特集 2011年8月31日

日野町、火振り祭が奇祭すぎた

いきなり地獄みたいな写真ですが。
いきなり地獄みたいな写真ですが。
妻の母、つまり義母が住んでいるのでちょくちょく行っている滋賀県の日野町だが、なんだか1年中お祭りをやっている。

今年の4月に紹介した南山王祭(参考記事:滋賀県、奇祭、ホイノボリを見てきた)も面白かったが、3月には雛祭(参考)、5月には日野祭があり(参考)、8月には火振り祭というお祭りがある。ついでに言うと地蔵盆もある(参考)。

4月に行ったばかりでなんだが、火振り祭を見に日野に行って来ました。それはもう、僕の常識からするととんでもないお祭りだったんですよ。常識がいかに狭い物かって思い知りました。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

前の記事:手軽にどこでも習字が出来る、ふせん習字を編み出した

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日野町にやってきました

さて、日野町に行ったのは8/15。新幹線に乗って米原駅から義母の車で夕方には到着。なんでも20時ころから始まるというので、始まる前に現場を偵察に行った。
今まで何度も行っているが気付かなかった火振り祭の看板。
今まで何度も行っているが気付かなかった火振り祭の看板。
ここが火振り祭のスタート地点、五社神社。
ここが火振り祭のスタート地点、五社神社。
かがり火の準備とかしてあった。
かがり火の準備とかしてあった。

二日間行われるらしい

神社で写真を撮っていると、おじさんに声を掛けられたので色々聞いてみた。話によると、火振り祭は僕が行った8/15と前日の8/14に行われるらしい。8/14の方が盆踊りと火振り祭やって、出店も出て盛り上がるのだそうな。

あれ、話が違う。

義母からは「8/14は盆踊りなのよ!火振り祭は15日だから15日に来なさい!」と聞いていた。その点について義母に聞くと、「あら、そんな事言ったかしら」と言われた。

義母との良好な関係を壊したくないので深くは追求しなかった。どっちにしろ僕にとっては未知の祭である。盛り上がりに関わらず面白いだろう。
境内には大きくワラが積まれていた。燃やすのか?
境内には大きくワラが積まれていた。燃やすのか?
神社の脇にある家の鬼瓦は「水」。燃えないようにだろうか。
神社の脇にある家の鬼瓦は「水」。燃えないようにだろうか。

現場その2

五社神社から歩いて15分ほど、つまり1kmくらいのところに公園というか広場があり、ここが火振り祭の第2会場となる。

大雑把に説明するが、まず五社神社でたいまつに火を着けてここまで歩いてくるのだそうな。

たいまつを持って来てここでなにをするのか?ところどころ地面が焦げてたり木が焦げてたり、なんだか色々焦げている。なにをしたのだろうか。
ここが火の海になるのか?
ここが火の海になるのか?
なんだか地面が焦げている。
なんだか地面が焦げている。
松の木を見上げると焦げていた。なぜ木が焦げる?
松の木を見上げると焦げていた。なぜ木が焦げる?
可愛い消火ポンプが用意されていた。本気だ。
可愛い消火ポンプが用意されていた。本気だ。
夜になりました。
夜になりました。

はい、夜になりました

公園で1時間半ほど待っていたら暗くなった。僕と妻、義母、義父の4人で僕だけ蚊に刺された。

20時から始まるというので19時半に五社神社へ移動することとした。こういう祭は大体準備の段階から面白いのだ。

神社に着いてみると、なんかやっぱおかしな光景が広がっていた。
道中撮った写真。各家庭に立てかけられている棒、これはなんだろう。
道中撮った写真。各家庭に立てかけられている棒、これはなんだろう。
参道から境内を見ると、炎がチラチラと見え、人も集まっていた。
参道から境内を見ると、炎がチラチラと見え、人も集まっていた。
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子供たちが豪快に火遊びしてた

僕が子供の頃火遊びをすると、大体怒られた。大きな灰皿の真ん中にマッチをキャンプファイアーみたいに組んで燃やしたときはこっぴどく怒られた。当たり前だけど。

でも、五社神社に着いてみるとかがり火を子供たちがいじって遊んでいた。大人は周りにいるが別に気にしてる風でもない。火に寛容な土地なんだろうか。
カジュアルに火遊び。
カジュアルに火遊び。
境内には子供と大人が数人。
境内には子供と大人が数人。
子供フリーダム。
子供フリーダム。

