旅は異世界ファンタジーだ
旅に出ると、そこが電車で数時間の場所でも食べ物や、色んなもののデザインが少しだけ違っていて面白いのです。
旅先は異世界で、異世界の住人にとって当たり前のことが旅人の目には異文化に映ります。
『新幹線はくたか』に初めて乗った。なんか、新幹線で行けば日本中どこでも数時間で着きます。すごいですね。
金沢駅にて、ホームにあるベンチの向きが変。電車が来る方を向いています。関東では線路を向いています。
列車編成の案内がパネルになってるが、どういうことなのかイマイチよく分からない。
ホームの電車の上にもこういうパネルがある。全部6号車としか書いてないが、意味があるんだろうか。
金沢駅に降りたら、なんか自販機とかベンチの向きとかコンビニの商品とか表示板とか、色んなものが関東とはちょっと違ってました。
気分は異世界ファンタジーの主人公です。
電車のドアとホームの段差がすごい。東京だとほとんど段差がないので、気付かず降りるとビックリします。
駅の自販機では『棒茶』という見慣れないお茶がセンターで売られている。
駅のセブンイレブン(NEW DAYSではない)ではビーバーといお菓子が売られていた。初めて見るがこっちでは超メジャーらしい。
ビーバーがうますぎてヤバイ
ビーバーを買ってみました。一袋大体200円くらいで売られています。
塩味と白エビ味の2種類があり、白エビ味の方は『白えびビーバー』という名前です。
形がビーバーの歯みたいだからビーバーという名前なのらしい。
簡単に言うと、揚げせんです。ピーナッツ揚げとかそういう類で、でも味付けが素晴らしい。
昆布のうま味と甘味で、どことなくハッピーターンっぽいのですが、塩とうま味はこちらの方が強く感じます。
大きさも絶妙で、手が止まらずあっという間に食べきってしまい、460kcal。
関東で売ってなくてよかったです。売ってたら毎日2袋食べしまいそうです。どう考えてもヤバイ。
北陸でしか売ってませんが、恐ろしいことに、オンラインショップで箱買いできます。
白えびビーバー12袋入
ピート、これが"デブへの扉"です。
ビーバーの袋を開けて途中で食べるのをやめるすべを僕たちはまだ知らない。
遠くのイオンは関東でも見られる
電車やバスで移動すると、田園風景の向こうにイオンがありました。こういう感じは関東の田舎でも見られます。
田んぼの向こうにイオン。
数kmごとにイオン。イオンすげーな。
緑に赤い看板が目立つ。なるほど、イオンのあの赤は、田園風景で目立つようになっているのだ。
でも観音様は普通、いない
金沢から電車で50分ほどの加賀温泉駅の近くには巨大な観音様が立っていて、かなり異世界な感じがします。
駅の向こうに観音様。高さは73m。牛久市の牛久大仏よりは小さいが大きい。
てっきり駅の裏からすぐなのかと思ったんですが、横から見たらかなり離れてました。
加賀大観音は、横から見るか前から見るかで距離感が大きく変わります。
駅には平和堂(西日本に多いスーパー)の看板が。
加賀温泉駅横の平和堂で見つけた異世界
加賀大観音のおひざ元、加賀温泉駅の駅前には平和堂(アルプラザ加賀)があって、ちょっと変わった食べ物を見つけました。
ささげ餅。赤飯に入れるささげが餅についている。
勝手に『あんこが入った餅にささげがくっついてる、豆大福的なもの』かと思って食べたのですが、予想外の味で驚きました。
甘いと思ってたんですよね。
かなりしょっぱい。
そして、あんことか入ってませんでした。
ジャスト、餅。
『ささげ餅』という名前の通りで、確かにそうですけども。
これは!と思って、醤油を掛けて海苔を巻いて食べたら大変においしくなりました。
塩気があるものだと分かって食べれば、これはこれでおいしい。
えびす寒天
この寒天も予想外の味でした。
まずスーパーの惣菜コーナーにパック詰めの寒天があるのがよく分からないのですが、さらに見たことない『えびす寒天』なるもの。
だし汁に溶き卵を入れたものの寒天でしょうか。
これはしょっぱい味付けなのかと思って食べたんですよ。
ことごとく予想と真逆の味付け。
えー!甘いの!!ってなりますよ、そりゃ。
口は塩気の準備して待ってるのに甘いんですからね。予想と真逆の味付けがパラレルワールドっぽさを増していきます。
僕が知ってる世界と違います。
見たことないサンドイッチ
パンコーナーでは、食パンに各種味ペーストが塗られただけのサンドイッチが並んでました。
