いつ行ってもいいと言っている気がするが6月の奄美はいい。
ハブは結局夜も合わせて11匹も出てきたし、奄美と徳之島に住む「アマミシカクワガタ」も見ることができた。
なんというか、春を越え、盛夏を前にして森のテンションがずばずば上がっていくのを感じるのだ。
こんな月に祝日がないなんて。
6月いっぱいを休暇にするマニフェストに、私は一票を投じるだろう。
谷を降り切ると緩やかに湧き水の流れる小さな沢にぶつかる。
「じつはこのあたりではよく昼間にハブが見られます。昼から沢でとぐろを巻いているハブはなかなか見られないので伊藤さんを連れてきたいと思っていました」
私がさんざん探している毒ヘビのハブは夜行性で昼間は石の隙間や穴などに閉じこもり、姿を見ることはごくまれだ。
「そうか、昼ハブという切り口があったか」と共感されにくい感慨を抱いて沢の周囲に目をこらすと、くぼみにおさまっている黒ずんだヘビと目が合った。
「いた!」
「これはかなり大きいですね、1.7~8mといったところでしょうか。いいハブだなあ」
いいハブだなあ、ときた。
この大ハブのサイズ感を素早く見積もったのは同行していた若きハブ研究家の星野蒼一郎さんだ。
新潟県生まれの星野さんは幼い頃、お父様に連れられて西さんのナイトツアーに参加した。そこで奄美の環境や生物、とくにハブのとりことなり、その勢いで奄美大島の高校に進学。大学では島を出てヘビを研究し、卒業すると奄美市役所に就職する形で移住の夢を叶えた。
高校在学時から西さんと共に奄美の森で生態調査のフィールドワークを重ねた星野さんは知識にとどまらない現場感で奄美のハブを教えてくれる。
「山の奥のほうでは数は少なくなるけどサイズ感はかなり大きくなりますね」
ハブは大型の毒ヘビで、無事長生きすると2mを超えてくるが、集落の周りや農耕地で見られる個体は大半が1.2m以下の若ハブだ。
過去最大は沖縄県恩納村で見つかった2m42cmで、奄美大島でも2m41cmという記録があるが2m超えとなるとかなり珍しく、私は見たことがない。
ちなみに人間界の最高身長はロバート・ワドロー氏の2m72cmである。
大きいハブの迫力満点の動き。すっと止まって歌舞伎役者の見得のように艶っぽい視線を投げてくる。
「ここ数日は雨も降らず暑い日が続いているので林道や畑よりもこういう沢に集まってきているのかもしれないですね」
50mと歩かないうちにもう1匹現れた。
写真を撮る間も無く逃げられてしまったが、もう1匹出てきてこれも1.5mを超える大きさ。見たハブ全てが1.5m以上に育っている栄養満点の沢である。
「これ以上の大きさになると見られる数が減ってくるので、ここから生存競争の正念場という感じなんでしょうね」
どうかすこやかに育ってほしい、人里に来るんじゃないぞ。
ハブの観察に思いのほか時間を使って降りてきた道を引き返した(これがけっこうきつい)
フェリベニボシカミキリももちろん探していたが見つからず、今回はあきらめかけていたが、出会いは突然やってきた。
谷を登ってすこし平坦な道をボーッと歩いていたら私の目の前をすっと赤黒い飛行物体が横切ったのだ。
「いた!いました!フェリエニ!」
言い慣れてないので全然言えていなかったが「よく見つけましたね」とみんなにほめられた。
いつ行ってもいいと言っている気がするが6月の奄美はいい。
ハブは結局夜も合わせて11匹も出てきたし、奄美と徳之島に住む「アマミシカクワガタ」も見ることができた。
なんというか、春を越え、盛夏を前にして森のテンションがずばずば上がっていくのを感じるのだ。
こんな月に祝日がないなんて。
6月いっぱいを休暇にするマニフェストに、私は一票を投じるだろう。
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