火遊びとチャンバラの繰り返し

子供たちはそれぞれ、先が割れた1mほどの竹の棒を持っていた。火遊びに飽きるとそれでチャンバラをして、チャンバラに飽きると火遊びをしていた。

なんとも子供らしい自由さ、無軌道さである。結構ガチでチャンバラをしていたが、火遊び同様それを止める気配も無い。なんか色々寛容ですげぇ。
女子も火遊びである。女子小学生の火遊び。
女子も火遊びである。女子小学生の火遊び。
チャンバラも男女入り乱れて行われる。自由だなー。
チャンバラも男女入り乱れて行われる。自由だなー。
でもってまた火遊び。
でもってまた火遊び。

大人達も集まってきた

20時が近づくと、大人達が長い棒を担いで集まってきた。1ページ目の最後の写真に写っていた棒である。1人1本担いでいた。まさか大人達もチャンバラをするのだろうか(んなわきゃない)。
この棒はなんだろう。
この棒はなんだろう。
続々と集まる大人。みんな棒を持っている。
続々と集まる大人。みんな棒を持っている。
棒は各家庭で手作りしたものらしい。大体2.5mくらいある。割った竹を紐でくくったもので、先には藁が束ねられていた。

まさか、これがたいまつなんだろうか。僕が知っているたいまつとは随分違う気がする。たいまつって、もっとこう、片手で持てる感じじゃなかったっけ?

広場には結構な数の大人と棒が集まったが、まだ火振り祭は始まらない。住人同士は世間話などしながら開始の時を待っていた。

一方その頃

南山王祭の時もそうだったが(参考)、住民がわいわいやってる一方で、社ではなんの説明もなく神事を行っていた。説明がないのは、参加してる人みんな(僕以外)みんな知ってるからである。

社の入り口には少年が2人提灯持ちで立ち、奥では神主さんやお稚児さんがなにやら儀式をしていた。
社では神事が執り行われる。ちゃんとした伝統行事だ。
社では神事が執り行われる。ちゃんとした伝統行事だ。
少年がちゃんと番をしていた。若干そわそわしてたが。
少年がちゃんと番をしていた。若干そわそわしてたが。
絵に描いたようなおごそか。
絵に描いたようなおごそか。

いよいよ始まる、奇祭火振り祭

神事が終わって神主さん達が出てきた。いよいよ始まるのか、住民の雑談も止み境内の明かりも落とされた。

たった30秒後、僕はもうなにがなんだかわかんなくなっていた。え、なにこれ、と。
神主さんが藁の山に火を付けた。
神主さんが藁の山に火を付けた。
あっという間に大きな炎が立ち上がる。
あっという間に大きな炎が立ち上がる。
この光景を見たとき、僕はナイトメアの方の夢を見ているような気分になった。
この光景を見たとき、僕はナイトメアの方の夢を見ているような気分になった。
次のページでは火振り祭の全貌を写真と動画でお伝えします。急げ、次ページ!
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映るものすべてが、火

さて、ナイトメアの続きである。思い起こせばボーイスカウトのキャンプファイアーなどで大きな火は見たことがあった。でも、キャンプファイアーでは周りに長い棒を持った人はいなかったし、太鼓もドンドコ鳴ったりしてない。

どうしたって初めて見る光景なのだ。
周りの人が、持っていた棒を火に突っ込む。アレはやはりたいまつだったのだ。
周りの人が、持っていた棒を火に突っ込む。アレはやはりたいまつだったのだ。

順番に火を着け、一列に並ぶ

みんな、長い棒を火柱に突っ込んで火を着けていた。あの長い棒は、つまり長いたいまつだった。火が着くとみんな鳥居の方へ向かって歩き出し、行列となった。そうか、広場まで歩くんだよな。