薄めの食パン4枚分。10枚切りくらいですかね、厚さ的には。
素朴な感じがいい。小松市で作られているようです。
中身は、容赦ない真っ赤なジャムです。
これで辛かったりすると、北陸パラレルワールド説が強化されるのですが、普通に甘いイチゴジャムで、昔食べたことある感じの味でした。
おいしい。
初めて食べるのに食べたことがある味でした。これは何周目の記憶なのかな。かな(繰り返す世界説)。
次のページも、個人的な北陸の異世界っぷりを紹介します。
山中温泉の鶴仙渓(かくせんけい)が、良い
加賀と言えば山中温泉、山中温泉と言えば鶴仙渓です。たぶん。
リバーサイドを歩けるらしいので行ってみましょう。
まずは黒谷橋からですが、バスの運転手さんに、
「黒谷橋はどこですか?」って聞いたら、
「あっちだけどただの石の橋だよ?」
って言われました。
お、おう。
なんか、芭蕉推しでした。
確かに、ただの石の橋
行ってみると、確かにただの石の橋でした。
入り口の柱には芭蕉の句が刻まれています。
ただの石の橋、黒谷橋。
読みませんでした。
欄干の窓にはまったなにかがかっこいい。
川っぺりに降りる道が、全体的に緑でキレイです。
道も苔むしてるので滑りそうで怖いですが、一歩一歩踏みしめていきましょう。人生のようです。
緑さがすごい。
いきなり川から離れる上り坂があり、先に神社があるようです。
坂には苔がビッシリ生えてましたが行ってみました。
鳥居の雰囲気が良い。
神社はなぜか透明な囲いで囲まれていました。雪害を防ぐためのものでしょうか?
この辺の神社はわりと囲まれていましたが、よそでは見たことありません。
防御力高そうな神社。
公衆トイレがかっこいい。でも、大の方は鍵が閉まらなかったので、鍵無しで用を足しました。スリリング。
こんな感じで2kmくらい歩いていきます。
かなりの水量ですね。落ちたら死にます。
廃墟が良い
渓谷からは川と緑と廃業したっぽいホテルの廃墟が見えます。良いね、こういう感じ。
廃墟好きにはたまりません(周りのホテルは営業してます)。
まだ廃墟歴の浅そうな建物ですね。
こっちはモリゾー化が進んでいて、とってもアポカリプシー(終末っぽい)です。
小さな橋もあります。階段も苔が生えてて、みごとにコケました。
あやとり橋最高かよ
渓谷を進むと、鉄骨で出来た橋がありました。
名前はあやとり橋。確かにあやとりで出来るような変わった形の橋です。こういうのもトラス橋って言うのかな。
こんな橋、初めて見たわぁ。
意味があるのか謎の石積み。なにかの冗談なんだろうか。
曲がってます。
鉄骨が複雑に組まれており、なぜかウネウネと左右にカーブしていました。最高すぎる。
たまらんね。
ほら、見てよこの構造美。すっごーい!
橋脚はなく、95mの橋は空中を通っています。
歩いていると分からないけど、止まると微妙に揺れてるのがわかります。
下から見るとこんな感じでカーブしてます。
寿司を食べたら金箔がのってました
この日の夜、加賀温泉駅の近くの回転寿司に行ってみたら、ウニに金箔がのってました。
さすが黄金の国ジパング。
中トロ、ウニ、のどぐろ。ウニに金箔。
白えびにも金箔。
ほやとこのわたの塩辛だった気がする。
ほうぼうだったかなー。
カニ味噌。
山中温泉最高はもうちょい続く
あやとり橋から先に進むと今度はこおろぎ橋。名前の由来は諸説ありますが、木で出来た、これまた美しい橋です。
なにこの橋天国。
いい橋ですねぇー。
擬宝珠(ぎぼし)が可愛いですねぇー。
あとで撮った写真を見たら、微妙に違うだけの写真が20枚くらいあった。
目が良くなっちゃいそう。
道の駅に古い電車があった
ちょっと離れたところにある道の駅に行くと、隅っこに電車がありました。
この雑然さがすごい。
昔この辺には『山中温泉軌道』という鉄道が走ってて、そこで『ロマンスカー』として走ってたのがこの『しらさぎ』だそうです。
純国産では初のオールアルミ、曲面ガラス使用。鉄道の近代化に貢献した『山中温泉の宝』だそうです(説明パネルより)。
懐かしい感じ。
昔、電車にはクーラーがなくて夏はこういう扇風機が回ってたんですよ。暖房はあった気がします。
運転席はかなり開放的で、腰の高さに仕切りがある程度。
ドアは開いてたので、もしかして運転席に座ってもよかったのかな。
昭和感あふれるデザインがたまらんです。『ザ・機械』という感じ。
扉、車内放送、整理券発行機、運賃箱などの操作盤。全部アナログ。
