やっと気がついた
この世に無数にある花のなかで、自分は「アジサイ」がいちばん好きかもしれない。いや、かもしれないではなく、好きだ。ということに、44年間生きてきてやっと気がついた。
そもそも僕は夏生まれで、夏が大好きだ。小学生時代から、夏が始まるわくわく感とアジサイの咲く風景は、セットで頭のなかに刷り込まれていた気がする。また、夏休みのしおりなどには、花火、虫とり、浮き輪などのモチーフとともに、必ずアジサイが描かれていた。今でもああいうイラストを見るたび、胸を締めつけられるようなノスタルジーを感じる。
そしてまた、僕はそんなノスタルジーが大好きなのだった。昨年出版させてもらった、当サイトの僕の記事をまとめた『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』という本の表紙は、アジサイこそ描かれていないけど、そんな僕の“好き”を思いっきり詰め込んだ。
理由はまだある。6年前の春に娘が生まれ、産院から家にやって来てから約1ヶ月後。妻が抱っこひもに大切にくるみ、娘が生まれて初めての外出をしたのが、ちょうど今くらいの季節だった。その時、何気なく記念写真を撮ったのがアジサイの花の前だった。以来、なんだか毎年、アジサイが咲くとその前で娘の写真を撮るのが恒例になった。いつまで続くことやらだけど、今のところ毎年欠かしていない。
そりゃあ桜の花は大好きだし、その少し前にややつつましく咲く梅の花や、視界一面を黄色く染める菜の花も大好きだ。道ばたにそっと咲くオオイヌノフグリのけなげさにもぐっとくる。けれどもやっぱり僕の本命はアジサイだ。
よし、今日は街に、紅葉狩りならぬ「アジサイ狩り」に出かけよう。そういえば、しっかりとアジサイを眺めながらの散歩って、今までしたことがなかった。
そしてさらに、花見もしよう。「紫陽花見酒」だ。毎年春には桜を見ながら浮かれて酒を飲んでいるくせに、アジサイを見ながら酒を飲んだことがないなんて、アジサイに失礼だ。ただし、複数人でドンチャンやるのではない。アジサイの前で大さわぎしているやつなんて、大バカ者にもほどがある。
あくまで、ひとりでじっくり。アジサイと向き合って1杯だけ酒を飲む。そんなことができそうな、自分だけの紫陽花見酒スポットを公園に探しに行き、これからは毎年の恒例にしよう。