にしても、こんな大きなたいまつを持って歩くのか。危なくないか。
長いたいまつに火を付けると歩き出す。ちょう燃えてる。
長いたいまつに火を付けると歩き出す。ちょう燃えてる。
なにこの行列。
なにこの行列。
長時間露光なのでブレた。こういう写真はブレると恐怖感が増すね。
長時間露光なのでブレた。こういう写真はブレると恐怖感が増すね。
神事を行っていた人たちは提灯を持って移動。
神事を行っていた人たちは提灯を持って移動。

動画も撮りました

火を着けてみんなが移動する部分の動画を撮りました。太鼓の音が入ると儀式感が高まっていいですな。

普通の道に連なる火、火、火

神社から広場までの道は、幅が5mほど。けして広い道ではない。にも関わらず長さ2.5mほどのたいまつを持って歩くのだ。民家も普通に立ち並んでいるのに。そりゃ鬼瓦に「水」って書くわ。
普通の道路で、延々連なる炎の列。なんだこりゃ。
普通の道路で、延々連なる炎の列。なんだこりゃ。
すげぇとしか言いようが無い。
すげぇとしか言いようが無い。
1kmほどの道を歩いて移動する。
1kmほどの道を歩いて移動する。
燃えかすとか普通に道に散らばっている(くすぶったり燃えてたりする)。
燃えかすとか普通に道に散らばっている(くすぶったり燃えてたりする)。
東京から新幹線で2時間のとこで、こんな異文化な祭が行われていたよ。
東京から新幹線で2時間のとこで、こんな異文化な祭が行われていたよ。

たいまつに襲いかかる子供たち

さて、上の写真ではたいまつを持って粛々と歩いているように見えるが、実はそうではない。燃えているたいまつめがけて、子供たちが竹の棒を振り下ろすのだ。

なぜそんな事をするのかというと、たいまつの燃えた部分(炭になった部分)を叩き折っているのだ。だから道には燃えかすが散らばっているというわけ。
ホントは神社を出たとこからこんな感じだった。子供たち、ちょうこえぇ。
ホントは神社を出たとこからこんな感じだった。子供たち、ちょうこえぇ。
あっちでもこっちでも子供たちがたいまつを叩く。
あっちでもこっちでも子供たちがたいまつを叩く。
叩けば当然火の粉が舞うが、素足の子供たちは熱くないんだろうか?
叩けば当然火の粉が舞うが、素足の子供たちは熱くないんだろうか?

動画も撮りました2

たいまつに襲いかかるって言っても、写真や文章ではよくわからないだろう。そこで動画も撮ってきました。ご覧ください。僕は、初めてゾンビ映画で子供のゾンビを見たときに近い衝撃を受けました。
前日にもこれをやってたら、そりゃかがり火でちょっと火遊びしたくらいじゃなんとも言われないか。火に対する距離感も僕とは違うのだろう。

なぜたいまつを叩いて短くするのかというと、たいまつが長いままだとこの後で困ってしまうからだ。どう困ってしまうかは、次のページで。
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まだたいまつへの攻撃は続く

五社神社から広場まではまだまだ長い。道中、子供たちは延々とたいまつに攻撃を加えていた。たいまつを持っている大人もなんだか楽しそうだし、子供も生き生きとたいまつを叩いていた。
たいまつを持つ側がフェイントを掛けたり、行列が進むと妙な駆け引きが生まれたりもする。
たいまつを持つ側がフェイントを掛けたり、行列が進むと妙な駆け引きが生まれたりもする。
見てると、女の子の方が活発にたいまつを叩いていた。たいまつの炎や火の粉に怯むことなくガンガン攻めていく。これはかっこいい。
なんかステップとかもかっこいい。
なんかステップとかもかっこいい。
絶対熱いよ、これ。こんだけ火の粉が舞ってるのに浴衣で素足だよ。僕がやるなら、長袖長ズボンでゴーグルするね。
絶対熱いよ、これ。こんだけ火の粉が舞ってるのに浴衣で素足だよ。僕がやるなら、長袖長ズボンでゴーグルするね。

