最初に動機を書くと、記事に説得力が出ますので
中学生の頃山科けいすけさんの「極楽コネクション」(ヤングジャンプに連載してた4コマ漫画)が好きだった。その中に、こんな話があった。
ある大学生が、仕送りまで日があるのにお金を使い切ってしまった。下宿に残っている食べ物は僅かな米だけ。
「水を多く入れて炊いてみよう。」
「もっと水を多くすれば更に米が増える…っ!」
「ゴクリ……ま、まだいけるかな…。」
結果、欲をかいて水を入れすぎてしまい、お粥を通り越した米スープになってしまうのだった。学生は泣き、友達に「またやったんか」と言われる。
水を増やしていく時の、誘惑、勝負、緊迫感がオチで解放される。「米スープ」というオチが印象的だったので未だに覚えているのだ。
ここで気になるのは以下の点。
・どこまでが「ごはん」だったのか。
・どこまでが、泣くほどではない状態だったのか。
・どこからが「米スープ」なのか。
大変に「どうでもいい」という気もするのだが、20年間引っかかってる事なので、ちょっと調べてまとめさせて欲しい。
まずは一合の米を一合の水で炊きます
一合ってのはつまり容積で180mlの事であり、普通に炊くと茶碗二杯分のご飯になる。普通ご飯は米の1.2倍の水で炊くので、一合当たり216mlの水で炊くとちょうど良くなる(厳密には季節、米の鮮度で変えるんだけど)。
今回は米に対して1倍の水から炊き、2倍、4倍と水を増やして炊いてみるということした。が、一合の米を16倍の水、つまり2.9リットルの水で炊くと、炊き出しかよ!という大量のなにかが出来てしまうので、水を増やすのではなく米を減らして炊いてみる事にした。
まぁ、細かい話は読み進めばわかると思うので、説明はこの辺で。さぁ、どんどん炊いていこう。
あ、もうちょっと説明があった。
炊く時間は基本、15分。鍋を火にかけて15分加熱したら火を止めて10分蒸らす。時間と火加減は大体同じ条件で炊いた。
という事で、まずは1:1、一合の米に対して一合の水で炊いたご飯を食べてみよう。
いーちーばーいー、ごーはーんー
炊きあがりは274g。謎の計算で求められる水分率は46.72%だ。
一倍ご飯は、大分固かった。通常の水加減より20%少ないので仕方ないだろう。でも、これはこれで美味しかった。しっかり噛んで食べると米の味と香りがなんとも良い。米本来の味が味蕾を刺激し、オレは山岡士郎か。
これはこれで当たり前だがご飯だった。それはそうと、次は一気に倍の水加減ですよ。
米を半分の73gに
次は0.5合の米を、一合の水で炊く。米に対して2倍の水で炊くわけで、かなり緩めのご飯が炊きあがる事が予想される。ここまでは予想出来るのだが、どの程度の緩さになるのかはいまいち想像が出来ない。
僕の頭くらいゆるいのか。
僕の肛門くらいゆるいのか。
僕のお腹くらいゆるいのか。
どれもかなり緩いのだがね。
にーばーいー、ごーはーんー
炊きあがりは168g。1倍ご飯より米が少ないので重さが少ないのは当然であり、肝心の水分率は56.55%((168-73)/168*100)。1倍ご飯より大分上がった。米比率を合わせると、1倍274gに対して、2倍336g(168*2)になるので大分得と言える。
食べてみると大分柔らかいが、まぁ、新妻がこういうご飯を炊いてきたら「わはは、しょうがないなぁ、ついでにキミも食べてやる、がおー」とか言って笑って許せる固さだ。わぁ、オレの文章、キモーイ。
まだまだご飯なので、ご飯を炊く時の水加減はちょっとくらい多くても問題ない事がわかったし、ご飯が増えて得なので水を多めで米を炊くと良いかもしんない。生活防衛ー、みたいな(最近はケチの事を「生活防衛」って言うらしいよ)。
では調子に乗って4倍でいってみよう。オラ、ワクワクしてきたぞ!
