特集 2023年9月25日

物体や空間を人力で転移させる「ズガ・コーサクとクリ・エイト」とは何者なのか

数か月前のことだが、神戸・新開地にある「新開地アートひろば」という施設内ギャラリーで“ズガ・コーサクとクリ・エイト二人展「地下道」”という展覧会を見て衝撃を受けた。

部屋に入ると、そこに地下鉄の駅構内がそのまま空間として再現されていたのだ。地面も壁も天井も、いかにも地下通路っぽい風にしてあって、しかし、近づけばそれがすべて手作りのものだとわかる。ギャラリーの中に入ると地下道が……。こんな面白い作品を作ったズガ・コーサクとクリ・エイトとは何者なんだろうか、と、そんな興味から取材が始まった。

大阪在住のフリーライター。酒場めぐりと平日昼間の散歩が趣味。1,000円以内で楽しめることはだいたい大好きです。テクノラップバンド「チミドロ」のリーダーとしても活動しています。(動画インタビュー)

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とにかく圧倒された作品「地下道」

“ズガ・コーサクとクリ・エイト二人展「地下道」”は、新開地アートひろばという場所で、2023年6月11日から6月30日まで開催されていた。

私は会期に先駆けて知人から「この展示、面白そうですよ」とチラシをもらって、なんとなく気になっていたところに、展覧会のスタート後、また別の知人が会場の模様を動画つきでSNSにアップしているのを見て、これはいよいよ行くしかないと思った。

そして、会期終了が迫ったある日、やっとタイミングが合って会場へ行くことができた。その時に撮った写真をまずは見ていただきたい。

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ギャラリーや制作スペースがあるアート施設「新開地アートひろば」
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会場である地下1階のギャラリーへと階段を下りていく
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入り口までは特に変わった様子もないのだが……
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中に入るとこうなのである

ギャラリーの中に入ったはずなのに地下鉄の駅の通路なのだ。天井や壁、地面、どこを見てもそれっぽく作り込まれている。

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この天井の感じ!
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壁の感じ!
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床の感じ!

じっくり見ると、すべてが手作りなのがわかるのだが、これらはほぼすべてがダンボールなどの廃材を再利用して人力で再現されたものだという。すごすぎる……。

前述の知人のSNS上の動画をご覧いただくと会場内部の雰囲気を全体的にわかってもらえそうなので貼ってみます。

 

そして「めちゃくちゃすごいな!」と圧倒されるものがあると同時に、随所にちょっとしたゆるさや笑いがあって、そこもまたいい。

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この駅の壁にありそうなポスターの数々も
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よく見ると色々な素材を貼り合わせて作られたものだったりする
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行き止まりの先の奥行きはちょっと強引に絵で表現されていたりする
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しかし少し引いてみたら地下道にいるようにしか見えない
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作品のモチーフになった地下道を見に行ってみる

会場にしばらくいて、クラクラするような感覚をおぼえつつ外に出た。配布されていた資料に作品のモデルになった場所が示されていたので、そこへ行ってみた。

阪神電車の高速神戸駅の通路に来ると、なるほど、さっき見た作品がこのあたりをモチーフにしたものだとわかる。

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こっちが実際の通路で、
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こっちが作品の「地下道」だ
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こっちが実際の通路で
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こっちが作品である

もちろん、比べてみると作品の方の手作り感が際立ちもするが、だが、絶妙にツボがしっかり押さえられているというか、物の細かい質感や、場の雰囲気がかなり忠実に写し取られているのがわかる。

実際の通路を見てますます驚き、私は思わず「新開地アートひろば」に取材を申し入れてしまった(お忙しいところご対応ありがとうございました)。

すると、会期終了の翌日の朝から作品の解体・撤収作業が行われ、希望者はそこに参加することができるという。そしてなんと、参加すると作品の一部をもらい受けることもできるらしい。そこに作者であるズガ・コーサクとクリ・エイトのお二人も来られる予定だと教えていただいた。それは行くしかない。

作品が解体されていく様子も痛快だった

教えていただいた日時にもう一度会場へ行ってみると、ズガ・コーサクさん、クリ・エイトさんのお二人と、作品の解体を手伝いに来た人々がいた。

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挨拶をする二人。左がクリ・エイトさんで右がズガ・コーサクさん

会期中、のべ1800人以上の人が作品を見に訪れ、私のようにSNSを見かけて来た人も多くいたらしい。すごく反響が大きかったそうだ。

そんな作品なのだが、これから一気に解体していくという。それに先駆け、作品の中に希望する“部分”がある人はそれをもらえる旨、説明があった。希望者が複数いた場合はじゃんけんで決める。楽しい。

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たとえばこういうポスターを再現した部分は大人気だった
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どんどんカッターで切って配っていく
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みんなうれしそうである

私もじゃんけんに参加し、プロ野球の中継番組のポスター(のレプリカ)をもらった。これは宝物だな。部屋に飾ろう。

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やったぁー!
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裏を見ればこんな風にダンボールである

解体が進むにつれ、ここがまぎれもなく施設内のギャラリーだったことが露わになっていく。魔法が溶けるような、不思議な場面だった。

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刻一刻と元の状態に戻っていくギャラリー内
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みんなテキパキ分業していた
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会場の脇にはこれから持ち帰られる地下道の部分が置かれていて面白かった

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