憧れ達成!
※編集部より
この先の旅の様子はこちらの記事でおたのしみください。「南米人向けバスツアーでスペイン語が話せるようになるのか」
国境というものがある。国と国の境目だ。日本は島国なのであまり国境を意識しないけれど、陸続きの国では国境を越えて別の国に行くことができる。車でも、自転車でも、バスでも、船でも、国境を越えることはできるのだ。
もちろん電車でも国境を越えることはできる。ヨーロッパを走る「ユーロスター」もそんな電車のひとつだ。ロンドンからフランス・パリやベルギー・ブリュッセルに行くことができ、2018年からはロンドンからオランダ・アムステルダムへの直通運転も始まっている。
島国育ちだからだろう、国境越えというものに憧れがある。飛行機だけではなく、陸路での国境越えに憧れるのだ。過去にはその憧れを叶えるために、長距離バスでチリとアルゼンチンの国境を越えた。この時は入国審査に6時間ほどかかった。
バスでの国境越えは叶ったので、次はと考えると電車だった。そこで乗るのが「ユーロスター」だ。ロンドンのセントパンクラス駅を出発して、ドーバー海峡をトンネルで通過して、フランスのパリや、ベルギーのブリュッセルへと走る。2018年からはオランダ・アムステルダムへ1日2本だけだけど直通運転も始まった。
ユーロスターが出発するセントパンクラス駅の隣にある「キングス・クロス駅」はハリーポッターのホグワーツ特急の始発駅として登場する。ちなみに隣というのは隣駅ではなく、もう本当に隣。作りすぎた肉じゃがを持って行くようなお隣さんだ。
キングス・クロス駅の9番線と10番線の間の9と3/4番線からホグワーツ特急は出発する、らしい。らしいのだ。なぜなら私は一切ハリーポッターを知らない。昔、「ハリーポッターと秘密の部屋」を映画館に観に行ったら、途中からインフルエンザになって映画どころではなくなり、それ以降、なんか怖くてハリーポッターを見ていないのだ。
ただ今回はユーロスターに乗って、オランダ・アムステルダムに行くのが目的なので、ハリーポッターは関係ない。乗ろうではないか、セントパンクラス駅の5番線からアムステルダム行きのユーロスターに。
セントパンクラス駅からアムステルダムへの直通電車は8時と17時の2本だけ。座席にはクラスがあり、2等(5千円ほど)、1等(1万円ほど)、プレミア(3万円以上)という感じだ。プレミアは懐的に厳しいけれど、1等だと食事がついて、ウェルカムドリンクがあって、乗り遅れた際の救済があるっぽいので、1等を選んだ。
セントパンクラス駅で出国審査的なものがあり、30分前までにチェックインする必要があるので直前だと危ない。ちなみにチケットはネットで日本語で予約することができる。私は英語がわかならないので、現地だと心が折れて帰国しそうだったので、ネットで頼んだ。
待合室はぎゅうぎゅうだ。プレミアのチケットだとビジネスラウンジが利用できる。私は1等を選んだので普通の待合室だ。朝7時半にはここに来たのだけれど、パリ行きの電車などもあるので人は多かった。
電車の出発する少し前になってホームへ繋がるドアが開き、一斉に乗り込みだす。電車で国境を越えたことがないのでワクワクしている。県境は何度も越えているけれど、今回越えて行くのは国境だ。フランス、ベルギーを通ってオランダに行くのだ。
ロンドンからアムステルダムは、ブリュッセルとロッテルダムに止まりアムステルダムとなる。新幹線の「のぞみ」の駅数だけで考えると、東京から乗って、品川、新横浜、名古屋。アムステルダムは名古屋なのだ。時間としては4時間弱くらいかかるけど。時間的には広島駅あたりがアムステルダム。
1等の車両は2席あって通路を挟んで1席のような感じ。乗るとすぐに食事が出てきた。国際線の飛行機のようだ。パンとコーヒーとりんご。りんごは小さくてオシャレだ。大きいとダメなのだ。オシャレは小さいのだ。パンはもっと欲しいとお願いしたら、バンバンくれた。ユーロスター素晴らしい。
車窓の流れる景色を見ながら食べようと思ったら、窓の外は暗くなっていた。自分が食べる姿だけがガラスに映し出された。割と笑顔で食べていたので美味しかったのだろう。そして、たぶんこの暗い理由はドーバー海峡のトンネルだ。
せっかくなのでユーロスターの中を散歩した。2等の席を1等として高い目線から見てみたいし、今の日本ではあまり見なくなった食堂車的なものもあるのだ。ぜひ見ておきたいと車内を歩いた。練り歩いた。
2等は2席あって通路を挟んで2席という感じ。日本で考えると新幹線より、特急列車の方が近いかもしれない。食堂車では飲み物やサンドイッチなどを買うことができる。私は買わないけどね、なぜなら食事とかが付いている1等だからね。そう、1等だからね。
窓の外が知らない景色ということもあり、4時間弱はあっという間だった。途中で5分ほど遅れている、という放送も入ったけれど、誰もそれに反応することなく、楽しく談笑を続けていた。5分くらいの遅れは誰も気にしないのだ。
また放送が入った。「皆さんにいいニュースがあります! オオオオオーーーーンターイム!!!!」と車掌さんが絶叫している。すると乗客はサッカーで応援するチームがゴールでも決めたか、というほど盛り上がった。拍手と歓声。日本にはない一体感だった。
ということで、オンタイムでアムステルダム中央駅に到着した。ロンドンのセントパンクラス駅では出国審査があったけれど、アムステルダム中央駅では何もなく、小田急線から降りたくらいのテンションでオランダの地を踏んだ。マイタウン狛江と一緒だ。景色は全然違うけど。
アムステルダム中央駅にはグランドピアノが置いてあり、誰でも自由に弾くことができる。ただ私はそもそもピアノが弾けない。オランダの地で「もしもピアノが弾けたなら」と思った。電車で国境を越える憧れを果たしたのちに、アムステルダムでピアノを弾くという憧れが発生した。
※編集部より
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