1/4合の米を一合の水で炊くよ
3回目のトライは、1/4合の米だ。それをカップ一杯の水で炊いてみる。重さにして36g。一円玉36枚分と例えると、それは重く感じるか、軽く感じるか。っていうか、全然ピンと来ない。
大体こんだけ少ないと、米を研いでる感じが微塵もしないので可笑しくなった。
よんーばーいー、ごーはーんー
炊きあがりは97g。水分率は62.89%。一合スケールに合わせると、388g(97*4)にしかならない。さっきの2倍ご飯が336gだったので52g増えただけ。水の割合が倍になったにしては期待はずれの結果だ。
原因は、水に対して米が少なすぎるので、どうも炊いている間にどんどん蒸発してしまうのらしい。米があれば水を吸収してくれるので蒸発を抑えられるのだが、いかんせん米が少なすぎる。
と言う事で、これから先は水の量を倍にしてみる事にした。つまり、二合の水で炊くわけだ。となると米の量も倍になるので6倍なら48g(146/6*2)の米を360mlの水で炊く事になる。
ろくーばーいー、ごーはーんー
米48gに対して水360mlで15分炊いて15分蒸らした結果は、314gのお粥。水分率84.17%はここまでで最高の値。風邪引いた時とか、二日酔いの時に食べたい優しさだ。
さて、ご飯は超越した。では米スープはどこだ。
じゅーばーいー、ごーはーんー
30gの米を360mlの水で炊いた。いわゆる10倍粥で、離乳食として生後半年くらいから食べるのがこんなの。子育てはした事無いけど、血迷って1ヶ月離乳食で暮らした事とかあるので知ってる。
このレベルならまだ「お粥」と言えそうだ。水分率は90.68%。大台を超えた。
更に水を増やそう。
じゅーろーくーばーいー、ごーはーんー
キタキタキタ。ついに米スープの領域に来た。18gの米を360mlの水で炊いて16倍。91.35%の水分量だ。って、あれ、10倍とあんまり変わってないか。でも、その数字以上に米スープだ。米スープ=上から見て米が完全に見えない状態と定義したい。
大体どうも、4倍と6倍の間に米とお粥の境界があって、10倍と16倍の間にお粥と米スープの境界がある事がうっすらわかった。では、それらが本当に正しいのか、今度は炊いたあとに時間をおいて確かめてみたい。
なんでそんな事を調べる必要があるのかって?そりゃ個人的に気になるからに決まってるじゃないか。
おかゆってのは置いておくと水を吸うのです
みんな知ってる当たり前のことをわざわざ見出しに偉そうに書いてしまった。しかしだ。そこんとこも検証しなくては本当の境界を決める事は出来ないのだ。あれ、この記事って境界を決めるのが目的だったっけ。
それはともかく、まずは4倍ご飯をやり直してみる事にした。だって、さっきの試行は水が少なくて普通にご飯になっちゃったからさ。
よーんーばーいーごーはーんー やーりーなーおーしー
炊きあがりの重さは362g。水分率は79.83%。前ページの4倍ご飯の水分率は62.89%だったので、やっぱりどうもさっきのは失敗だったのらしい(失敗ならカットしろよって話ですが)。
ちなみに上の写真は、炊いてから5時間ほど置いた状態のもの。やたらスローフードだ。歯ごたえはかなり無い感じで、誤解を恐れずに書くと、歯ごたえゼロ。エアーご飯と言える。
でも、これでもおかゆでなくご飯だ(なのだ!)。1合スケールにすると1.5kgだ。1倍ご飯の5倍強の重さになる計算だ。4倍ご飯なのに重さは5倍って、なんかおかしい気もするけど気にしちゃダメだ。とにかく、多く増えて得だ!という事を言いたいのだ。
さっき「誤解を恐れずに書くと」って書いたのは単に使ってみたかっただけだ。
ろーくーばーいーごーはーんー やーりーなーおーしー
6倍ご飯を炊いて一晩置いてみた。重さは312g。水分率なんかは変わらないけど、一晩で水部分が大分減った。お陰で、この記事の定義でいうところの「お粥」と「ご飯」をいったりきたり。これは果たしてどっちなのか?
判決。
ごはん。
えー。
やはり、金と米のない学生の気分になって考えてみると、これはご飯と思いたい。思わせて欲しい。無理矢理といえども、どんなに検察が頑張っても、これはご飯と言いたい。
では16倍ご飯も放置したら米が膨らんでごはんになったりするのだろうか?そしたら凄い発見かも知れない。
まぁ、無理だよね、そりゃ
いくら待っても米スープは米スープだった。なけなしの米をこんな事にしたら泣けるよなぁ、と思った。でもこれはこれで美味い。ウェイパーとわかめを入れると中華風になって美味しく食べられた。今後は米スープ、たまに作ろうかな、って思った。
結局境界はどこにあるのか?
まずは倍率と水分率のグラフをご覧いただきたい。
固い1倍ご飯と柔らかい2倍ご飯の間が水分率50%であるので、おそらくその辺が美味しいご飯の水加減なんだろうと思う。4Bの水分率が約80%。ギリギリご飯の体裁を保った6Bが84%な事から、その辺りが、米が保水出来る限界と思われる。米は自分の6倍の体積の水を保つ事が出来るらしい。
6倍を超えると水は余る一方で、10倍は明らかにお粥だし、16倍程度になると器の底にわずかに米がある程度で、ほとんどスープの様相を呈するようになる。つまりまとめるとこうなるだろうか。
「1倍~6倍 ご飯」、「7倍~15倍 お粥」、「16倍以上 米スープ」。
「極楽コネクション」に出てきた学生はおそらく米の16倍以上の水を入れてしまったのだろう。そりゃ、スープにもなるわ。
と、ここまで書いて「極楽コネクション」じゃなくて「かっとびハート」だった様な気もしてきた。誰か覚えてたら教えて下さい。