マスコンとかその辺のやつ。
タイムスリップしたような写真を撮れるので、山中温泉に行ったら中で写真を撮るのをおすすめします。
これがインスタ映えってやつでしょうか。
なんか押し寿司文化らしい
食べ物のターン。
加賀ではどこでも押し寿司が売られてていて、笹寿司と柿の葉寿司をよく見かけました。
柿の葉寿司は売り切れだったので笹寿司を買ってみました。
海の近くなのに押し寿司?という感じもありますが、なんだか文化的には西日本に近い感じがします。
鮭と鯛の2種類が入ってます。6個。多い。
鮭。わたくし、実は押し寿司が大好きです。
鯛はこぶ締め。
夕方買って、食べきれなかったので翌日半日持ち歩き、お昼に食べました。
推奨はされない気がするけど傷んでませんでした。
無を食べた
1日目に食事をしたらお造りが出てきて、ツマが謎の透明なやつでした。
甘エビとかマグロ自体は普通においしかった。
見た目は、『溶かしたアクリルを小さい穴から出して水に落として固めたやつ』みたいで、箸で持った感触も大体そんな感じでした。
食べられるの?と思って食べてみると。
無味。
無の味です。
海藻?こんにゃく?っていうか本当に食べていいの?なんて思いましたが、正体は海藻の成分を固めたものだそうです。
北陸ならではの食べ物なのかは分かりませんが、異世界体験としては面白かったです。
文化のターン
いつからターン制になったのか。
今回の旅の目的は九谷焼について知りたい、あわよくば良い器を買いたいというものだったので、山代温泉にある九谷焼窯跡展示館に行ってみました。
すっげーよかった。
この前に大聖寺にある九谷焼の美術館にも行ったんですが、こっちの方が素敵でした。
半製品が並んだ工房の様子。こういうの見たいんですよ。
製作工程。まず白い皿を焼いて、輪郭線を書いて焼いて、色を付けて焼く。何回も焼くので手間が掛かってるのです。
九谷焼ってのは、下の写真みたいな黄色とか緑とかを使った派手な絵皿のことです(雑な説明)。
九谷焼は大雑把に言えば、古九谷と九谷に分かれてまして、古九谷は1650年ころに生まれ、50年くらいで一度途絶えました。
その100年ちょっと後に吉田屋伝右衛門が再興したのが九谷焼。
吉田屋さんがかなり頑張ったので、典型的な『九谷焼っぽい器』を吉田屋風とか『吉田屋九谷』なんて言ったりもします。
九谷焼年表。古九谷と九谷は完全に断絶してるのが面白い。
大きな登り窯跡。300年前、ここで名品が作られていた。ロマンですな。
上からも見られます。一度に1万枚の器を焼けたそうな。
小さめの登り窯。
写真は撮れなかったけど、館内には良い皿も展示されていて、とてもよかったのです。おすすめ。
銀行のショーウインドーです。加賀は至るところにこういう壺が置かれています。これは、いいものだ!
一方で、ここでは焼き物がフィラデルフィア・エクスペリメントみたいになってました。
何枚か買った
九谷焼はなぜか5つセットで売られることが多く、1つ3,000円としてもセットで15,000円とかになってしまいます。買うとなると高いのが難点です。
撮影に使うのが目的なので1枚でいいんですよ。
そしたら、前述の山中温泉に1枚ずつ買えるお店があって、古めの器を格安で買えました。
全部で5,500円でした。コレクターじゃないんだから1枚ずつあればいいんですよ。
店の看板とかなくて、ワゴンセールしてて明らかに他のお店より安かったので入ったら、店内全部ワゴンセールみたいな値段でした。
500円。手書きでこの値段はあり得ないと思うのだけど。もう1個買えばよかった。
花とトンボが可愛い。仕事量(一般に絵が複雑で手が込んでる物ほど高価)は少ないけど、にしても1000円は安い。
アメリカンドッグが素敵になります。
アメリカンドッグが出てきたところで、次は食べ物のターンです。
スーパーで色々買ってきた
4ページ目の食べ物のターンは、スーパーで買った色んな食べ物ですよ。
どれもこれも関東のスーパーでは見かけないものです。
異世界の食べ物たち。
パラレルワールドのかまぼこは平たかったり巻いてたりします。
治部煮を作ってみました
加賀では治部煮という、とろみが付いた煮物をよく食べるというので作ってみました。
食べたことない料理を勘で作ったので、味的に合ってるのかはよくわかりません。
見た目は雅な感じですね。赤巻とすだれ麩を使いました。
味としては、『正月に食べそうな感じ』です。
