特集 2023年6月7日

紫陽花見酒

この世に無数の種類がある花のなかで、アジサイがいちばん好きだということに気がついた。

気づいたからには、思いっきり愛でよう。それから、アジサイをじっくり眺めながら酒を飲む「紫陽花見酒」もしよう。
 

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

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やっと気がついた

この世に無数にある花のなかで、自分は「アジサイ」がいちばん好きかもしれない。いや、かもしれないではなく、好きだ。ということに、44年間生きてきてやっと気がついた。

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アジサイ

そもそも僕は夏生まれで、夏が大好きだ。小学生時代から、夏が始まるわくわく感とアジサイの咲く風景は、セットで頭のなかに刷り込まれていた気がする。また、夏休みのしおりなどには、花火、虫とり、浮き輪などのモチーフとともに、必ずアジサイが描かれていた。今でもああいうイラストを見るたび、胸を締めつけられるようなノスタルジーを感じる。

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アジサイを見るたび、少しきゅんとする

そしてまた、僕はそんなノスタルジーが大好きなのだった。昨年出版させてもらった、当サイトの僕の記事をまとめた『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』という本の表紙は、アジサイこそ描かれていないけど、そんな僕の“好き”を思いっきり詰め込んだ。

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拙著『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』の表紙

理由はまだある。6年前の春に娘が生まれ、産院から家にやって来てから約1ヶ月後。妻が抱っこひもに大切にくるみ、娘が生まれて初めての外出をしたのが、ちょうど今くらいの季節だった。その時、何気なく記念写真を撮ったのがアジサイの花の前だった。以来、なんだか毎年、アジサイが咲くとその前で娘の写真を撮るのが恒例になった。いつまで続くことやらだけど、今のところ毎年欠かしていない。

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娘が0歳の時に記念写真を撮った、まさにそのアジサイ。エモい

そりゃあ桜の花は大好きだし、その少し前にややつつましく咲く梅の花や、視界一面を黄色く染める菜の花も大好きだ。道ばたにそっと咲くオオイヌノフグリのけなげさにもぐっとくる。けれどもやっぱり僕の本命はアジサイだ。

よし、今日は街に、紅葉狩りならぬ「アジサイ狩り」に出かけよう。そういえば、しっかりとアジサイを眺めながらの散歩って、今までしたことがなかった。

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狩りまくるぞ〜!

そしてさらに、花見もしよう。「紫陽花見酒」だ。毎年春には桜を見ながら浮かれて酒を飲んでいるくせに、アジサイを見ながら酒を飲んだことがないなんて、アジサイに失礼だ。ただし、複数人でドンチャンやるのではない。アジサイの前で大さわぎしているやつなんて、大バカ者にもほどがある。

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この花の前で大さわぎなど……

あくまで、ひとりでじっくり。アジサイと向き合って1杯だけ酒を飲む。そんなことができそうな、自分だけの紫陽花見酒スポットを公園に探しに行き、これからは毎年の恒例にしよう。

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アジサイは、雨に映えるのもいい
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むしろ、雨でこそいい

⏩ 次ページ、アジサイの種類を確認しておこう

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