年は良きものになるでしょう。イノシシが祝福してくれます。
ぼくを含めて合計10名。これだけいれば2手に分かれて描くことができる。よかったよかった。
二手に分かれても、それぞれ10kmを超える道のり。それなりに気合いを入れていかねばならぬ。
で、それぞれのチームはこうなりました。
尻尾チームの男臭い感じが気になります。当然ぼくは尻尾チームです。
まるで中学生のように男女に分かれちゃいました(最近の中学生はこういうふうにならないという話もありますがほんとか)。狙ってそうしたわけではなく、集合場所に集まったときに並んでいた右半分と左半分で分けたらこうなっちゃった、というだけです。
いでたちからして顔チームが明るいお召し物が目立つのに対し、尻尾チームはなんだか色が黒い。
ぼくも含めてお互い初対面の方も多く「男女混ぜましょう」みたいな合コン的な調整をする雰囲気でもなく(合コンいったことないからわからんけど)、結果こうなりました。
さて、道中の様子をレポートしましょう。まずはぼくも所属していた尻尾チームから。尻尾チーム、すごく楽しかったんですよ。顔チームも楽しかったと思いますが。
上の団地での写真がじつは我々チームの描き初めスタート地点。耳の付け根です。
じつはこのウリ坊、ニュータウンを住処ととしていまして、スタート地点のここもさることながら道中魅力的な団地をたくさん見ることができて、団地マニアのぼくはたいへん楽しかった。
団地マニアというぼくの素性を知っている参加者のみなさんは「やっぱり団地がたくさんあるからこの街で描くことにしたんですか?」と当然の質問をしてきましたが、そんな公私混同はしません。どっちも「私」だけど。
というか、GPS地上絵の設計はこれがけっこうたいへんで、日がな一日地図とにらめっこして「どこかにいい絵はないか」と、地上絵の神様が降りてくるのを待つ日々からはじまるんです。道の形が何か動物などの体に見えてくるまで、1週間ぐらい暇さえあれば地図を見る。そういう感じで設計がきまる。
描き初めはモチーフが決まっているという制約があるので、その上場所まで選り好みはとうていできないわけです。偶然です、団地地帯になったのは。
ただ、団地の神様が粋な計らいをした、という可能性はあります。というのも今回参加してくれた方の中に、もうひとり団地趣味の人がいまして。
その気のない人には信じられないかもしれませんが、この世には団地趣味の人というのがちらほらいまして。特に関西の団地趣味界隈は充実の人材を誇っているのだ。
この小山さん(@watertowerUC)は、なかでも給水塔に特化しておられ、長年全国の団地給水塔を追いかけてきたその道の第一人者。先日その名も「団地の給水塔大図鑑」を出版した尊敬すべき人物なのだ。
急に団地仲間の宣伝のようになってしまったが、ほんとうにこのコースも、彼が参加してくれたのも偶然である。それにしても小山と大山を並べると団地漫才コンビみたいですが、これも偶然です。というか、団地漫才ってなんだ。
閑話休題。
これ以上団地の話はぐっとこらえるとして、尻尾チームの道中の見所はあとふたつ。池と地形だ。
地図で見てもわかるのだが、泉北のこの地域は実にため池と調節池が多い。
このエリアは、古くから水不足に悩まされてきたところで、それでため池が多い。
きわめつけはこれだ。
なんとこの「狭山池」はダムで、実に西暦616年に造られたというもの。
体の各所に調節池とため池を配する、なかなか見所の多いウリ坊である。
で、もうひとつの見所が地形。見所、というか、アップダウンにたいへん疲れた。
「せっかく登ったのに降りるの繰り返し」はGPS地上絵ならではである。ふつうこういう移動はしない。散歩であってもこんな徒労感あふれるコースは選ばないだろう。「絵を描くため」という、目的地に到達するための移動ではない動きは、時にこういう動きを描き手に強いる。
醍醐味と言えば醍醐味なんだけど、正直、つらい。
地図上では上の写真の藪の先に道があるはず。その先の崖っきわがゴール地点だった。崖の下に「顔チーム」がいて、両者のログが断崖絶壁をはさんでつながる予定だったのだが。さすがに危険だったのでここで終了とした。
こんな感じで、崖の下に移動し顔チームと落ち合って「いやー、尻尾チーム、坂たいへんだったよー」なんて苦労自慢(自分で設計しておいてなんだが)。
ところが、顔チームの話を聞いたら、こちらの坂ぐあいもなかなかすごかったようだ。以下、顔チームメンバーが撮ってくれた道中の写真をご紹介しよう。
写真を見ただけでそ顔チームの過酷さがわかる。
実際、地形図にログを重ねてみたら、こんなだった。
上の標高グラフを見ると一目瞭然だ。よりによって往復して描かなければならないクチから目の標高差が激しい。自分で設計しておいてなんだが、これはひどい。
なんてことだ。けっこうつらかったので「いやー、尻尾チームはたいへんでさあ」なんて言っちゃったけど、断然顔チームの方がハードであった。はずかしい。
累積標高424mって、140階建てのビルを登ったことになるぞ!
今回こんなにしんどかったのは、たぶん加齢のせいだ。最初のGPS描き初めは2011年の「卯」だった。もう8年前。あと3回「子」「丑」「寅」で干支を一周するが、これは体力をつけないとまずかもしれない。
(顔チームの写真は@zhenmeimaoさん、@hirechopさんにいただきました、ありがとう!)
DPZでも何回か記事にしている、こちらもぼくの特殊な趣味。ジャンクション鑑賞。このたび写真集になります!
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自分でいうのもなんですが、いい出来映えです。みなさん、ぜひ。
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