全体的にとろみが付いていて謎の高級感があります。とろみには高級感を増す効果があるっぽい。
鶏肉に小麦粉を付けて煮ます。煮汁も最後に小麦粉でとろみをつけます。片栗粉じゃないのは、昔貴重だったからでしょうか。
油揚げは地方色が出て面白い
旅行に行くとその土地の油揚げを買うのだけど、加賀では『ざぶとん揚げ』という大きくて分厚い油揚げが売られてました。
栃尾の油揚げに感じが似てますが、形は正方形で重みがあります。
寒い地方では生き物が大型化するそうですが、油揚げも巨大化しがちです。
実はおとなり、福井のものらしい。福井県は油揚げの消費量が日本一なのだそうな。
三代目の背中を見守る二代目。
大きくて厚くて重い。
焼いて薬味とか鰹節とか掛けるだけでおいしい。僕は油揚げが好きなのです。
キツネ憑きかってくらい油揚げをよく食べます。
こんなに厚いのに、中は油揚げっぽいスポンジ状です。厚揚げとは違います。
兼六園と金沢城にも行きました
パラレルワールド旅行三日目、東京に帰る前に金沢の兼六園と金沢城にも寄りました。
記念撮影してたら知らない人に撮られてる感じ。
左の石垣が急に雑になってて面白かったとこ。
金沢城は苔がキレイでした。
本丸跡は森になってました。当時、建ててすぐ火事で燃えちゃって、再建もしなかったらしい。平和だったんでしょう。
兼六園界隈の金箔っぽさ
金沢城の近くに前田利家の像があるというので見に行ったら、頭だけ金色でした。
兜だけ金色の前田利家。
いたずらで兜だけ金色にされたとか、全身金色にされたけど兜以外は元に戻したとか、いくつかの説があるようです。
真偽不明の金色。
この形で黄金って、隠語だろうか。
地味な食べ物
食べ物のターンは金箔から一転して地味な『圓八のあんころ餅』。
金沢駅のお土産物屋さんで山盛り売ってますが、消費期限が当日です。
買ってその日に食べなきゃいけないおみやげ物って、そんなのアリですか。
大雑把に言えば、『洗練されてない赤福』です。
早速買ってきた皿に盛る。
甘さ控えめのあんこと柔らかい餅が赤福っぽくておいしい。
あんころ餅の由来が書いてある紙が入ってて、その内容がひどくて笑いました。
奔放すぎる夫と、夢で見たものを実際に作って商売した妻の物語。
要約すると、 「天狗になる!」
と出ていった夫が夢枕に立ち、
「京都で鞍馬天狗やってます。この様にあんころ餅を作ればもうかります」
というのでその通りにあんころ餅を作って売ったら儲かりました。夫は帰ってきませんでした。
という話です。
あなたは夫が「海賊王になる!」と言ったら止めますか。普通止めますね。
アパホテルの漫画が面白い
加賀の夫婦と言えばアパホテルの社長夫妻でしょう。APAグループは石川県が創業の地です。
アパホテルに泊まると客室に自伝漫画が置いてあります。
冗談半分で読んでみたらすっげー面白かった。
『逆張り』で成功したそうですが、確かに人と同じことをやっていても埋もれるだけです。
逆張りとはリスクですが、リスクなくしてリターン無し。
そうです、ろくろを回しながらビジネスについて語ります。
ところでアパホテルの朝食に出てくるカレーがとてもおいしいです。『社長カレー』という名前だそうです。
具が無かったのは食堂に行ったのが遅かったせいでしょうか。
このカレーを食べたいので、またアパホテルに泊まりたい。
ろくろで廻ってる土をこういう形にするのはなかな難しく、というか、考えてみたら僕に器の形のビジョンなんてありませんでした。
ビジネスもビジョンが大事です。
ビジョンなしで適当なコップを作る。
とっちらかった加賀特集、いかがだったでしょうか。加賀に行ってみたくなったでしょう。
是非行って、ささげ餅とえびす寒天を食べてください。
ビジネスについて語るなど、慣れないことはしない方がいいと思います。
やっぱパラレルワールド
北陸は、もちろん関東とも違うし西日本とも東北とも違った、『どこかに似てるけどどこか違う』という微妙な線で、やっぱり個人的にはパラレルワールドでした。
なにかちょっとした過去の歴史がズレてる世界。それを当たり前のこととして生活してる人がたくさんいて、そこに飛び込むのは異世界探訪っぽくて楽しかったです。
自分にとってのパラレルワールドを見つけてたまに遊びに行くと面白いですよ。加賀、また行きたいな。
そばつゆはうどんの汁みたいな色で昆布だしでした。食文化は関西よりなのかもしれません。