広場に着いた

広場に着く頃には、長かったたいまつもかなり短くなった。長くて1mほど、短い人のは50cmくらいだ。それを今度はどうするか。

なんと、松の木に投げつけるのだ。なにを言ってるのかわからないと思うが、大体僕も同じ気持ち。
山狩りみたいな光景。知らないでここに来たら、僕なら逃げるね。
山狩りみたいな光景。知らないでここに来たら、僕なら逃げるね。
広場には祭壇と、特別席があって社で神事を行っていた人たちが座っていた。どうやらここでたいまつ投げを見るのらしい。
こちら、特別席のやんごとないっぽい方々。
こちら、特別席のやんごとないっぽい方々。
こちら、たいまつを持ったみなさん。なにこの空気感。
こちら、たいまつを持ったみなさん。なにこの空気感。
そして、始まった。

たいまつを松の木めがけて投げ始めたのだ。マジだったわ。
たいまつを投げるとか、普通は一生やる機会ない。
たいまつを投げるとか、普通は一生やる機会ない。
投げたたいまつが松の枝に引っかかると、歓声と拍手が上がった。どうやら、それで成功らしい。

どういう事か最初から説明すると、火振り祭というのはその年の豊作を占う祭なのだそうだ。まずは長いたいまつに火を着けて町を歩き、道中子供たちが燃えた分を叩き折って短くする。

なぜ短くするかと言うと、長いと投げにくいから。なら最初から短いたいまつで・・・というのは野暮なので言わないように。

でもって、松の枝にたくさんのたいまつが引っかかって松の木が燃えればその年は豊作という事らしい。義母はそれを称して「松の木いじめ」と呼んでいた。

燃えたたいまつが枝に乗るのだから、当然松の木は燃える。燃えた分は切られるので年々枝が短くなってたいまつが乗りにくくなっているらしい。
ホントに燃えちゃってます。
ホントに燃えちゃってます。
普通に燃えてる。
普通に燃えてる。

燃えてるのは吉兆のあかしだからいいのだ

松の木が燃えちゃってる。でも別に消す様子はなく、燃えるに任せている。まぁ、生木で水分があるので燃えさかる訳では無く、枝に乗ったたいまつと、周りの葉や枝がちょっと燃えてる程度。

そんな様子を動画で撮影しました。異文化っぷりにクラクラすると思うので是非見てください。
ほとんどのたいまつは引っかからずに下に落ちるが、木の下には人がいて外れたたいまつを回収、再度投げる。木の下もかなり火の粉が降ってくるのだが。
ほとんどのたいまつは引っかからずに下に落ちるが、木の下には人がいて外れたたいまつを回収、再度投げる。木の下もかなり火の粉が降ってくるのだが。
終盤になるとあちこちで枝が燃えている。
終盤になるとあちこちで枝が燃えている。
綺麗なんだけどね。
綺麗なんだけどね。

1時間くらいでおわる

20時に始まって、21時くらいになると提灯を持った件の方々が神社へ帰っていった。どうやらこれで終わりのようだ。

が、たいまつ投げは変わらずに続いていた。神事チームとたいまつ投げチームは同期しているようで同期してない。このバラバラな感じがまた面白い。
行事としてはこれで終わりらしい。
行事としてはこれで終わりらしい。
消防団の人だろうか、「早く投げてくださーい」とか拡声器で声が掛かる。するとたいまつを投げてる人たちが「そろそろおわろかー」と言い、なんとなく終わった。

不思議な空気感だが、一応呼吸はあっているらしい。火振り祭はぬるぬると終わった。
最後のたいまつ投げ。
最後のたいまつ投げ。
なにがなにやら、という具合で火振り祭はぬるぬると終わった。
なにがなにやら、という具合で火振り祭はぬるぬると終わった。

特に結果発表とかはない

たいまつがたくさん松の枝に引っかかったら豊作という話なのだが、今年は何本引っかかったから豊作だ!みたいな発表はなくて、なんとなく終わった。きっと地元の人には多いとか少ないとか判るのだろう。
最後、燃えてた木に消防団が放水して火を消します。
最後、燃えてた木に消防団が放水して火を消します。
で、帰りがけに「今日は少なかったなー、昨日の方が人も多かったわ」という声が聞えてきた。ぐぬぬ、やはり14日に行くべきだった・・・。

義母は、「次は地蔵盆よ」って言ってた。祭が多いのもなんか大変そうだ。

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